日本でリバースモーゲージが普及しない7つの理由|長寿リスクの回避策とは
リバースモーゲージは比較的新しいローン制度のひとつですが、アメリカなどの諸外国に比べて日本の利用者数はそう多くありません。
日本では当たり前の不動産取引の商慣習も、海外ではほとんど行われていないことがあります。逆に、日本から海外の不動産慣習を見たときに、意外に思えることもあるでしょう。
海外の不動産慣習を知ることで、日本の不動産慣習の利点と欠点が浮かび上がってきます。
今回は日本とアメリカの不動産慣習を比較して、具体的にどのような差異があるのか確認してみましょう。
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この記事の監修者: 某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。 |
まずは基本的な事柄として、日本とアメリカでは不動産購入の流れを説明します。宅建業者の皆さんでしたら日本の不動産購入については慣れ親しんだやり方かもしれませんが、この機会におさらいしてください。
日本のお客様は一般的に、以下のような流れで不動産を購入します。
対して、アメリカでは不動産購入の流れは以下のようになります。
次には日本とアメリカの不動産取引を比較してみましょう。
簡単な表にまとめると、以下のような違いがあります。
上の表で日本人にあまりなじみのない言葉は「エスクロー」と「タイトル保険」です。エスクローとタイトル保険はアメリカでの不動産取引では欠かせない存在です。
以下では、エスクローとタイトル保険について詳しく説明します。
不動産売買契約をするときに、日本では買主様が売主様に代金を支払います。住宅ローンの借り入れ金融業者をはさむことが多いですが、お金の流れが買主様→売主様である点は変わりません。
アメリカの場合、売主様と買主様との間にエスクローという資金管理会社が入ります。
エスクロー会社は不動産購入のオファーが入った時点から代金決済までの間、第三者の専門家として資金管理を行う役目があります。
◎エスクロー会社の主な業務
エスクロー会社が請け負う業務は、主に以下の5点です。
出典:https://www.pleast-usa.com/buy/index.html
(4)の不動産譲渡税は売主側が負担する場合と買主側が負担する場合の2通りありますが、どちらが支払うかについては売買契約書の中で取決めされるのが一般的です。
タイトル保険(Title Insurance)とは、物件の所有権(タイトル)に対する保険のことです。権利に対して保険をかけるということ自体、日本ではあまりなじみのない慣習です。
◎タイトル保険会社の主な業務
タイトル保険会社は不動産の売買契約が締結されるとすぐに、当該不動産に対する所有権・抵当権・先取特権・地役権・未払税金などの登記や税金についてまとめたレポート(Preliminary Title Report)を発行します。
その後、物件の引渡し時には国や州のガイドラインに基づいたALTA ・CLTA(カリフォルニア州が対象)などのタイトル保険を発行します。
ALTAやCLTAの内容は「万が一このレポートに記載されていない所有権や抵当権など、買主に不利となる事項が判明した際には損害額を補償する」というものです。
タイトル保険の発行時には、不動産売買契約時のレポート(Preliminary Title Report)を物件引渡し前に修正し、最終的なタイトル保険レポート(Title Insurance Report)』に更新されます。
日米の不動産取引で一番大きな違いは前述のエスクローおよびタイトル保険ですが、それ以外にもいろいろな違いがあります。以下で、いくつか例を挙げてみます。
日米の違いは、不動産購入の流れや取引形態にとどまりません。
そもそもの商慣習の違いや、国民の不動産に対する消費者マインドの違いが大きな差を生んでいます。
日 本:依頼を受けた不動産業者1社が取引完了までのプロセスを担当する
アメリカ:不動産業者だけでなく複数の専門業者が協業する
日 本:住宅を家族の拠点と捉え「住み心地」を最優先する
アメリカ:住宅を有益な投資対象と捉え「資産価値」を最優先する
日 本:新築偏重主義
アメリカ:合理主義(新築・中古にこだわらない)
※既存住宅流通率:日本15%程度に対しアメリカ80-90%程度
日 本:リコースローン
アメリカ:ノンリコースローン
ここまで説明した内容を踏まえて、日米の不動産市場は実際にどう違うのかを一覧表で見てみましょう。
今回は日本とアメリカの不動産慣習を比較しながら、日米の違いとその理由について解説しました。
海外に視点を向けることで、日本の不動産市場の課題や改善点にも気付けたのではないでしょうか。
日本国内の不動産慣習だけを自分の指標にするのではなく、広い視野を持って今後の不動産市場を見据えましょう。