敷金預り証に発行の義務はある?【作成方法を解説】
賃貸物件の契約をした場合、不動産会社から発行する書類の1つに「敷金預り証」があります。ただ、ご自身の職場では発行していないというケースもあるのではないでしょうか?
今回は敷金預り証を発行する義務があるか否かを解説します。
また、「今後は敷金預り証を作成するかもしれない」という方のために、テンプレートが閲覧・ダウンロードできるおすすめサイトを紹介します。
敷金預り証とは
「敷金預り証は、部屋を借りる賃借人から「敷金を預かったこと」を証明する書類です。
賃貸借契約の締結後、たとえば東京であれば家賃の1~2ヶ月分に相当する金額を支払うのが一般的です。敷金を受け取った不動産会社は「敷金預り証」を発行します。
敷金預かり証は契約者のほうで保管し、賃貸借契約が終了したら部屋を明け渡した際に事業者に返還されます。
領収書ではない理由
敷金を預かった際、領収書ではなく敷金預り証を発行する理由は「所有権」です。
所有権が契約者から移るか否かで、発行する書類が以下のように変わります。
- 所有権が移る:領収証
- 所有権が変わらない:敷金預り証
敷金は原状回復費用などがかかる場合を除き、あくまで「預ける(預かる)」のであって所有権は移転しません。
よって領収書ではなく、敷金預り証が交付されるわけです。
不動産会社によっては発行しないこともある
そもそも敷金預り証は発行しないという不動産管理会社もあります。
理由はいくつかありますが、たとえば「悪用される可能性」を危惧している可能性はあります。
賃借人が敷金預り証を長期間に持っていられないと紛失する可能性は0ではないでしょう。紛失しただけなら銀行の入出金記録等で履歴が残ることで確認は容易です。
ただし、敷金預り証が第三者の手に渡ることで何らかの悪事に利用される可能性も考慮する必要があります。
たとえば紛失した敷金預り証が第三者の手にわたり、その人が敷金預り証を持ってくると間違って敷金に相当するお金を支払ってしまうかもしれません。
その後に契約者が敷金預り証を見つけて退去時に持ってくることで、二重に請求されるなどのパターンが考えられます。
敷金預り証の発行には印紙税がかかる
敷金預り証は、発行のために印紙税が発生する可能性があります。
これは敷金預り証が印紙税法上の「第17号の2文書」に該当するためです。
敷金の預りは、相手方のために金銭を保管するものではありませんので、敷金の「預り証」は、第14号文書(金銭の寄託に関する契約書)ではなく、第17号の2文書(売上代金以外の金銭の受取書)に該当することになります(基通別表第一第14号文書の3)。
引用元:国税庁|敷金の預り証
印紙税法において敷金預り証では、敷金5万円以上の場合は200円印紙の貼付け義務があります。
家賃が月5~10万円だと考えても、間違いなく5万円は超えてくるでしょう。
契約のたびに200円の収入印紙を発行することを考慮すると、預かり証を発行しないほうが経費節減になるでしょう。
また、収入印紙を貼らないことによるペナルティも心配です。
印紙を貼っていない場合は「過怠税」として印紙税額の3倍にあたる600円を支払いが必要です。
故意ではなく忘れてしまったときも同様に支払うことになるため、発行する側のコスト面でのリスクになってしまいます。
敷金預り証を発行しない会社は、経費・リスク節減のために発行しないというパターンもあるわけです。
発行しないとしても違法ではない
敷金預り証は発行しないとしても違法ではありません。
民法を見てみると、敷金預り証を発行する義務があるとすれば敷金の交付が「弁済」に当たる場合です。
第四百八十六条 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
引用元:e-GOV|民法
ちなみに「弁済」とは、債務を履行して債権を消滅させることです。
実際、敷金は債務の履行のために支払うものではありません。敷金を支払う時点では敷金預り証(民法上の受取り証書)を発行する義務はありません。
発行しないことによる罰則がないのですから、敷金預り証を発行しないという選択も可能です。
敷金預り証を発行しない場合の注意点
敷金は賃貸借契約が終了して部屋が明け渡される際、原状回復費用(もしあるなら未払い賃料など)を充当したあとで契約者に返還します。
敷金について敷金預り証を発行すると揉めずに手続きが進められる可能性が高いでしょう。
もし揉めた場合は裁判に進むことになってしまいます。
法律上なんの問題もないとしても、発行しておくことで不要な争いが発生する可能性をつぶすことができるでしょう。
敷金預り証作成の手順
画像引用;国税庁|敷金の預り証
ここでは、敷金預り証を発行する場合の手順について解説します。
必要な項目を入力する
敷金預り証で必要な内容は「いつ、だれが、だれから、どのくらい」の金額を預かっているかです。
以下の内容については明記しておく必要があります。
- 敷金預り証を発行した日付はいつか
- 誰が発行したのか
- 誰に対して発行したのか
- 預かった敷金はいくらか
- 敷金はどの物件・部屋のものなのか
これらの情報を敷金預り証のなかに網羅しておくことで、数年後の退去の際にも間違いなく敷金を処理することができます。
敷金を返還するときの内容を網羅する
敷金預り証は、返還するときのルールについても盛り込んでおく必要があります。
原状回復費用や未払い家賃、クリーニング費用などのコストを差し引いたうえで余りがあれば返還するのが一般的です。
あとで無用なトラブルになることを避けるためにも、敷金預り証に「原状回復費用や債務を清算してからの返還」であることは記載しておくことが望ましいでしょう。
敷金の増減があった場合は別途で発行も検討
敷金の増減が発生した場合、記録として別の敷金預り証を発行することになることもあります。
一般的には覚書を交付するなどの対応をしますが、敷金預か証の再発行をするなら特記事項として「敷金が増えた・減ったこと」「その理由(賃料増額による不足分の充当、等)」といった内容の明記が必須です。
発行しない場合は敷金について賃貸借契約書に盛り込む
敷金預り証を発行しない場合、代わりになる文言を賃貸借契約書で確認しておくことが必要です。
敷金の金額は受領した日付のほか、「自動更新した場合」など想定されるケースで敷金がどうなるのかを明記します。
もし管理会社が他社に変更されるとしても、賃貸借契約書に記載があれば利用者が二重に敷金を請求されるなどのトラブルを回避できます。
敷金預り証のひな形が見られるサイト
敷金預り証のひな形・テンプレートを無料で利用・ダウンロードできるサイトを紹介します。
ひな形の知りたい!
「ひな形の知りたい!」では、全国のひな形登録者が作ったひな形素材を無料でダウンロードすることが可能です。
ひな形素材に関して疑問点について、ひな形の登録者が答えてくれるメリットもあります。
敷金預り証のようなビジネスで利用する書類だけでなく、年賀状・クリスマスカードのテンプレートなど種類も豊富です。
【リンク】ひな形の知りたい!
ミカタストア
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ReDocS(リドックス)
ReDocS(リドックス)は クラウド型に賃貸管理ソフトです。
敷金預り証をはじめ、さまざまな契約書のテンプレートの内容の作成方法について紹介しています。
【リンク】ReDocS(リドックス)
まとめ
今回は敷金預り証を発行する義務についてと、「今後は敷金預り証を作成するかもしれない」という方のためのおすすめサイトを紹介しました。
敷金預り証は発行の義務がない一方で、紛失による悪用のリスクや印紙税によるコストの懸念があります。敷金預り証を発行しない会社が多いのはそのためです。
とはいえ、敷金預り証を発行することで「トラブルを未然に防げる」などのメリットもあります。
今後は発行する予定があれば無料のテンプレートを活用するなど、できるだけ低コストで資料を用意しましょう。