第7回【イベントレポート】不動産テック協会主催~【最新技術特集】ビジネスマッチング部会~

投稿日 : 2024年12月03日

イベントレポートのサムネイル画像

2024年11月14日に一般社団法人 不動産テック協会主催の登壇イベント
〜 【最新技術特集】ビジネスマッチング部会 〜
が開催されました。最新技術を駆使した新しいビジネスを展開している3社の代表者が登壇され、各社のビジネスモデルをご紹介されました。

新しい技術を用いたビジネスモデルについての情報は多くの学びをもたらします。それぞれの会社のアプローチを理解することで、業界のトレンドや技術の実用性をより深く知ることができるので、ぜひご覧ください。

登壇者
江藤 大宗 氏 NOT A HOTEL2nd 株式会社
野口 真平 氏 MOZU 株式会社
衣笠 達也氏 株式会社GRApP(グラップ)

 

住宅ローン業務を軽減したい
不動産事業者様はこちら
\ 住宅ローン業務を軽減したい不動産事業者様はこちら/
資料請求・お問合せはこちら

不動産テック協会とは

不動産とテクノロジーの融合を促進し、不動産業界の健全な発展と公共福祉の増進に貢献することを目的として、不動産テック業務に関する調査・研究や情報発信、ルールの確立、ビジネス機会を創出するイベントの開催など、さまざまな事業を行っている協会です。
2018年の発足以降、不動産テックカオスマップの公開や様々な情報発信を精力的に行っています。

不動産テックとは?

不動産テック協会では「不動産テック」を次のように定義づけています。

”不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと。”

超ワクワクな体験だけにフォーカスする

NOT A HOTEL株式会社

NOT A HOTEL2nd 株式会社 江藤 大宗 氏の画像

登壇者
江藤 大宗 氏
NOT A HOTEL2nd 株式会社 代表取締役社長 Chief Executive Officer

住まいが自由になれば、人生が豊かになり世界はもっと楽しくなる。
NOT A HOTEL株式会社は自宅にも別荘にもホテルにもなる「あたらしい暮らし」をつくる会社として別荘のシェア販売をメイン事業に、NOT A HOTEL MANAGEMENT 株式会社(NOT A HOTELのホテル・レストラン運営)、NOT A HOTEL DAO 株式会社(自社暗号資産(NAC)の発行販売)、NOT A HOTEL2nd 株式会社(NOA A HOTELや親和性の高い資産の二次流通での仲介や販売)をグループ展開しています。世界的に著名な建築家やクリエイターとタッグを組んだ唯一無二のデザインと、建設前にCGパースのみでオンライン販売するという新しいビジネスモデルで、既存マーケットに一石を投じる NOT A HOTELのビジネスチャレンジについて、NOT A HOTEL2nd 株式会社 代表取締役社長の江藤氏がご登壇されました。

”不動産”ではなく、NOT A HOTELを販売する

思わず目を奪われる美しい建築デザイン。NOT A HOTELが販売する別荘はすべて優れたロケーションと調和した、クリエイターによる唯一無二のデザインが特徴です。更に特徴的なのは、その販売手法。建物を建ててから内見等を重ねて購入に至る一般的な不動産購入と異なり、NOT A HOTELは建設前にCGパースのみでオンラインで販売するモデルを基本としています。

土地を仕入れたら、まずはCGパースでメインビジュアルを作り込む。
販売する物件はCGで作成した建築プランの段階で販売をしています。販売後に建築を開始するため、リスクを最小化することが出来る仕組みになっています。

「超ワクワクする体験を売る」

この部分にとてもこだわりを持っていて、圧倒的な建築プロダクトを作り込み、そこで得られる体験をお客さまに届けることが重要です。CGパース制作から物件のサイトページやパンフレット制作、オーナーが利用する専用アプリなど、そのすべてがNOT A HOTELを表現しているものでなければならないし、自分たちが超ワクワクするものだけしか作らないと決めているんです。NOT A HOTELはそんな会社です。

■NOT A HOTELが挑戦する新しいビジネスのカタチ
これまでにない唯一無二の別荘をシェア購入する。「必要な人が、必要な分だけ購入する」という販売スタイルが特徴的なビジネスモデルとなっています。

<NOT A HOTEL4つの特徴>

  • シェア購入
  • 相互利用
  • エコノミクス
  • テクノロジー
  1. シェア購入
    • 一棟を最大36人でシェア購入。一人当たり最小毎年10日間の所有権を購入する販売スタイルとなっています。
  2. 相互利用
    • オーナーになると全国のNOT A HOTELを相互利用できます。
    • (※物件のグレードにより差額のお支払いが必要となる場合があります。)
  3. エコノミクス
    • 別荘として使わない日は、ホテルとして貸出すことが可能です。
  4. テクノロジー
    • 自社でアプリを開発し、オーナーの滞在予約から収益管理までが一気通貫で管理できます。

NOT A HOTELにとってテクノロジーは、「何かを便利にする」だけのものではありません。繰り返しになりますが、NOT A HOTELは家でもホテルでも別荘でもない、「あらたな暮らし」を提案する会社です。そのためには、ハードウェア(建築)とそれを裏側で支えるソフトウェアが重要になる。NOT A HOTELらしい体験、そしてビジネスを加速させるために、これからも積極的にテクノロジーへの投資をする予定です。

不動産の流動性を高め、土地の価値すらも高めていく

そんなNOT A HOTELですが、今年1月に新たな取り組みをスタートさせました。NOT A HOTELのセカンダリー(中古)取引プラットフォームの構築を目指す、NOT A HOTEL2nd。プライマリー(初期の販売)の売りやすさを中心に不動産市場が形成され、長期的な価値の維持、向上を見据えた2次流通がつくられていない現場に終止符を打つべく、江藤氏が自らCEOとして陣頭指揮を執っています。

私自身は、今年1月からCFOのロールを離れ、2次流通の不動産をスムーズに売り買いできるプラットフォームを作るために、NOT A HOTEL2ndという会社をやっています。
何を目指すためのセカンダリー取引プラットフォームかと言うと、長期的な不動産の価値向上のためです。市場での評価基準や買い手の目線が変わると、不動産そのものの価値の付き方も変わってくる。まずはNOT A HOTELという別荘を皮切りに、正しい値付けをし、価値を向上させることで流動性を高める。その結果、不動産価値にとどまらず、その土地の価値や文化(=資産性)までも向上させるような取り組みにしていくことが、NOT A HOTEL2ndのミッションです。
つまり、セカンダリーマーケットを通じて、逆にプライマリーマーケットの作り方を変えていきたいんです。価値が減少していくこれまでの在り方をアップデートし、不動産に資産性を持たせることで、お客さまにも安心して購入していただきたいと考えています。

この考え方でいくと、不動産にこだわる必要もありません。(不動産とは)異なるアセットクラスでも同じプラットフォームで商品を流通させることが出来る。NOT A HOTELのビジネスやアセットをベースに、NOT A HOTEL2ndで取り扱う商品も変化していくので、そのプラットフォームの構築に、今はとてもワクワクしています。

デジタル問屋で巨大産業にイノベーションを

MOZU株式会社

登壇者
野口 真平 氏
MOZU 株式会社 代表取締役 CEO

MOZU 株式会社 野口 真平 氏 の画像

古い常識を変えて新しい常識を創造する。建設・建材流通・建材製造といった巨大産業において、デジタル取引を浸透させることで働く人がより便利にコア業務に集中できる環境を作るプラットフォーマー、MOZU 株式会社。

建築資材の調達をより安く、カンタンにする工事会社限定のマーケットプレイス「MOZUオーダー」を開発・提供しています。
「MOZUオーダー」が提供する”デジタル問屋”について、代表取締役 CEOの野口氏がご登壇されました。

変わってこなかった、大きな卸産業

問屋とは、メーカーと小売店の間を繋ぐ重要な役割を果たす流通業者です。その歴史は非常に長く、日本の商業の発展とともに形成されてきました。日本の流通システムにおいて「縁の下の力持ち」として重要な役割を担っています。
しかし、大きな産業ほど発展を阻む理由がいくつも存在します。
MOZU 株式会社は、変わってこなかった理由を紐解き、ITの力で産業の発展を下支えをするプラットフォーマーとして価値を提供しています。

<日本の問屋の現状>

  • 取引先ごとに決定される卸値
  • 会社規模によって変わる取引商社の多重構造
  • 情報の非対称性が大きい
商社は卸値を取引先ごとに決定しています。大手企業のような会社としての規模や信用が大きいほど安く有利な仕入れができ、中小企業の場合は大手に比べて購買力が低くリスク懸念も勘案されて卸値が割高に設定される傾向にあります。
また、一次問屋・二次問屋・三次問屋など流通過程で複数の問屋が介在する仕組みで、各段階で専門性を発揮しつつリスクを分散できる構造ではあるものの、都度かかるマージンにより仕入れ値が割高になります。

「MOZUオーダー」は取引をデジタル化することで一次商社の資材を小ロットでも低価格で提供可能としました。

我々は、35,000円でルームエアコンを販売していますが、会社によっては70,000円や80,000円となります。同じもの、同じ商品が商流が変わるだけで倍近い価格差が生まれます。
MOZU 株式会社は、ここにデジタルでメスを入れ「MOZUオーダー」を開発しました。

ただ売るだけじゃない、デジタル問屋の手厚いサポート

■「物を届ける」をデジタル化した「MOZUオーダー」

会員制サイトとなっており、インターネットに公開していない審査制の会員サイトに現在3,300社ほどの工事会社・新築のデベロッパー・工務店が登録しています。月間で800〜1,000社ほどが新規会員登録しており、年内には5,000社に到達する見込みとのことです。

リリースから半年くらい経ちましたが、想像以上にご購入いただいている状況です。なぜ、こんなに購入いただいているのかというと、理由は「安いから」だと思います。
通常の仕入れルートよりはるかに安く色々なアイテムをご購入いただけます。

我々が安く商材を提供できる理由は、仕入れから販売・配送まであらゆることをデジタル化したことで取引にかかる人的コストをカットしたぶん、商品価格を安くできています。また、会員数の増加で「MOZUオーダー」の購買力が高まったことにより、大手メーカーとの直取引が実現し、より価格を下げられるようになりました。

■「MOZUオーダー」と他社ECサイトとの違い>
デジタルを活用しながら、商品を届けてアフターサービスまで行うところが「MOZUオーダー」の特徴です。

<「MOZUオーダー」の特徴>

  • LINEで発注が可能
  • 翌日配送
  • 配送場所の現地指定
  • 掛け払い対応

<アフターサービス例>

  • 商品の配送
  • 組み立てて納品する材工
  • 不備があった際のメーカー補償の取り付け   など

中小企業、工務店にとっての強い味方といえる「MOZUオーダー」。
会員登録後、審査が終了すれば翌日から利用料なしで使える”デジタル問屋”、注目必須です!

宿泊施設をクラウド化させていく

株式会社GRApP(グラップ)

登壇者
衣笠 達也氏
株式会社GRApP(グラップ) 代表取締役

株式会社グラップ 衣笠 達也氏の画像

世界の人々のライフスタイルを“快適かつ賢く変える”サービスを提供する、株式会社GRApP。
ホテルやアパートメントホテル・⺠泊施設などの宿泊施設をクラウドで運営・管理する「クラウド型ホテルオペレーション」の宿泊施設運営代行事業、宿泊施設を開業させるために必要な業務全般の包括的なコンサルティング事業、ベトナム支社を拠点に日本語・英語・韓国語・中国語・ベトナム語の5ヶ国語に対応した年中無休・24時間対応の宿泊施設特化型の多言語対応コールセンター事業を行っています。

代表取締役 衣笠 達也氏が登壇され、民泊新法(住宅宿泊事業法)・旅館業法の枠組みの中で展開する従来とは異なる新しい宿泊施設の運営についてお話されました。

ホテルを無人で管理する

■政府が進める観光立国
景気の低迷・人口減少・少子高齢化と国内での消費拡大が難しくなるなか、経済波及効果の大きい観光に注力し、観光業を活性化させることで消費を促そうと様々な取り組みを実施しました。結果的に、2013年には1,036万人だった訪日外国人観光客数が2019年には3,188万人まで増加しました。2020年以降は新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に減少しましたが、徐々に回復傾向にあり2023年には2,507万人となっています。
(参照:観光庁HP
■緩和された「旅行業法」と「民泊新法(住宅宿泊事業法)」
訪日外国人観光客の増加とともに多様な宿泊ニーズへの対応が求められるようになり、地域の観光振興を促進しつつ旅行の安全性と取引の公正性を確保する必要が生じます。
  • 民泊新法(住宅宿泊事業法))の施行
  • 旅行業法の改正(地域限定旅行業の創設など)

2018年には、宿泊に関する法律が施行・改正され、宿泊業界全体に大きな影響を与えました。特に、⼀定の条件下では旅館‧ホテル施設内のスタッフ常駐必須条件が緩和され、スタッフの無⼈運営が可能となった点は宿泊施設の運営に大きな変化をもたらしました。

GRApPは「クラウド型ホテル」としてアパートメントホテル・⺠泊施設などを無人の宿泊施設として運営・管理しています。宿泊施設を無人化することで、従来ホテルとして運用できなかった小規模な用地や変形地を最大活用したり、これまでホテルの出店がなかった住宅地エリアにも出店したり、宿泊事業のバリエーションを上げていくことができています。
民泊新法と特区民泊の違い(一例)
民泊新法 特区民泊
管轄法 住宅宿泊事業法 国家戦略特別区域法
年間営業日数 180日以内 制限なし
最低宿泊日数 制限なし 2泊3日以上
(自治体の条例により異なる)
居室の床面積 一人当たり3.3m²以上  1居室25m²以上
管理業務の委託 家主不在型の場合:必要 不要
対象地域 全国 指定された特区内のみ
特区民泊は指定された地域でのみの運用となります。民泊新法では全国の地域で運営することができますが、自治体によって一部の規制や条件が異なるためGRApPでは旅行業法下にて無人アパートメント等の運営を行っています。

活用次第で大きく変わる収益差

<無⼈型ホテルのオペレーションの特徴>

  • 予約を⾃社HP‧OTAに集約
  • 事前決済にてキャッシュレス化
  • 電⼦キーの導⼊でキーレスを実現
  • チェックインシステムの導入
  • クラウドコンシェルジュサービス
  • 5カ国語対応のベトナムオペレ ーションセンター

オペレーションに必要な業務全てを⾮対⾯‧⾮接触にて迅速かつ効率的に実施することで、費⽤対効果も質も高いオペレーションが可能となっています。

同じ建物をマンションとして貸すのか、宿泊施設として貸すのか。同じ建物でも活用の方法次第で収益が変わってきます。実例をもとに比較をしても一般賃貸よりも民泊での収益の方が2〜3倍多い売上となります。
民泊物件の場合は共同物件のまま営めます。マンションと同じように建てられるというメリットがあります。旅館業で運営を行うアパートメントホテルの場合は、建築上「容積率」「⽤途地域」「消防基準」「共⽤部」において共同住宅との相違点があります。

ハウスメーカー様との協業事業も展開しています。千葉県‧松⼾市に開業した無人ホテル「Rela東松⼾」は、通常賃料の約2.6倍と⾼⽔準の稼働率を維持しています。
今後、観光地ではないエリアでもホテル事業が盛んになっていくと思っています。

パネルディスカッション

パネルディスカッションの画像

登壇者(写真左から)
江藤 大宗 氏 NOT A HOTEL2nd 株式会社
衣笠 達也氏 株式会社GRApP(グラップ)
野口 真平 氏 MOZU 株式会社
司会:滝沢 潔氏 不動産テック協会 代表理事(株式会社ライナフ 代表取締役社長)

 

NOT A HOTELさんは、オーナーが利用しない時はホテルとして貸し出しをするとのことでしたが、どの程度の収益が見込まれるのでしょうか?

江藤氏:NOT A HOTELが固定価格で借り上げをしています。オーナー様が使わなかった日数すべてをNOT A HOTELで借り上げすることを保証しています。年間で約3%くらいの利回りなので、投資物件としてみると収益性が低くなります。物件の管理費を年間3%いただいているので、全日貸し出すと管理費が0円になるという設計ですね。

違うアセットクラスでも新たな事業を計画しているとのことですが、NOT A HOTELさんは次に何を計画されているのでしょうか?

江藤氏:アセットを小口化したいと考えています。まだ具体的に言えないのですが、皆様が買える物の中で、「住宅より重くてホテルより軽いもの」をやりたいと思います。

NOT A HOTELさんの事業とリゾート会員権との違いは何でしょうか?

江藤氏:掲載しているCG画像を見てもらえれば、ビジネスの説明をしなくても何をしている会社なのかが分ってもらえると思っています。細かい説明がなくてもビジュアルのインパクトで魅力に感じていただき、ご購入につながるケースが多く、そこが一番の差別化ポイントですね。もう一つは、お客様にとってNOT A HOTELを購入することが資産につながること。「現金が資産に置き換わる」まだチャレンジの段階ですが、大きな違いだと思います。

MOZUさんのビジネスでは既存の流通を変革していますが、設備を提供して貰えなくなったり商社から圧力がかかったりしませんか?

野口氏:設備はメーカーさんから問題なく提供していただいています。商社からの圧力は…かかってますね!

滝沢氏:かかってるんですね!?

野口氏:そんな話も聞いていますが、商社でも懇意にしてくださる会社もいるので大丈夫です。

会員の中小工事会社にリーチするために、MOZUさんはどのようなマーケティングをしているのですか?

野口氏:分散していますが、WEB系の広告が多いです。半分くらいがWEB系広告、あとはオーガニックや紹介となります。最近はすごく紹介が増えてきています。

滝沢氏:利用されている中小の企業さんは、どのくらいの規模の会社が多いですか?

野口氏:人数規模ですと、一人親方から10人くらいの規模でしょうか。逆に50人以上の規模になると少なくなってきます。

滝沢氏:SMBに特化しているということですね!

野口氏:そうですね!「MOZUオーダー」は完全にSMBに特化したサービスになっています。エンプラやミドルのゼネコンさん向けには「MOZUオーダー」とは別のSaaSを提供していきます。

「MOZUオーダー」の会員の審査はどのようなことをされていますか?

野口氏:このストラクチャーは複雑でひと言での説明は難しいのですが、「自動審査」と「人による審査」のハイブリットになっています。まず、外部の審査会社様を利用した基本的な審査のプロセスがあります。さらに与信枠について社内のオペレーションにて個別の審査を行っています。

滝沢氏:掛け払いOKだと資金繰りが大変なのでは?と思ったのですが、後払いサービスのようなものは利用しているのですか?

野口氏:使ってないですね。メーカーさんや商社さんとの取引のなか、そこでの決済サイクルに合わせているのでキャッシュフローは特に問題ありません。

「MOZUオーダー」は後発の会社に真似されやすいビジネスかと思うのですが、MOZUさんの強みは何ですか?

野口氏:競合が100年以上続く問屋さんになります。我々も、ここまで来ることが本当に大変でした。そもそも、メーカーさんとの口座を開くことが難しいので。バイイングパワーがあれば、仕入れが安くなる構造なので、まずは集客をしていきました。

プロセスイノベーションが重要だと思うのですが、この業界は顧客ごとに掛け率が違う設計になってます。「MOZUオーダー」は、商品に対して顧客ごとに違う掛け率を紐づけたデータベースを作成しています。なのでお客様が見積依頼をすると自動的に金額を回答することができます。

滝沢氏:ログインするアカウントで金額が変わるのですね!このシステム構造がMOZUさんの強みになるかと思いますが、商社や問屋が同じシステムを作ってきたら大変ではないですか?

野口氏:そうですね。ただ、イノベーションジレンマが起こりやすいのかなと思っています。大手の商社・問屋さんは何千という拠点を持っていて、それぞれの拠点に働いている人がいます。そこをダウンサイジングしていくのは難しいことだと考えています。

GRApPさんがホテルの無人化ができたのは、旅館業法が改正されたからなのでしょうか?

衣笠氏:その通りです。2018年に旅館業法の改正があり、フロントに24時間人を配置しなければならない制度が撤廃されました。

滝沢氏:それまでは24時間フロントに人がいなければいけなかったのですか?

衣笠氏:そうですね。全国一律でそうでした。

すでにある住宅を旅館業法の宿泊施設に転用するには、容積さえどうにかなれば出来るのでしょうか?

衣笠氏:そうですね。だいたい容積が問題になります。用途地域が「専用」だった場合はできませんが。

容積率に注意しつつ、いつでも住宅とホテルを切り替えられる物件が最強だと思うのですが、懸念はありますか?

滝沢氏:旅館業にする時は、登記上から変更しないといけないのでしょうか?

衣笠氏:旅館業法だと用途変更が必要になります。民泊なら共同住宅のままでいいので用途変更が必要なくなります。それであれば、いつでも切り替えというのは出来ると思います。

滝沢氏:ちなみに既に賃貸借契約で住んでいる人が、気付かないうちに自分の住んでいる物件がホテルに変わっている!といったことは出来るのでしょうか?

衣笠氏:用途変更をする場合は消防法で誘導灯やスプリンクラーなど設置義務があるものがいくつかあるので、気付かないうちに…というのは無理だと思います。

滝沢氏:アナウンスさえすれば…いけるということですね。

衣笠氏:そうですね。あとは、保健所の立会とかも必要ですが、出来なくはないと思います。

3年後の事業計画について教えてください!

野口氏:バランスをみながら徐々に開発に力を入れていき、SaaSへの入口を作っていきたいと思います。

衣笠氏:自分たちで土地を抑え、エクイティ・SPCで不動産には投資家に入っていただき、開発は依頼しますが、そんな風にどんどんアセット開発をしていきたいなと考えています。

江藤氏:すべての人にNOT A HOTELを」というのが会社のミッションなので、今日参加されている方々やそのご家族の方、みなさんがNOT A HOTELを持っている世界を作りたいと考えています。NOT A HOTELの現状とミッションとの乖離は、まだまだ大きいですが、だからこそやりがいがありますね。

滝沢氏:ちなみに、HPを拝見するとホテルじゃん!と思ったのですが、NOT A HOTELさんの社名にはどんな意味があるのですか?

江藤氏:「NOT A HOTEL」ですが、ホテルを全否定したいわけではなく、ホテルの良さも活かしつつ、まったく新しいHOTELをつくりたかった。ただし、今あるホテルのビジネスモデルをそのままやらない。どこか少しずつ変えていきたいという意味で、NOT A HOTELという社名になっています。

まとめ

これまで既成概念としてあった「不動産は単一のもの」といった価値観を否定し、持ち方・買い方を工夫したNOT A HOTEL。建物を柔軟に捉え、活用方法の工夫で収益性を上げていくGRApP。
歴史の長い巨大産業の根幹を見直し、仕入れから販売・配送まであらゆることをデジタル化したMOZU。
これまで当たり前だと思われていた概念や商習慣を変え、イノベーションを起こす企業を支えているのは、随所に駆使された最新技術でした。そして技術が最新な会社は、ビジネスモデルも”最新”でした。イノベーターとして最前線を走る企業がどのように社会を変えていくのか、今後の展望に期待が高まります。

関連情報

│一般社団法人 不動産テック協会
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

┃NOT A HOTEL 株式会社
https://notahotel.com/

┃MOZU 株式会社
https://about.mozu-inc.jp/

┃株式会社GRApP(グラップ)
https://grapp.co.jp/

to-page-top