日本でリバースモーゲージが普及しない7つの理由|長寿リスクの回避策とは

投稿日 : 2020年01月31日

リバースモーゲージは比較的新しいローン制度のひとつですが、アメリカなどの諸外国に比べて日本の利用者数はそう多くありません。

なぜリバースモーゲージはなかなか日本に普及しないのでしょうか。リバースモーゲージの制度が定着している諸外国と比べれば、その理由を知ることができます。

今回はアメリカと日本のリバースモーゲージ事情を比較しながら、日本でリバースモーゲージが普及しない理由を探っていきましょう。

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この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

リバースモーゲージとは


 

リバースモーゲージとは、高齢者の居住用不動産を担保として融資を受けるローン商品です。リバースモーゲッジとも呼ばれます。

リバースモーゲージの融資方法は、契約者は貸付金額を一括払いもしくは年金として受け取ります。返済は契約者が死亡・転居・相続などにより居住しなくなったときに不動産を処分して元利一括返済します。

2019年に住宅金融支援機構が取りまとめた事業運営審議委員会の資料によると、住宅金融支援機構が販売しているリバースモーゲージを利用した住宅ローン商品「リ・バース60」の2018年度の付保申請件数は350件、融資額はおよそ58.8億円でした。


画像引用:住宅金融支援機構|今年度の取組等について

 

世界のリバースモーゲージ市場

日本から目を転じて、アメリカやヨーロッパにおけるリバースモーゲージの市場規模を見てみましょう。

 

前項でご紹介したのは住宅金融支援機構の1商品だけの年間数値ではあるものの、日本のリバースモーゲージマーケットが小規模であることは容易に推測できます。

なお、リバースモーゲージは大きく分けて「担保型(住宅処分を前提に不動産を担保とする方式)」と「権利移転型(売買により所有権を移転する方式)」とがあります。

日本やアメリカで用いられている方式は「担保型」です。イギリスやフランスは「権利移転型」のリバースモーゲージが主流です。

 

日米のリバースモーゲージ商品比較

同じ「担保型」である日本とアメリカを比較するだけでも、両国のリバースモーゲージ商品の特性には大きな違いがあります。

日本のリバースモーゲージ商品は担保評価により期中返済や追加返済が生じる可能性があるリコースローンです。2017年の制度拡充によりノンリコース型リバースモーゲージも誕生していますが、まだリコース型の方が主流です。

対してアメリカのリバースモーゲージ商品は、融資期間は終身、かつ担保評価額が融資額を下回っても追加返済の必要がないノンリコースローンが主流です。

「リバースモーゲージを契約すれば死ぬまで安心」が約束されるアメリカの商品特性に対して、日本のリバースモーゲージは一定のリスクをはらんだ商品なのです。

 

アメリカでは政府が担保割れリスクを保証している


 

上記のようにアメリカのリバースモーゲージ商品が期中返済不要・追加返済不要にできるのは、政府の関与があるからです。

アメリカのリバースモーゲージ利用の9割は、HECMという政府保証有のリバースモーゲージ商品です。

担保割れリスクを保険という形で政府が引き受けているため、高齢者や家族が安心してリバースモーゲージを契約できるのです。

 

日本にリバースモーゲージが普及しない理由

どうして日本ではリバースモーゲージが普及に至っていないのでしょうか。それには7つの理由が考えられます。

上記の説明と考え合わせながら、アメリカと違う日本ならではの国民性も考えましょう。

 

認知度がまだまだ低い

まずは一番の理由として、リバースモーゲージが日本人の中で十分に知られていない点が挙げられます。

 

リバースモーゲージの元となる長期生活支援資金貸付制度が創設されたのが2002年ですから、融資商品の中でもまだまだ未成熟だと言えます。しかしこの問題は、販売会社が今後リバースモーゲージ制度の広報活動を行っていくことで解決していくと思われます。

 

長生きがリスクになる


 

先ほどの説明のとおり、日本のリバースモーゲージは期中返済・追加返済が必要なリコースローンです。そのため近年の日本の超高齢化により、リバースモーゲージはリスクのあるローンになってしまっています。

長生きした人が融資されたお金を使い切ってしまうと、その後の財源が得られなくなり、住む場所さえ失ってしまいかねません。

「長生きが嬉しくない」事態となるため、身体的に健康な高齢者ほどリバースモーゲージを敬遠する傾向にあります。

 

取扱い銀行が限定される

リバースモーゲージ商品を取り扱っている銀行が少ないのも、日本でなかなか普及しない原因です。

最近ではリバースモーゲージの新商品を出している金融機関も増えていますが、取り扱いは大都市圏の不動産に偏っています。対象エリアが限定的なため、全国的な広がりは見せていません。

 

対象不動産に制約がかけられる

地域だけでなく個々の不動産自体でも制約を受ける場合があります。

戸建てのみを担保の対象としている金融機関もあり、そうするとマンション居住者はリバースモーゲージの申し込み自体ができません。

また戸建て物件であっても、借地権が設定されている土地建物は対象外としている金融機関があります。

 

相続人全員の同意書が必要


 

リバースモーゲージの契約には、契約者が亡くなったときに相続人となる人全員の同意が必要です。

相続人の数が多い人、法定相続人になる人と日頃疎遠な人、相続に際してトラブルが予想される人の場合、相続人全員の同意書を揃えるのも困難が予想されます。そのため、リバースモーゲージの契約をしたくてもできない人が存在します。

 

従来の不動産売却+住み替えが優先される

担保評価の低いリバースモーゲージではなく、不動産を売却して住み替えした方が良いと考える人も一定数存在します。

こちらは前項の「認知度が低い」にも通じる話であり、今後リバースモーゲージが世間に知られていくことで、リバースモーゲージのメリット・デメリットを比較して判断する層も増えていくと考えられます。

 

商品設計に不安がある

そもそもリバースモーゲージの商品設計が不安だ、という声も無視できません。

変動金利によるリスクやリコースローンのリスク、さらには契約者の死後に家族が自宅に住めなくなるリスクなど、これまでに挙げた「普及をさまたげる理由」がさまざまにからみあって、契約に二の足を踏んでいるのです。

 

今後のリバースモーゲージ予想


 

この先に日本でリバースモーゲージが利用されていくためには、金融機関等の商品拡充や普及活動もさることながら、政府の介入も必要だと考えられます。

米HECMのように担保割れリスクを政府が保証していかないと、日本の超高齢化社会では契約者のリスクが高すぎる商品になるからです。

この4、5年ほどで政府はリバースモーゲージ普及のためにさまざまな制度拡充を図っており、今後は「安心して長生きできるリバースモーゲージ」のために新たなる制度が考えられていくと思われます。

それが実現して初めて、日本にリバースモーゲージが定着する道が開けるでしょう。

まとめ

今回は日本とアメリカのリバースモーゲージ事情を比較しながら、日本でなぜリバースモーゲージが普及しないのかについて考えてみました。

現在のリバースモーゲージには多くの問題点があり、今後はその問題点をひとつずつクリアしていくために、いろいろな制度改革がなされていくことが予想されます。

将来的には不動産購入・売却ともにリバースモーゲージを利用した資金計画を考えるお客様も増えていくことが予想されますので、今後ともリバースモーゲージの動きに注目しましょう。