「あの担当者だから買いたい」を量産!顧客が指名する「信頼のエキスパート」を育てる社内資格術
投稿日 : 2025年06月09日

人材・スキル面の課題を解決し、競争力を高める「厚生労働省認定社内資格制度」の可能性
日々の事業運営で「人材の定着と育成」「担当者によるサービス品質の標準化」といった課題に直面されていませんか?
特に事業所規模が小さい企業ほど、新規学卒者の離職率が高い傾向にあるというデータもあります。また、住宅ローン利用者調査では住宅ローンに関する情報源として「住宅・販売事業者」が最も重視されていることからも、担当者の知識と信頼性が顧客獲得の鍵を握ります(参照:住宅ローン利用者調査(2024年10月調査))。これらの課題を解決し、従業員のモチベーション向上や顧客満足度向上、ひいては事業競争力の強化に繋がる可能性を秘めているのが、「厚生労働省認定社内資格制度」です。
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住宅販売事業者が直面する人材・スキル課題
住宅販売の現場では、お客様の一生に一度の買い物である「家」に関わる重要な役割を担います。そのため、営業担当者には住宅そのものに関する知識はもちろん、住宅ローンや税制、関連法規といった幅広い専門知識に加え、お客様のニーズを正確に把握し、信頼関係を築くための高いコミュニケーション能力や提案スキルが求められます。
しかし、これらのスキル習得には時間と経験が必要であり、担当者によって知識やスキルのレベルにばらつきが生じやすいのが実情です。また、近年では若手人材の早期離職も多くの企業で課題となっています。
厚生労働省のデータによると、令和3年3月卒業の新規大学卒就職者の3年以内の離職率は34.9%ですが、事業所規模が5人未満の企業では59.1%、5~29人規模では52.7%と、規模が小さいほど離職率が高くなる傾向が見られます。これは、中小規模の住宅販売事業者にとっても無関係ではない、切実な問題と言えるでしょう。(参照:厚生労働省_新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者))

このような状況下で、従業員のスキルアップを体系的に図り、サービス品質を標準化し、従業員のエンゲージメント(組織への愛着や貢献意欲)を高めることは、事業の持続的な成長に不可欠です。
課題解決の鍵:「厚生労働省認定社内資格制度」とは
こうした人材・スキル面の課題に対して有効な施策の一つとして注目されているのが、「厚生労働省認定社内資格制度」です。
これは、個々の企業や団体が自社の従業員を対象に自主的に行っている検定制度(社内検定)のうち、一定の基準を満たし、技能の振興に資すると認められたものを厚生労働大臣が認定する制度です。
「厚生労働省認定」の信頼性とメリット
厚生労働省のお墨付きを得ることで、自社の資格制度に高い信頼性と権威性が生まれます。これにより、以下のような様々なメリットが期待できます。
- 従業員のモチベーション向上とキャリア形成支援:
- 資格取得が目標となり、従業員の学習意欲やスキルアップのモチベーションが高まります。資格取得による昇進や手当の支給といった処遇改善と結びつけることで、明確なキャリアパスを示すことができ、従業員の定着率向上にも繋がります。
- 技能・知識の標準化とサービス品質の向上:
- 検定基準を設けることで、従業員に求められる技能や知識が明確になり、属人的になりがちだったスキルを標準化できます。これにより、担当者によるサービス品質のばらつきを減らし、高品質なサービスを安定的に提供することが可能になります。
- 顧客からの信頼獲得とブランド力向上:
- 「厚生労働省認定」という高い信頼性は、対外的なアピールポイントとなり、顧客からの信頼獲得に繋がります。例えば、認定資格を持つ担当者が対応することで、顧客は安心して相談でき、企業のブランドイメージ向上にも貢献します。
- 採用活動への好影響:
- 人材育成に力を入れている企業として、求職者に対してアピールできます。特に若年層に対して、明確なキャリアパスやスキルアップの機会を提供できることは、採用競争力の強化に繋がります。

認定基準と申請手続きの概略
厚生労働省認定社内資格制度の認定を受けるためには、いくつかの基準を満たす必要があります。主な認定基準は以下の通りです。
- 非営利性:
- 検定そのものを営利目的としないこと(実費程度の受検手数料徴収は可能)。
- 適正かつ確実な実施体制:
- 経理的・技術的な基礎を有し、公正な運営組織が確立されていること。試験問題作成や合否判定に専門的な知識・経験を持つ者が携わること。
- 客観的かつ公正な基準:
- 技能・知識の評価基準が明確で、学科試験と実技試験によって行われること。原則として2等級以上の複数等級を設定すること。
- 技能検定との補完関係:
- 既に存在する国家検定である技能検定とは職種や内容が異なる、または補完関係にあること。他の法令に基づく試験等と競合しないこと。
- 継続的な実施:
- 原則として毎年1回以上実施されること。
- 社会的評価の向上:
- 労働者の経済的社会的地位の向上に資すると認められること。合格者への適切な処遇(昇給、手当、昇進考慮など)を講じることが望ましい。
申請手続きは、厚生労働省への事前相談から始まり、申請書類(実施計画書、検定基準、実施規程など)の提出、専門調査員の意見聴取、審査を経て認定、公示という流れで進みます。試行試験の実施が必要となる場合もあります。

住宅販売事業と親和性の高い事例に学ぶ
厚生労働省の認定社内資格制度は、様々な業種・分野で導入されており、その中には住宅販売事業と親和性の高い小売・サービス業や建設・製造業の事例も多く見られます。ここでは、特に参考になる事例をいくつかご紹介します。
小売・サービス業の事例:顧客対応スキルと専門知識の標準化
住宅販売は、お客様へのきめ細やかな対応が求められるサービス業としての側面も強く持ち合わせています。小売・サービス業の認定事例は、接客・販売スキルの向上や顧客信頼獲得にどのように社内資格制度を活用しているか、参考になります。
- イオン株式会社(小売業):
- 鮮魚士など6種類の社内検定を認定。従業員が自己流で対応していた技能を標準化し、どこの店舗でも同じ技能・できばえの商品を提供できるようにした。これにより、社内の業務基準が明確化し、作業効率が向上。また、衛生管理の徹底等を通じて顧客の安心感に繋げている。
- 住宅販売においても、営業担当者の接客スキルや住宅ローンの知識といった専門知識を標準化することは、顧客満足度向上に不可欠です。
- 西川株式会社(寝具販売):
- 「西川寝具社内検定」を認定。寝具のコンサルティング販売技術を体系化し、販売員のスキルアップやモチベーション向上、キャリアパス構築に活用。合格者には一時金や資格手当を支給し、昇格要件としても考慮。認定バッジや名刺への記載により、顧客からの信頼獲得にも繋げている。
- 住宅販売でも、住宅という高額商品を扱う上で、専門家としての担当者の信頼性醸成は極めて重要であり、資格制度を通じたスキル証明は有効です。
- 株式会社ちふれ化粧品(化粧品小売業):
- 「ちふれビューティーアドバイザー社内検定」を認定。ビューティーアドバイザーに求められる知識と技能の標準化・向上、モチベーションアップ、明確なキャリアパス形成を目指している。合格者には報奨金やバッジ等を贈呈し、昇進・昇級の考慮要素としている。企業全体の技能底上げに繋がり、サービス品質向上に貢献。
- 住宅販売の営業担当者も、お客様の要望を丁寧にヒアリングし、最適な提案を行うという点で共通しており、カウンセリングスキルと商品知識の体系化は役立ちます。
(参照:厚生労働省_認定社内検定活用事例集)
建設・製造業の事例:専門技術と品質担保
住宅販売事業では、販売だけでなく、住宅の構造や品質に関する知識も重要です。建設・製造業の事例は、専門技術の標準化や品質担保にどのように社内資格制度を活用しているか、参考になります。
- ビケ足場仮設事業協同組合(建設業):
- 「ビケ足場施工士」の社内検定を認定。建設現場における技能の標準化と教育体制の確立により、若手従業員のモチベーション向上や顧客からの評判向上に貢献。社内検定合格者を現場を指揮する職長として認めることで、キャリアパスを明確化。適切な知識・技能の習得は、事故防止にも繋がります。
- 住宅建築に関わる者として、基本的な建築知識や安全性に関する理解を深めることは、お客様への安心提供にも繋がります。
- 管清工業株式会社(建築物排水管等維持管理業):
- 「排水管理総合技術者」の社内検定を認定。従業員のモチベーション向上、技能標準化、均一サービス提供を目指す。接客マナーも重視しており、顧客からの評価向上に繋がっている。社内検定合格状況による協力会社のランク付けも実施。
- 住宅販売においても、住宅のアフターサービスやメンテナンスに関する知識、お客様への丁寧な対応は顧客満足度を大きく左右します。
(参照:厚生労働省_認定社内検定活用事例集)

これらの事例から、社内資格制度は単なるスキル評価に留まらず、人材育成、組織力強化、顧客満足度向上、さらには業界内での地位向上やブランディングにも有効であることが分かります。
社内資格制度導入への具体的なステップとメリットの最大化
では、実際に社内資格制度、特に厚生労働省認定を目指す場合、どのようなステップで進めれば良いのでしょうか。
導入に向けたステップ
- 目的と対象職種の設定:
- どのような人材を育成したいのか、どのようなスキルを標準化したいのか、具体的な目的を設定します。
- 住宅販売事業であれば、営業担当者の住宅関連知識、ローン知識、接客・提案スキルなどが対象となるでしょう。
- 検定基準・試験内容の検討:
- 設定した目的に基づき、必要な技能・知識レベル、等級区分、学科試験・実技試験の内容を具体的に検討します。既存の評価制度や研修プログラムも参考に、実務に即した内容とすることが重要です。
- 社内体制の構築と規程整備:
- 検定の企画・運営、試験実施、合否判定などを担う組織体制を構築します。検定の名称、受検資格、実施時期、場所、手数料、合格者の称号、秘密保持などに関する規程を整備します。
- 試行試験の実施:
- 構築した検定が適切に機能するか、実際に試行試験を実施し、問題点や改善点がないか検証します。
- 厚生労働省への相談・申請:
- 制度の趣旨や申請方法について厚生労働省に事前相談を行い、必要な書類を揃えて認定申請を行います。
- 認定後の運用と継続的な改善:
- 認定後も定期的に検定を実施し、合格者の管理や処遇への反映を行います。検定基準や実施方法は、技術や市場の変化に合わせて定期的に見直しを図ることが重要です。
メリットを最大化するために
導入した社内資格制度の効果を最大限に引き出すためには、以下の点を意識することが重要です。
- 経営層のコミットメント:
- 制度導入の目的や意義を社内に浸透させるためには、経営層が積極的に関与し、重要性を発信することが不可欠です。
- 人事・評価制度との連携強化:
- 資格取得を昇進・昇給、手当、キャリアパスと明確に結びつけることで、従業員の受検意欲や継続的なスキルアップを促進します。
- 社内外への積極的な周知:
- 「厚生労働省認定」のロゴマークを活用するなど、社内外に制度の存在や合格者の活躍を積極的にアピールします。顧客向けのパンフレットやウェブサイトに掲載したり、担当者の名刺に資格名を記載したりすることも有効です。
- 継続的な教育・研修機会の提供:
- 検定合格をゴールとせず、合格後も継続的にスキルアップできるような教育・研修機会を提供することで、従業員の専門性をさらに高めます。
まとめ
自己居住用の住宅販売事業者様にとって、人材の確保・育成やサービス品質の標準化は、競争を勝ち抜く上で避けては通れない課題です。厚生労働省認定社内資格制度は、これらの課題に対する有効な解決策となり、従業員のモチベーション向上、スキルアップ、離職防止、そして顧客からの信頼獲得と事業成長に大きく貢献する可能性を秘めています。
小売・サービス業や建設業の事例からも分かるように、社内資格制度は業種や事業規模に関わらず導入可能であり、それぞれのビジネスモデルに合わせて柔軟に設計することができます。制度構築には一定の時間と労力がかかりますが、その先に得られる「人材」という最大の資産の強化と、それに伴う企業価値の向上は、投資に見合う、あるいはそれ以上のリターンをもたらすはずです。
ぜひこの機会に、貴社における社内資格制度の導入について検討を開始されてはいかがでしょうか。厚生労働省のウェブサイトでは、認定制度の詳細や事例集が公開されており、制度構築の支援に関する相談窓口も設けられています。これらの情報を活用し、貴社オリジナルの社内資格制度を構築することで、人材育成と事業成長の新たな一歩を踏み出してください。