米国住宅ローンテック業界で注目される主要企業のご紹介
米国住宅ローンテック業界にて注目される主要企業を紹介していきます。
日本では不動産情報を調べる際にREINS(レインズ)というオンラインネットワークシステムを利用しますが、アメリカにも同じような仕組みが存在します。
アメリカの不動産情報システムMLSは、日本のREINSとはどこがどのように違うのでしょうか。
今回は米MLSの仕組みを理解し、日本のREINSと比べたときの長所・短所について考えてみましょう。
![]() |
この記事の監修者: 小林 紀雄 住宅業界のプロフェッショナル某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。 |
MLSシステム(Multiple Listing Service system)はアメリカの不動産業者向けデータベースシステムです。アメリカ国内では地域ごとに約900のMLSが存在します。
米国内においてもっとも信頼がおける不動産情報源として、アメリカだけでなく海外からも多くの不動産業者・消費者が利用しています。
MLSのデータベースに直接接続すれば、販売中の物件情報の販売価格および適正価格、過去の所有者履歴や売買履歴、3Dで内見まで可能です。
リアルタイムで不動産情報を網羅し、登録情報の透明性も高いため、究極の不動産情報システムとも呼ばれています。
ここからは、もっと詳しくMLSシステムの特徴を解説していきます。
MLSで物件情報を検索すると、過去の売買履歴・歴代の所有者と売買時の価格・ローン金額や債権者名・直近数年間の固定資産税の評価額・競売履歴などのパブリックレコード(公的履歴情報)が確認できます。
アメリカにはパブリックレコードやオープンデータを収集・データ化して提供している民間企業(データブローカー)が存在し、多くのMLSではデータブローカーが提供する不動産履歴情報システムをMLSリスティングシステムと連動して利用できるようにしています。
MLSのデータベースにストックされている膨大な不動産情報を元に、不動産の購入時に参考とするさまざまな物件情報を串刺しにしてレポート出力することができます。
MLSシステムが持つIDXサーバ機能(データ互換)を通じて、MLSから外部のB2C ポータルやブローカーのホームページなど各媒体に自動的に送信することが可能です。
アメリカの不動産エージェントは物件を所属するMLSに入力するだけで良く、物件がMLSに登録された後はIDX機能を使って外部への情報共有がなされます。情報の初回登録時だけでなく、情報に変更があった際の更新時にも同様です。
アメリカ全土にMLS情報を送るために、MLSでは共通データベース仕様(RETS)が設定されています。またMLSにアクセスするためのインターフェース仕様(API)も決められています。
MLSでは非公開物件(ポケットリスティング)の扱いを禁止しています。
会社規模の大小を問わず、また企業・個人を問わず同一情報にアクセスできるため、透明性の高さが特徴です。これにより一部の不動産業者が情報を秘匿することなく、透明で平等な取引が実現しています。
規約に違反した場合、違反した会員に対してMLSは勧告や罰金などのペナルティを課します。違反の状況により除名処分の可能性もあります。
MLSの概要を理解したところで、具体的に米国MLSと日本REINSにはどのような違いがあるのか、3つの違いを知りましょう。
MLSとREINSの一番大きな違いは情報量です。両国の不動産情報システムのデータ量には圧倒的な差があります。
日本で専任媒介契約を行うとREINSへの物件登録を行うのが義務ですが、一般媒介契約の場合にはREINS登録が必須ではありません。そのため一般媒介ですぐに成約するような好物件はREINSで確認できないことが多いです。また成約価格情報の登録義務も、まだ網羅的に機能しているとは言いがたい状態です。
それに対してMLS会員である不動産業者が取り扱う米国内物件は、必ずMLSに登録しなければいけません。地域ごとのすべての不動産情報がMLSに集約されていると言っても過言ではなく、膨大な量の情報を得ることができます。
さらに日本では登記情報などのパブリックデータは法務局などで紙書類を入手する必要があり、米MLSのようにデータ上で確認できない点にも違いがあります。
REINSは不動産業者だけが利用できる情報サイトなため、基本的には一般消費者はREINSにアクセスできません。
例外として不動産取引情報提供サイト(REINS Market Information)へのアクセスは可能ですが、確認できる情報は統計的な資料など非常に限定的です。
MLSは不動産業者だけでなく一般消費者でもアクセスが可能なため、不動産業者が物件情報を隠すことはできません。そのためMLSでは、透明性が高い不動産取引が可能です。
先ほどご説明したとおり、MLSでは共通のデータベース仕様(RETS)やデータ連携システム(IDXサーバ機能)が整備されており、その統一規格に基づいたアプリケーションを開発すれば、各種不動産ソフトウェアやアプリケーションの開発も容易です。
アメリカ国内で多くのベンチャー企業が不動産テック事業に参入している背景にも、この外部データベース連携があると考えられます。
良いことづくしのようにも思えるアメリカのMLSですが、もちろんデメリットもあります。そのひとつは、MLSライセンス取得に手間がかかる点です。
アメリカ国内にMLSは約900あり、それぞれに管理団体が分かれています。MLSを利用するにはそれぞれの管理団体に申請して仲介会社ライセンスを取得しなければいけません。
多くの地域にまたがって営業している大手不動産業者の場合には、MLSアカウントの管理だけで多くの労力を要します。
上記のようなMLSの不便さを嫌い、MLSに接続せずに不動産情報を得ようとする米不動産業者もいます。
MLSアカウントがなくても物件情報を得ること自体は可能ですが、MLSに接続して物件を検索するのに比べ、情報の精度や鮮度、網羅性はどうしても劣ります。
またMLS非接続だと登録情報が自動的に外部連携しないため、営業活動やロビー活動への投資も必要になります。
MLSのライセンスを取得せず、独自の調査で物件を探す不動産エージェントもいます。アメリカの不動産ポータルサイトの中には、エージェント情報だけに特化しているポータルサイトも開設されているほどです。
物件情報からでなく不動産エージェントから探すというユーザーはアメリカの中でも少数派ですが、逆に言えばエージェントを見つけたいというユーザーは、既に購入希望物件もしくは売却予定物件が決まっているユーザーとも考えられます。そのため成約率は物件を1から探すユーザーに比べて高くなります。
また、MLSライセンスや仲介会社ライセンスの管理や営業活動の手間とコストを削減できるため、小規模でもビジネス展開が可能です。
今回はアメリカの不動産業者向けデータベース「MLSシステム」について解説しました。MLSとREINSとの違いや、MLSの特徴について理解できたことでしょう。
日本のREINSにはアメリカのMLSに学ぶべき点が多くあります。逆にMLSのデメリットから、REINSの良いところにも気付くことができます。
MLSシステムを知り、自分たちが日本で不動産情報を検索するときの参考にしましょう。
スペシャルコンテンツに興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本関連記事