新住所登記とは?旧住所登記との違いや注意点を解説
不動産を購入する際の登記手続きでは、登録する住所に「新住所」と「旧住所」どちらかを選択する必要があるのをご存じですか?
- 旧住所:購入物件に移る前の住所
- 新住所:購入物件の住所
住宅購入のスケジュールや手続きが人によって異なるため、こうした選択肢が用意されています。本記事ではそれぞれのメリットやデメリット、注意点についてご紹介します。
お客様に登記手続きについて案内する際の参考にしてみてください。
新住所登記・旧住所登記とは
「新住所登記」とは、購入物件の住所で登記をすることです。決済までの間に購入物件の住所へ住民票異動を行い、新しい住所の住民票で登記手続きを行います。
「旧住所登記」とは、購入対象物件に移る前の住民票に登録されている住所で登記することです。つまり、新しい物件に引っ越す前に住んでいる住所で登記することができるのが、旧住所登記となります。
新住所登記・旧住所登記の特徴について
各登記の特徴には以下のようなものが挙げられます。
新住所登記の特徴
<メリット>
- 将来的に住所変更登記をしなくてよいこと
- 登録免許税軽減のための書類取得が容易なこと
<デメリット>
- 実態と異なる手続きとなること
- 決済までの手続きが増えること
旧住所登記の特徴
<メリット>
- 実態に沿った手続きになること
- 決済までのスケジュールがタイトな場合、手続きが少なく登記できること
<デメリット>
- 将来的には新住所へ変更登録をする必要があるので、その分登録免許税費用が掛かってしまうこと
- 登録免許税軽減のための書類取得に手間がかかってしまうこと
それぞれ詳しく見てみましょう。
新住所登記のメリット
将来的に住所変更登記をしなくてよいこと
以前は、旧住所登記をして不動産を取得しても、その後必要に応じて任意のタイミングで正しい住所変更登記をすることでよいとされていましたが、近年改正された不動産登記法により、引越後2年以内の住所変更登記が義務付けられます。
そのため、新住所で前もって登記してしまうことで、購入後の登記手続き(手間と費用負担)の手間と費用が省けるというメリットがあります。
登録免許税軽減のための書類取得が容易なこと
不動産を購入して法務局で登記を行う際には、「登録免許税」の支払いが必要になります。
新しく購入した不動産が自宅(居住用)であれば登録免許税の軽減対象になり、軽減を受けるためには事前に役所で「住宅用家屋証明書」の発行を受けることが必要です。
新住所登記の場合は、購入物件が自宅であることの確認資料として、新住民票の提出のみで取得することができるため、発行の手続きが容易となります。
新住所登記のデメリット
実態と異なる手続きとなること
住民基本台帳法では「引越後14日以内に転入届、または転居届を提出すること」を義務づけています。
しかし、不動産会社の提携ローンなどの利用で後日登記となる場合を例外として、新住所登記では引越前に住民票を移転します。
そのため、役所での手続きでは担当者から「引越はお済みですか?」と聞かれることがありますが、ここで「まだです」と正直に答えると手続きが進められません。
便宜上とはなるものの「引越が完了し、居住している」と言わなければ手続きが進められないため、注意が必要です。実務的には新住所登記は多く行われていますが「実態と違う」行為となるため、よく理解した上での判断が必要です。
また、役所から郵送物が届かないリスクも発生します。住民票を変更してしまうため、役所からの郵送物が新住所に送られてしまう可能性があります。
新居にポストを設置していないと、万が一行政から書類の郵送があった場合に返送されてしまい、引越を行っていないことが発覚するリスクがある点にも注意が必要です。
一時的に郵便局へ転送届の提出が必要となりますので、この点にも注意しましょう。
決済までの手続きが増えること
住宅を購入する際の借入先によっても手続きスケジュールは異なります。その中で、各金融機関が定めるスケジュール期日に従って、住民票の転出および転入届の手続きをする必要があります。
住宅ローン購入時には、金消契約や決済の手続きが金融機関の営業日に合わせて、平日のスケジュールで調整する機会がただでさえ多く発生します。
その中で、住民票異動についても平日に対応する手続きが必要となるので、各金融機関のスケジュールを確認することが大変重要です。限られた期日の中で、住民票異動を行う必要があるため、スケジュールがタイトになる点にも注意が必要となります。
旧住所登記のメリット
実態に沿った手続きになること
住民基本台帳法で定められた、「引越後14日以内に転入届、または転居届を提出すること」に即した手続きができることは旧住所登記のメリットといえるでしょう。
官公庁発行の郵送物が新住所に届く心配もないので、転送届の手続きも、通常の引越同様に手続きができるようになります。
決済までのスケジュールがタイトな場合、手続き少なく登記できること
本審査完了から決済までのスケジュールに期間がない場合、この期間で住所変更するのは手続きの負担になることもあります。
こうした際に旧住所での登記を選択することで、決済までその他の手続きに時間を割くことができるため、引越手配等で忙しくなる決済直前に、余裕を持って各手続きに臨める点はメリットといえるでしょう。
旧住所登記のデメリット
将来的には新住所登録をする必要があるので、その分登録免許税費用が掛かってしまうこと
不動産登記法改正により、引越後2年以内の住所変更登記が義務付けられることにより、転居後2年以内には住所変更登記をしなければなりません。(令和8年4月までに施行)
当然登記に必要な登録免許税や、登記の手続きを司法書士に依頼する司法書士の報酬等がかかります。購入後ご自身のタイミングで住所変更登記はできるものの、その分費用が掛かるということも注意が必要です。
登録免許税軽減のための書類取得に手間がかかってしまうこと
新住所登記と比較すると、登録免許税軽減のための書類作成が複雑になってしまうというデメリットが旧住所登記には生じます。旧住所の場合は、現住所住民票以外に現居宅の処分方法(賃貸契約書など)や申立書など、購入物件が自宅であることを証明する資料の提出が別途必要です。
また住み替えなどで、現在持ち家に居住されている場合は、売却か賃貸か今後の持ち家の処分方法など諸々の状況をしっかり確認した上での書類が必要となるため、ここも注意が必要です。
新住所登記・旧住所登記、それぞれの注意点
それぞれの注意点は以下の通りです。
耐震工事が必要な物件で住宅ローン控除を受けたい場合は、新住所登記は利用しない
中古物件の住宅ローン控除の適用を耐震基準適合証明書で行いたい場合、新住所登記は利用できません。
適用をする際には、以下のような物件では耐震補強工事が別途必要な場合があります。
【耐震補強工事を行い、耐震基準適合証明書が必要なケース】
- 木造住宅で築年数が20年(マンションなどで25年)以上経過している
- 一定の耐震性能を有することが証明されたこと
※2については居住する日までに改修して、耐震基準に適合することが条件です。
よって、耐震基準適合証明書は入居開始までに取得しなければ、住宅ローン控除の対象となりません。
実際に入居するまで住民票の移転はしてはいけないため、このケースでは新住所登記は選択肢から外れてしまうので注意しましょう。
現住所登記を行い引越後に住民票異動を行っても、自動的に登記の住所地は変更とならないので、改めて新しい住所への住所変更登記手続きが必要になる
先にも説明したとおり、不動産登記法の改正により引越後2年以内の変更登記の義務化となりますので注意しましょう。
※住所変更登記には費用がかかります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。新住所登記・旧住所登記、それぞれの特徴をご紹介しました。
住宅ローンの決済スケジュールはその時の売主・買主・金融機関によって様々です。
どちらの登記もメリット・デメリットがあるものの、購入される方の状況により採用されていますが、
注意点もあるため内容を理解した上でご判断いただくことが重要です。