米国の住宅ローンマーケット情報|リーマンとサブプライム危機による影響は

投稿日 : 2020年01月31日

日本において不動産販売をする際には、お客様が借り入れる住宅ローンの存在は無視できません。住宅ローンマーケットの動きにも常に注意が必要です。

これは日本だけでなく、アメリカでも同じです。

アメリカでは2008年のリーマンショックやサブプライムローン危機に端を発した金融政策の実施により、住宅ローンマーケットに大きな波が生まれています。

今回は日本から視点を大きく広げて、アメリカの住宅ローンマーケットについて調べてみましょう。

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この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

日米の住宅ローン主要数値比較

まずは、2つの国の住宅ローン主要数値をざっと見てみましょう。

国土も人口も違うために一概には言えませんが、例えば固定金利の比率(全期間固定)の項目などには大きな違いがあります。変動金利の高さについても着目したいですね。

どうして日本とアメリカでは、このような差が生じるのでしょうか。

住宅ローン借り入れに必要な諸費用(米国)

住宅ローンを借り入れる際は、借入金以外にもさまざまな諸費用がかかります。

アメリカで住宅ローンを組むときに必要となる諸費用を一覧表にしました。

住宅ローンの借入金額にもよりますが、おおむね借入金の3%程度が平均的な諸費用となります。

また、アメリカで不動産を購入する際にはエスクローという資産管理会社を経由して売主側に代金を支払う慣習があります。エスクロー会社への支払い費用も諸費用の一種として考えると、不動産購入時の諸費用はさらにプラスされます。

米国住宅ローンマーケットの動き

それでは、ここからは近年のアメリカにおける住宅ローンマーケットはどんな動きをしているのか、ひとつひとつ見ていきましょう。

住宅ローン残高は高値安定

2010年以降、アメリカ国内の不動産価値は上昇しています。米国内不動産流通のおよそ90%を占める中古不動産も値崩れがおきにくくなっています。

住宅ローンの借入残高についても、10兆ドル(1000-1100兆円)程度で安定的に推移しています。


出典:https://www.urban.org/sites/default/files/publication/97491/housing_finance_at_a_glance_a_monthly_chartbook_march_2018.pdf

住宅ローンの貸し手属性が変化

日本では住宅ローンの貸付を行っているのは約70%が金融機関ですが、近年のアメリカではNon-Bankが過半数を占めています。

かつては一定のシェアがあった金融機関による貸付は、年々減少傾向にあります。


出典:https://www.magnifymoney.com/blog/mortgage/u-s-mortgage-market-statistics-2018/

平均貸出金額が増加

住宅ローン1件あたりの貸出金額は継続的に増加しており、住宅購入費用に占める借入の割合(LTV)は約86%です。

この理由は、主に建築コスト上昇による住宅価格の値上げと、不動産購入者側の頭金比率が減少しているためです。

米国住宅ローン金利の特徴

最初に日米の住宅ローン主要数値を紹介したときに申し上げたとおり、アメリカの住宅ローンでは特に金利に特徴があります。

具体的にどのような金利の特徴があるかを見ていきましょう。

固定金利が優勢

既存ローンの借り換えでなく新規融資の場合には、全期間型の固定金利を利用する人が全体の90%を占めています。

アメリカで住宅バブルが起こっていた2005年時点は、固定金利ではなく変動金利が42%を占めていました。しかしサブプライムローン危機以降は消費者がリスクヘッジのためか固定金利を多く選択しています。


出典:https://www.urban.org/sites/default/files/publication/97491/housing_finance_at_a_glance_a_monthly_chartbook_march_2018.pdf

30年固定金利の利益推移

現在のアメリカで固定金利が選ばれている理由のもうひとつは金利差です。30年固定と変動金利を比べると、足元では約1%弱の金利差があります。

※5/1 ARM = 変動金利(当初5年固定)

出典:https://www.cnbc.com/2018/03/01/as-home-prices-soar-buyers-turn-to-riskier-mortgages.html

リーマンショック後の金融緩和を受けて、2009年以降は金利の低下傾向が続いていました。

しかし2016年・2017年以降の金融政策の引き締めや政策金利の引き上げにより、足元金利の水準も4.6%程度上昇しています。

2020年初頭の30年固定金利水準は4.9%となっており、今後も緩やかに上昇すると予想されています。


出典:https://tradingeconomics.com/united-states/mortgage-rate

消費者の住宅取得意識にも変化が

近年のアメリカ金融情勢の変化を受けて、国民の住宅取得意識にも変化が見受けられます。その意識変化は不動産の購入意欲を増す側面と、減らす側面の両方があります。どちらも確認しましょう。

資産形成の観点による不動産価値の上昇

不安定な金融情勢により、不動産の資産価値が上昇しています。

また「借りるより買った方が安い」との見方もあり、不動産を所有したいと考える人が増えてきています。

住宅ローン控除の縮小による買い控え

2017年12月の税制改正により一部の住宅ローン控除が認められなくなった影響で、高額物件を購入しようとする人が二の足を踏んでいます。

新築物件販売価格の上昇による買い控え

特に新設住宅の建築においては、現場労働者の人件費やトラック等物流費の上昇、さらには米政権による輸入関税引き上げにより建築資材の価格も上がったために、建築コストが急激に上昇しています。

それに伴い住宅販売価格も高額化し、その伸び率は国民所得を上回って推移しているため、一般消費者の住宅購入に影響が生じています。

まとめ

今回はアメリカの住宅ローンマーケットの最新の動向について解説しました。

日本でもアメリカでも、お客様が不動産を購入する際には住宅ローンの借り入れは必ずと言って良いほど多く発生します。そしてアメリカの住宅ローンマーケットの問題は、日本の住宅ローンマーケットにも通じる問題です。

アメリカの住宅ローンにまつわる最新の動きを把握し、ふりかえって日本の住宅ローン情勢についても意識してみましょう。