中古住宅の流通・価値の違いを知る|税制に見る日米の不動産政策

投稿日 : 2020年01月31日

日米の不動産政策を比較する際に、避けては通れないのが両国間における税制面での違いです。そして、税制面での違いの根本にあるのが、日米の不動産物件そのものの現状や不動産業界の仕組みの違いです。

この記事では、両国の不動産事情の差異にスポットをあてながら、税制面と不動産政策の違いについて検証してゆきます。

kobayashi

この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

持ち家の平均所有年数

アメリカ国内での持ち家の平均所有年数は約5年から8年と言われているのに対し、日本では漠然と「長期」と言われるケースが目立ちます。

これは生涯平均で5~8回ほど引っ越しや住み替えを行うと言われるアメリカ人に対し、日本人は「不動産購入は生涯で1度きり」という傾向が強いことに紐づけられます。

日本では、社会人になり安定した収入を得られるようになった年齢で、定年までの永い住宅ローンを組み、ローンを背負って会社勤めをする、そんなケースを耳にする機会も多いのが事実です。

日米の住宅は寿命が短い?

所有年数が長いものの、日本国内の住宅はアメリカ国内の住宅と比較して、建物の寿命が短いと言われています。以下に3つの原因を上げています。

  1. 住宅の質の低さ
    日本の住宅の寿命が短い原因として、まず考えられるのが、「住宅の質が低い」ということです。戦後の住宅不足を発端に、質よりも量を確保すべき時代の日本では、永く住める住宅ではなく、早く供給できることを目的として建てられていたために、海外の住宅、とくにアメリカの住宅と比較すると高品質とはいえない状況が存在します。ただし、近年では、建築基準法や品確法、さらに公庫の基準などの法整備も進み、住宅の品質は今後水準があがるものと予想されます。
  2. 中古住宅流通
    中古住宅の流通がアメリカと比べると活発ではないことがあげられます。日本では、通常築15年経つと、建物についての評価額はほとんどゼロになってしまうと言われています。家族構成やライフタイルの変化とともに、今の住まいを売って住み替えようとしても、中古住宅の売却が難しく、簡単に住み替えは出来ない状況があります。このような背景もあり、古い物件になればなるほど、売買するより、取り壊して建て替えようということになってしまう傾向にあります。
  3. リフォームがしにくい
    これまでの日本の住宅がリフォームしにくいことが上げられます。暮らしていくうちに、壁をつくって間取りを変えたり、間仕切りを取り外したり必要に応じて増築したくなるものですが、住宅の構造や仕組みがそれに対応できうるものでなければ、難しい選択となってしまいます。

 

住宅は耐久性はもちろんですが、将来の間取り変更が可能な構造であり、リフォームもしやすいように水まわり配管などの設備に工夫があることが重要です。

日本では近年こそリノベーション住宅がにわかなブームを巻き起こしましたが、アメリカでは以前からリノベーションすることが当たり前として住宅が建築されていた傾向にあります。

 

アメリカは日本と比べて建物の評価割合が高い傾向

このような住宅そのものの寿命の長さの違いを考慮して、近年、日本の中古アパートではなく、アメリカの中古アパートへと投資の目を向ける方が増加しています。

 

理由の一つは、アメリカは日本よりも建物の評価割合が高いためです。日本では築年数が経過した戸建てや築古アパートの建物評価額は20%~30%とわずかにしかならないため、節税効果もほとんど期待できないケースが多いのですが、アメリカの中古アパートは築年数が経過しても、不動産における建物評価の割合が70%~80%と高くなるケースが多く、短期の節税に非常に適しています。

 

建物評価の割合が日本よりも高くなる理由としては、アメリカの住宅は日本の住宅と比べて建物の寿命(建て替えなどのサイクル年数)が長いと言われており、アメリカでは建物が長く残存することが前提となっているためではないかと考えられます。

 

日米における売買時の手数料・業務分担の違い

 

不動産比較:税制比較

  • 売買手数料を支払う人 アメリカでは売主だが、日本では買主と売主。
  • 売買交渉・コーディネート アメリカは不動産エージェント、日本は不動産業者
  • 決済業務 アメリカはエスクロー、日本は司法書士
  • 負債の確認・登記事務 アメリカはタイトル保険会社、日本は司法書士
  • 個人保証の有無 アメリカは売主 日本は買主と売主

 

購入者に対する保護や税制面の優遇措置が見受けられますが、アメリカの不動産取引で重要な役割りを果たすのが、エスクローという会社の存在です。(エスクローは西海岸エリアを中心とする制度です)

 

国の承認を受けたこの会社は、日本で言うと司法書士の役割を行うもので、売主と買主の売買に関する手続きをこの会社がコントロールします。決済までの代金の預かりや入金、固定資産税やその他の諸経費に関わる決済業務などをエスクロー会社が行うため、日本のように金融機関や仲介業者を含めた売主買主双方が一同に会して手続きを行うことがなく、極めて合理的なシステムとなっています。

 

さらに、タイトルインシュランス(名義瑕疵保険制度)という不動産権利の瑕疵や名義の正当性を保証する保険制度により取引の安全性が保たれています。これによりアメリカでの住宅購入者は権利関係によって起こるトラブルから金銭的に保護されていることになります。

 

日米における不動産関連の負担税の違い

 

  • 持家支払利息の所得税控除 アメリカでは借入元本100万ドル以下であれば全額控除可能。日本は一部制限あり。
  • 持ち家固定資産税の所得税控除 アメリカは全額控除が可能だが、日本は不可。
  • 住宅所得税 アメリカはなし、日本はあり。
  • 建物に掛かる消費税 アメリカはなしで日本はあり。
  • キャピタルゲイン(売却利益)の税務上優遇措置
    アメリカでは2年以上の居住で50万ドル(単身25万ドル)の所得控除。日本は居住用は最高3000万円の所得控除。所有5年未満は40%課税それ以外は20%課税
  • 不動産関連税 アメリカは固定資産税、譲渡税。日本は固定資産税、都市計画税、登録免許税、印紙税。

個人的にも税制面で保護されているアメリカですが、日米の税制面での最大の違いは、減価償却費の計算方法です。

 

日本では、新築の木造建物を購入した際の減価償却の耐用年数は22年。木造中古建物を購入した場合は、残りの耐用年数+経過年数×0.2年、22年以上の物件であれば一律4年の減価償却期間となります。しかし、アメリカでは、新築であれ、中古であれ、住居用物件に関しては、購入時から27.5年の減価償却期間が認められています。

 

また、建物価格の評価が高いため、アメリカの申告においては、長く減価償却を経費として申告でき、日本の申告時では、仮に25年の中古物件を購入した場合でも、1年間に経費として計上できる額が大きくなるという税制上のメリットが得られます。さらに、借入金利において、アメリカでは、建物部分に限定されず、全てが経費の対象となるところも大きな違いと言えます。

 

異なる不動産の価値への考え

 

  • 新築・中古割合 アメリカはおおよそ 1:8 日本おおよそ10:1

 

不動産の価値は、築年数により下落していくというのが日本の考え方ですが、アメリカではこの逆です。

一生に5回前後引越しをすると言われるアメリカ人にとって、新築を購入するという発想が一般的に少ないため不動産市場においても、売買の取引比率では、全体のおよそ8割を中古物件が占めています。そのため、物件の状態が良ければ、築30年であろうと賃貸価格を比較的維持させたまま家賃収入を得ることができ、修繕などにより物件のグレードがアップされれば、購入価格より高値で売却することがアメリカ不動産市場での考え方なのです。

 

まとめ

このように日米のあいだには不動産に関する大きな意識の違いが存在します。

そして、個人の不動産売買行為が、法律や業界全体の仕組みのよって保護され、税制面でも日本と比べ優遇されているアメリカでは、不動産中古市場がより活性化されやすく、比較的安定した成長が見込める環境にあると言えるでしょう。