米国の住宅ローン市場の動向と環境|データから読み解く現在と予想

投稿日 : 2020年01月31日

住宅市場・金融市場の規模が大きいアメリカでは、住宅ローン市場も巨大です。サブプライム住宅ローン問題がリーマンショックのような世界的経済危機の引き金になったように、アメリカの住宅ローン市場は世界経済に大きな影響力を持っています。

そこで今回は、アメリカの住宅ローンを取り巻く現況についてまとめました。アメリカ経済の動向を確認するとともに、住宅ローン業界への理解を深めましょう。

kobayashi

この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

米国の住宅市場を取り巻く環境

アメリカの住宅ローン市場を取り巻く環境と市場動向を考察するために、住宅価格などの関連データを参照しましょう。日本の統計とも比較することで、より理解が深まります。

 

人口推移


画像出展:幻冬舎GOLD ONLINE

上のグラフは、米国の人口推移とその予測を、日本・ヨーロッパ諸国と比較したものです。日本とヨーロッパ諸国は、ほぼ横ばいに推移しているのに対して、米国だけは右肩上がりの上昇を続けています。

さらに米国の人口は、2060年までに4臆1,700万人にまで増加する見込みであると予想されています。

世帯数・住宅戸数の推移


画像出展:United States Census Bureau

次に世帯数の推移を見てみましょう。

こちらも、2010年から2018年にかけて、増加を続けています。また、住宅戸数も同様の推移を示しており、2060年までに新たに3,800万戸が必要になると見込まれています。

人口・世帯数・住宅戸数の推移を参照すると、いずれも長期的に増加すると予想され、米国の住宅市場の規模は今後も拡大し続ける見込みです。

米国の住宅ローン市場の動向

米国の住宅販売件数の推移

◆新築住宅の販売件数の推移

画像出展:Statista

1995年以降、サブプライムローンによって低所得層でも容易に住宅ローンを受けられ、新築販売戸数は順調に上昇しました。不動産所有は安全で手軽な投資として、低所得層にまで普及したことが理由として挙げられます。

しかし、債務不履行が相次ぐなど住宅ローンビジネスの破綻が顕在化すると、市場は世界的な経済危機へと向かいました。新築販売件数も、2005年をピークに一気に急降下します。

その後、2011年からは徐々に上向き、2018年には61万4,000戸まで回復しています。

◆中古住宅の販売件数の推移

画像出展:Statista

中古住宅の販売件数も、新築と同じくリーマンショック前後で約700万戸から約400万戸に減少し、2011年以降に徐々に回復しています。

ただし、米国では中古住宅の方が新築よりも主流であるため、減少時の下げ幅は新築と比べると緩やかに推移しています。

ちなみに、アメリカの中古と新築の比率は8:1程度です。一方、日本では圧倒的に新築の需要が多く、中古と新築の比率は1:10程度です。

経済危機により一時期には販売数が減少したものの、人口増加にともない再び増加しているのが現状です(ただし直近の2019年のみわずかに減少したため、引き続き観察が必要)。

住宅価格の推移


画像出展:United States Census Bureau

上のグラフは、新築住宅販売価格の中央値と平均値の推移を表しています。リーマンショック前後の数年間は一時的に下落したものの、それ以外はおおむね上昇し続けています。

アメリカの新築住宅は、1997年以降の20年間でほぼ2倍の価格で販売されるようになったことがわかります。


画像出展:国土交通省

そして上のグラフは、日本の地価公示額の推移を表しています。日本ではバブル期をピークに下がり続け、ここ10年はピーク時の半額以下となっています。ただし、直近の5年の推移を参照すると、緩やかに回復しているのがわかります。

住宅ローン残高の推移


画像出展:Statista

米国ではここ数年、住宅ローン残高の最多額を更新し続けており、経済界・不動産業界で話題となっています。

サブプライムローン問題が発覚した時期に、ローン残高は14兆7,200臆ドルとなり、1度目のピークを迎えます。その後、大手銀行は貸出しに慎重なスタンスへと変換したため、一旦は約1兆円ほど残高が減少します。

しかし、経済状況が落ち着いてきた時期から再び増加に転じ、2017年に14兆9,000億ドルを記録してからは、毎年最多額を更新しています。

住宅ローン貸出額・残高の増加の原因としては、以下が考えられます。

◆住宅ローン貸出額・残高増加の原因

  1. 経済危機状態が落ち着いた
  2. 人口の増加
  3. ノンバンク系住宅ローンの需要増加 など

大手銀行が不動産融資事業の引き締めを行ったことで、オンライン住宅ローンなどのノンバンク系ローンを利用する住宅購入者が増加しました。

ノンバンク系の住宅ローンは、企業はそれぞれ独自の借入れ条件・審査基準を設定し、大手銀行では引き受けていない低中所得層へも積極的に融資を行っています。また、住宅ローンテックを駆使したシンプルでスピーディな審査・契約手続き、住宅購入のハードルを下げるニュータイプのサービスを提供している企業も多く、利用者が増加しています。

国債基準金利の日米比較

「基準金利」とは、「店頭金利」とも呼ばれ、各金融機関が独自の判断で設定する標準の金利のことで、いわば“定価”に相当します。各金融会社の基準金利は、国債の基準金利を目安にするのが一般的です。

そこで、以下のグラフによって、日米の10年国債基準金利を確認してみましょう。

◆米国の10年国債基準金利

◆日本の10年国債基準金利

2020年1月25日現在の10年国債の利回りは、日本が「-0.010%」、アメリカが「+1.686%」となっています。その他の欧米諸国でも、おおむね低金利~マイナス金利となっています。(ただし、日本の個人向け10年国債は、最低金利「+0.05%」と元本が保障されています。)

金利が低ければ、それだけ利息も低く抑えられるので、ローンを受けやすくなります。住宅ローンの貸出額の増加には、「低金利」という要因もあると考えられます。

米国の住宅ローンの概要

米国住宅ローンの仕組み

米国では、住宅ローンの約70%が「証券化」という方法で資金調達を行っています。ここではその仕組みを、各フェーズごとに解説します。

  1. 銀行・ノンバンクによるオリジネーション(取組み)
    オリジネーション(取組み)とは、資金調達やM&Aの案件を当事者双方に提案したり、取引きをサポートしたりする業務のことです。融資希望者への提案の他、③債権売却などを行います。また、大手銀行はノンバンク系金融機関への融資も行っています。
  2. 住宅購入者によるローンの借入れ(銀行による貸出し)
    銀行やノンバンクは、住宅購入者の信用度やリスクに合わせて、さまざまなローン商品(後述)を用意しています。
  3. 住宅ローン債権の証券化
    金融機関と住宅購入者の間で住宅ローン契約を締結すると、銀行はその融資で得た住宅ローン債権を証券化金融機関などに売却します。
  4. 投資家による証券の購入
    証券化金融機関によって買受けられた証券は、「不動産担保証券(MBS=Mortgage-backed securities)」として、投資家により購入されます。
  5. 利息の回収
    銀行などは住宅購入者に融資を行った後、債権回収業務の権利を債権回収会社(サービサー)に売却(または委託)します。サービサーは、住宅購入者からの弁済金を回収し、証券会社を通じてMBS購入者に還元します。

米国住宅ローンの種類

ローンの種類 概要 貸出審査基準 頭金 その他の特徴
コンベンショナルローン 「従来のローン」を意味し、金融機関が直接債権者となるローン 各金融機関が独自に設定 20%程度 頭金20%以下で住宅ローン保険への加入が必要
コンフォーミングローン 政府支援企業である「フレディマック(連邦住宅金融抵当公庫)」または「ファニーメイ(連邦住宅抵当公庫)」の審査・運用基準に則った住宅ローン。貸出限度額は48万4,000~72万6,000ドル FICOスコア620以上(平均750程度) 3~10%程度 借金収入比率(Debt-to-income ratio)は36%程度
ジャンボローン コンフィーミングローンより融資上限額が高額な住宅ローン 各金融機関が独自に設定。一般的な住宅ローンより厳しい 15~30%程度
政府保証付きローン 政府機関認定の金融機関によるローン。頭金が少なくクレジットスコアが低くても利用できる。連邦住宅局による「FHAローン」と米国退役軍人省による「VAローン」がある。融資限度額は31万5,000~72万6,000ドル FICOスコア580以上(平均680程度) 3.5% ・頭金が約10%あればFICOスコア500程度でも可

・居住用件あり

住宅ローン保険への加入が必要

リバース・モーゲージ 高齢者(62歳以上)が自宅を担保に融資限度内の範囲で終身にわたり融資を受けるが、死ぬまで返済は必要なく、死亡時に担保を処分して返済をするローン。 各金融機関が独自に設定。 必要 米国では日本とは違い、住宅評価額が借入額を下回った場合の追加返済は一切不要。

米国市場を知りビジネスのヒントに


アメリカは世界経済に大きな影響力を持つ国であり、その住宅・金融市場は特に巨大です。日本と比較しても不動産業界でのビジネスチャンスが多くあり、アメリカの不動産を購入することで資産運用を考える日本人投資家もいます。

そのため、日本の宅建業者もアメリカの不動産・住宅ローン市場について知識を持っておくことは有効です。

また、米国の不動産ビジネスのトレンドを知ることで、日本の不動産業界に携わるときのヒントを得られるでしょう。