相続財産に不動産があったら?遺産分割協議書の作成ポイント【ひな形サンプルあり】

投稿日 : 2022年07月28日/更新日 : 2023年06月03日

遺産分割

「親が所有していた不動産を分けたいけど、どうしていいかわからない」というお悩みを顧客から相談されることもあるのではないでしょうか?

遺産分割協議書は相続手続きのための重要な手段です。不動産の相続登記では、多くの場面で遺産分割協議書が必要になる他、相続人間のトラブルが予想される場合にも役に立つからです。

そこで今回は、不動産の遺産分割協議書の書き方や作成ポイントについてご紹介します。

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遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容をまとめた書類のことを言います。実印を押印すると、法的効力を持ちます。

「遺産分割協議」とは、相続人全員で遺産の分け方についての話し合いをすることです。

遺産の分け方は、遺言による場合や遺言がない場合は民法に相続人の割合が規定されています。

しかし、遺産分割協議をすることによって、異なる割合で遺産を分けることができるのです。

ただし、遺産分割協議には相続人全員の参加と合意が必要です。

不動産のみ遺産分割協議書の書き方

不動産の遺産分割協議書の書き方について解説します。

▼不動産の遺産分割協議書ひな形サンプル

遺産分割協議書サンプル

1.被相続人と遺産分割協議の事実を記載

  • 被相続人の名前
  • 相続人全員で遺産分割協議を行った事実

まず、亡くなった方の情報として、被相続人の名前を明記します。

次に、相続が発生したことで、遺産について相続人全員で遺産分割協議を行った事実を記載します。

被相続人の情報は、死亡の事実が分かる除籍謄本などを取得して、記載内容と相違がないようにしましょう。

2.対象不動産と相続人を記載

  • 対象となる不動産
  • 相続人の名前

対象となる不動産と相続人について記載します。

相続対象の不動産は特定できるように所在・地番・家屋番号、広さなどを正しく記載します。

相続人が複数の場合は連名で記載し、それぞれの持分を記載しましょう。

3.相続人全員で協議した決定事項であることを記載

相続人全員が参加し、合意して遺産分割協議書が作成されたという事実を証明する記載をします。

4.相続人全員の署名・押印

  • 相続人全員の署名
  • 相続人全員の押印

合意の証明として、相続人全員の署名と押印をします。注意点として、氏名は自署で印鑑証明と同じ字体で書きましょう。

印鑑は、市区町村役場に届け出た実印で押す必要があります。実印であることを証明するために、相続発生日以降に取得した印鑑証明書を添付してください。

日付は、遺産分割協議が成立した日を記載します。相続人の住所は、住民票に記載されているものとします。

不動産のみ遺産分割協議書の作成ポイント

不動産の遺産分割協議書の作成ポイントについて解説します。

不動産の分割についての記載

不動産の遺産分割については、どの不動産を分割するかについて登記簿の通りに記載します。

例えば、「長女が土地を相続する」といった記載では、登記はできません。

土地であれば、以下の記載が必要なので注意しましょう。

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

代償分割

代償分割とは、ある相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人に現金を支払うことを約束することなどで分割する方法です。例えば、長男が土地・建物を相続する代わりに、他の兄弟姉妹の相続人にそれぞれの相続額に見合った現金を支払うといった場合です。

代償分割についての合意も、遺産分割協議書に記載漏れのないようにしましょう。

判明していない財産の分割

遺産分割協議を行った後になって、財産が発見されることもあり得るでしょう。

万一判明していない財産が後で見つかったらどうするのか、事前に決めておくことができます。例えば、以下が例となります。

  • 新たな遺産は、改めて分割協議をする
  • 新たな財産は、特定の相続人が取得する
  • 新たな遺産の取得割合を定めておく

どう書くのが適切かは、状況によっての判断となるでしょう。

不動産の遺産分割協議書作成時に押さえるべき注意点

不動産の遺産分割協議書作成時の注意点としては、以下が挙げられます。

  1. 遺産分割協議書は全員分を作成する
  2. 遺産分割協議書は撤回できない
  3. 書き間違えた時は訂正印を押す

1.遺産分割協議書は全員分を作成する

遺産分割協議書は、相続人全員分を作成しましょう。合意が成立した証明となります。

遺産分割協議書を作成後にコピーし、全員分をまとめて署名・押印すると良いでしょう。

2.遺産分割協議は撤回できない

遺産分割協議は原則的に撤回できません。遺産分割協議による合意は、相続人間での契約に当たるからです。

しかし、詐欺や脅迫を原因とする場合は、取り消すことができます。例えば、他の相続人から脅されたり、相続財産の内容について虚偽を告げられていたりしたケースです。

原則的には撤回できないため、内容の間違いがないかなどしっかり確認して署名・押印するようにしてください。

3.書き間違えた時は訂正印を押す

遺産分割協議書を書き間違えた時は、間違えた箇所に二重線を引いて、訂正印を押せば問題ありません。

遺産分割協議書作成後の登記漏れを防止!確認すべき書類3つ

遺産分割協議書作成後の「登記漏れ」を防止するために確認すべき書類としては、以下が挙げられます。

  1. 固定資産税納税通知書
  2. 登記簿謄本
  3. 名寄帳

1.固定資産税納税通知書

不動産を所有していると、毎年4月過ぎに「固定資産税納税通知書」が届きます。

同封されている課税明細書には、遺産分割協議書に記載が必要な土地・家屋の所在・地番などが記載されています。

固定資産税は、元旦に固定資産を所有している人に課税されます。登記をする年度の課税明細書を確認しましょう。

2.登記簿謄本

遺産分割協議書に記載する「所在」は、一般的な住所のことではありません。土地の「地番」も住所とは基本的に異なります。

間違いなく記載するために、事前に「登記簿謄本」を取得する必要があります。

取得は法務局で申請する必要がありますが、インターネットを利用してオンラインでの申請請求も可能です。

3.名寄帳

被相続人が所有していた不動産を調べるには、「名寄帳(なよせちょう)」を取得すると便利です。

名寄帳は、固定資産税を課税するために市区町村が作成している固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめたものです。

被相続人が所有していた不動産を一覧で確認できます。

例えば、被相続人が複数の不動産を所有していた場合などでも、スムーズな確認が可能です。

名寄帳は、不動産の所在地の市区町村で取得できます。

相続人が請求する場合は、被相続人が死亡し、かつ申請者が相続人であることを証明する戸籍謄本などが必要です。

まとめ

今回は、遺産分割協議書の書き方や作成ポイント、登記漏れを防止するために確認すべき書類などについてご紹介しました。

遺産分割協議書のひな形文例を参考に、ぜひ遺産分割協議書を作成してみてください。

この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。