米国の住宅ローン市場の動向と環境|データから読み解く現在と予想
住宅市場・金融市場の規模が大きいアメリカでは、住宅ローン市場も巨大です。サブプライム住宅ローン問題がリーマンショックのような世界的経済危機の引き金になったように、アメリカの住宅ローン市場は世界経済に大きな影響力を持ってい
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アメリカでは金融市場、住宅市場の市場規模が大きく、日本の約10倍の住宅ローン市場があります。住宅事業者や金融機関の住宅ローン関連業務をIT(情報技術)で効率化する「住宅ローンテック」も注目されています。
ただ、この業界は日本ではまだ発展途上にあり、情報も限られているのが現状です。
そこで今回は、アメリカの「住宅ローンテック」業界をカテゴライズしたカオスマップをご紹介します。
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この記事の監修者: 小林 紀雄 住宅業界のプロフェッショナル 某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。 |
上の図のように、アメリカの「住宅ローンテック」業界を大きく分けると、以下のように分類できます。
以下、各カテゴリーを詳しく解説していきます。
オンラインレンダー(Digital Mortgage Lending)は、オンラインで住宅ローン商品を提供する企業です。商業銀行などと異なり店舗を持たず、インターネット上で住宅ローンの融資を行います。
◆「オンラインレンダー」企業
「マーケットプレイスレンディング(Marketplace lending)」は、オンライン上で住宅ローンの申請を受付け、その融資に対する投資を多数の個人から募るレンディングサービスです。いわゆる、「P2Pレンディング」「ソーシャル・レンディング」を指します。
◆「マーケットプレイスレンディング」企業
その他の新しい金融サービスを「オルタナティブファイナンシング」として分類しました。
オルタナティブファイナンシングには、「現金による一時的な物件取得代行」「物件への共同出資」など、住宅ローンの融資以外の方法で資金提供を行い、物件取得をサポートするサービスがあります。
「物件代理取得型サービス」は、住宅購入希望者の代わりに、全額現金にて一時的に物件の取得を行い、住宅購入希望者が住宅ローンを確保した後に同価格で譲り渡すサービスです。
このサービスでは、現金一括購入のため、物件がビッドになった際に他の購入希望者に勝ちやすいというメリットがあります。しかも、ローンによる購入希望者よりも価格を抑えられます。
また、購入者は手数料0でサービスを受けられます。
◆「物件代理取得型サービス」参入企業
「買換特化型」の物件代理取得サービス(Trade-in)とは、住宅購入希望者の代わりに、全額現金にて一時的に物件の取得を行い、並行して既存物件の売却をサポートするサービスです。
他のローンでの購入希望者に勝ちやすく、既存物件売却のわずらわしさから解放されるというメリットがあります。
◆「買換特化型」物件代理取得サービスの流れ
(既存物件の売却額見積り、新物件探し)
(売却まで既存物件の住宅ローンは支払う)
(新たな住宅ローンの借入れ)
◆「買換特化型物件代理取得サービス」参入企業
「共同出資型サービス」とは、購入する物件の一部に対して、融資ではなく出資を行うというスタイルです。所有期間中の物件価格の値上がりはシェアすることで、企業の収益となります。
そのため、住宅ローンと異なり、毎月の返済等は不要です。ただし、企業によっては初期手数料3~5%程度を支払う必要があります。
◆「共同出資型サービス」参入企業
「購入選択権付き賃貸型サービス」とは、物件購入希望者に代わって物件を取得し、賃貸を行うサービスです。
物件購入希望者は、当初家賃を払い賃貸で住みはじめます。家賃の一部は物件購入資金に充当することができ、徐々に家の持分比率が増えていくという仕組みです。
そして、賃貸借契約期間満了後、最終的に物件を実際に購入するか選べるスキームとなります。
◆「購入選択権付き賃貸型」参入企業
新しいタイプのオンライン不動産担保ローンサービスです。分散型ブロックチェーンを採用することで、高いセキュリティを確保しているのが特徴です。ユーザーはビデオ通話・電子契約・自動支払いを利用し、手続きをすべてオンラインで済ませることができます。
◆「オンライン不動産担保ローンサービス」参入企業
「オンラインブローカー(Digital Mortgage Broker)」は、住宅ローンの希望者と金融機関の仲介をするサービスです。借り手の条件に合った住宅ローンの提案や金融機関への斡旋、住宅ローン手続きの代行等を行います。
◆「オンラインブローカー」企業
「個人向けファイナンスツール」には、無料で自身のクレジットスコア(金銭的信用度)を確認できるツール・サービスを提供する企業を分類しました。
これらのツール・サービスは、クレジットスコアに基づき、顧客に適した住宅ローンを含む各種ローン先の斡旋もサイト上で行います。
◆「個人向けファイナンスツール」提供企業
「オークション(Mortgage Auction)」は、貸し手が借り手の属性等に基づき、住宅ローンの条件をオークションの用に競うプラットフォームを提供するサービスです。借り手は、自身にとって最も好条件の住宅ローンを選択することができます。
◆「オークション・プラットフォーム」提供企業
「申込プロセス簡素化サービス」には、住宅ローンの申込みプロセスを管理できる専用アプリ・プラットフォーム等を、住宅ローンの貸し手向けに提供する企業を分類しました。
借り手は、住宅ローンの審査に必要な情報・書類の提出、チャットを通じたコミュニケーションを専用アプリ・プラットフォーム上で簡単に行うことができます。
◆「申込プロセス簡素化サービス」提供企業
金融市場・住宅市場の市場規模が大きいアメリカでは、続々と新しい住宅ローンテックサービス・企業が生まれています。
今回ご紹介した業界カオスマップを参照することで、アメリカの住宅ローンテック業界の動向を一望することができます。
このカオスマップは、アメリカでの事業参入を模索するだけでなく、今後の日本でのニーズを予想するのにも役立つでしょう。
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