米国の住宅ローンテック業界の動向|資金調達額の推移と注目企業

投稿日 : 2020年01月31日

住宅・金融業界の規模が大きいアメリカでは、住宅ローンテック業界の成長が好調です。住宅ローンテックサービスは、これから日本でも普及する可能性があり、不動産業者としてはチェックしておきたい業界です。

そこで今回は、アメリカの住宅ローンテック業界の資金調達状況を確認し、好調の理由について触れてみたいと思います。また、業界を牽引する注目のベンチャー企業もご紹介します。

kobayashi

この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

「住宅ローンテック」とは

「住宅ローンテック(Mortgage tech/Mortgage fintech)」とは、住宅事業者や金融機関の住宅ローン関連業務をITで効率化する技術・サービスのことです。

現在、参入企業が提供している「住宅ローンテックサービス」は、以下のように分類できます。

「資金提供」系 オンラインレンダー 商業銀行などと異なり店舗を持たず、インターネット上で住宅ローンの融資を行うオンライン業者。
マーケットプレイスレンディング オンライン上で住宅ローンの申請を受付け、その融資に対する投資を多数の個人から募るレンディングサービス。P2Pレンディング/ソーシャル・レンディング。
オルタナティブファイナンシング 現金による一時的な物件取得代行、物件への共同出資など、住宅ローンの融資以外の方法で資金提供を行い、物件取得をサポートするサービス。
「比較/斡旋」系 オンラインブローカー 借り手の条件に合った住宅ローンの提案や金融機関への斡旋、住宅ローン手続きの代行等を行う。
個人向けファイナンスツール 個人が無料で自身のローン管理、信用評価を行うことができるツール。ユーザーのクレジット評価に応じて、住宅ローンを含めて適したローン商品を提案。
オークションサービス 貸し手が借り手の属性等に基づき、住宅ローンの条件をオークションの用に競うプラットフォームを提供。借り手は自身にとって最も好条件の住宅ローンを選択することが可能。
「業務支援」系 申込プロセス簡素化サービス フォーム等を住宅ローンの貸し手向けに提供。借り手は、住宅ローンの審査に必要な情報・書類の提出、チャットを通じたコミュニケーションを専用アプリ・プラットフォーム上で簡単に行うことができる。

米住宅ローンテック業界の資金調達額は増加傾向


画像出展:PitchBook|VC funding for mortgage tech stays strong after billion-dollar bump

Oct 25, 2018

上のグラフは、住宅ローンテック企業による資金調達の推移です。棒グラフは「業界の年間資金調達総額」を、折れ線グラフは「取引件数」を示しています。

2015年の高騰は、SoFi(Social Finance)1社による12臆ドルもの資金調達が影響しています。しかし、それを差し引いても業界全体で順調に伸びていることが読み取れます。

「住宅ローンテック業界」好調の理由

ノンバンクの需要が高まったから

2008年前後に「サブプライム住宅ローン危機」が起こった後、大手銀行は住宅ローンの借入れ条件を厳しく、手数料を高くするなどして、融資のリスクを軽減する方針を取りました。

そこで、低中所得層を中心に需要が高まったのが、ノンバンク系の住宅ローンです。ノンバンク企業はそれぞれ独自の借入れ条件・審査基準を設定し、大手銀行では引き受けていない低中所得層へも積極的に融資を行っています。

ノンバンク系の住宅ローンでは、大手銀行が行う昔ながらの煩わしい借入れ審査や紙の書類による契約手続きなどを行いません。住宅ローンテック駆使した、シンプルでスピーディな審査・契約手続きを提供しています。

ノンバンクのローンに対する需要が高まることで、住宅ローンテックへのニーズも生まれ、業界の成長へとつながっているのです。

デジタルネイティブが住宅購入層になったから

住宅ローンテック好調の理由として2つ目に挙げられるのは、デジタルネイティブであるミレニアル世代(1982~1990年代生まれ)が住宅購入層に加わったことです。

ミレニアル世代の消費者は、まずはネットで検索し比較することで、最良の選択をしようと考えます。住宅ローンを利用する場合にも、同じような消費行動を取る傾向にあります。

住宅ローンテックサービスはネットでのアプローチが主流のため、ミレニアル世代の消費者にとってアクセスしやすく、また彼らのニーズにフィットしやすいのです。

住宅ローンテック業界を牽引する注目ベンチャー

Ribbon


画像出展:Ribbon

  • 事業内容:物件代理取得型サービス
  • 資金調達額:247億5,000万円
  • 設立年:2017年
  • 所在国:アメリカ

「Ribbon」は、よりシンプルでストレスの少ない住宅購入をサポートする「物件代理取得型サービス」企業です。各地域の不動産業者と協力し、競争力のある現金一括払いによって、顧客の希望する住宅を勝ち取る点が強みです。

「Ribbon」は、会社設立から1年目にして2億2,500万ドルの資金調達を達成し、話題となりました。その後も市場を拡大するなど目覚ましい成長を見せ、最も勢いのあるベンチャーのひとつです。

▶「Ribbon」公式サイトへ

Blend


画像出展:Blend

  • 事業内容:申込プロセス簡素化サービス
  • 資金調達額:176億円
  • 設立年:2012年
  • 所在国:アメリカ

「Blend」は、金融機関などの住宅ローンの貸し手に対して、住宅ローンプロセスを簡素化するSaaSを提供しています。借り手とのやり取りをスムーズに行うことができ、ローンプロセスの効率化・短縮化を可能としています。

現在、住宅ローンの「申込プロセス簡素化サービス」分野では、最大のプレーヤーです。

契約企業数は約120社で、その中には米国最大の住宅ローン企業である「Wells Fargo」や住宅ローンの貸出金額でトップ5にある「U.S. Bank」も含まれています。また、契約企業が提供する住宅ローン貸出額は、全米全体の25%以上を占めると言われています。

▶「Blend」公式サイトへ

SoFi(Social Finance US)


画像出展:Social Finance

  • 事業内容:マーケットプレイスレンディング
  • 資金調達額:2,611億6,000万円
  • 設立年:2011年
  • 所在国:アメリカ

学資ローンの借り換え事業からスタートし、2014年から住宅ローン分野に参入した「SoFi」。従来の金融サービス業者とは異なり、顧客の能力・雇用歴を考慮した独自の引き受け手法により、ユニークな金融商品を提供しています。

低利率を実現したことにより、「SoFi」のユーザーは平均で約14,000米ドルの節約を実現しました。ユーザーの約98%が、知人・友人に「SoFi」を推薦しているという実績があります。

現在は、個人ローン、生命保険、電子マネーサービスなど幅広く進出しています。

▶「SoFi」公式サイトへ

LendingHome


画像出展:LendingHome

  • 事業内容:マーケットプレイスレンディング
  • 資金調達額:182億5,000万円
  • 設立年:2013年
  • 所在国:アメリカ

住宅ローンの貸し手と借り手の間に立つマーケットプレイスとして機能する「LendingHome」。また、住宅ローンのプロセスをオンライン上で行うことができるプラットフォームも提供しています。低コストかつスピーディな住宅ローンを売りにし、売上を拡大しています。

▶「LendingHome」公式サイトへ

引き続き住宅ローンテック業界をマーク

アメリカの不動産業界が住宅ローンテックによって変化しつつある現状を、資金調達額をきっかけとしてご紹介しました。

日本でもこれから住宅ローンテックサービスのニーズが高まる可能性が大きいと言えます。不動産業者としては引き続き、この業界をマークしておくといいでしょう。

また、日本の不動産業界では、日本の慣習や事業スタイルに合ったサービスが求められます。そのため、日本の住宅ローンテック企業の動向にも注目しましょう。