連棟式建物とは?トラブル防止に役立つ知識と3つの売却方法

投稿日 : 2022年11月05日/更新日 : 2023年10月16日

連棟式建物とは?トラブル防止に役立つ知識と3つの売却方法

連棟式建物(連棟式住宅)とは、2戸以上の住宅が一体となった建物です。

一般的な一戸建て住宅よりも価格帯が安いものの、建て替えや売却が難しくトラブルが生じやすいという側面があります。

営業担当者としてお客様をご案内する際は、リスクやデメリットをしっかりとお伝えすることが大切です。

ここでは、連棟式住宅とは何か、価格帯が安い・売却が難しい理由、連棟式住宅の売却方法について解説します。

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連棟式住宅とは

連棟式住宅(連棟式建物)とは、下図のように2戸以上の住宅が一体となった建物です。

連棟式住宅(連棟式建物)の図

基礎・屋根・柱などが隣同士でつながっているため、建物の造りはマンションやアパートのような共同住宅と似ています。

しかし、共同住宅のように上下の階に人が住まないため、居住空間は庭付き一戸建てと同じようなものです。

一般的な一戸建てよりも価格帯が安くなっているため、予算を考慮して連棟式住宅を選択する方もいらっしゃるでしょう。

連棟式住宅には「テラスハウス」と「タウンハウス」という2つのタイプがありますので、それぞれの違いについて次の章で解説します。

テラスハウスとタウンハウスの違い

連棟式住宅(連棟式建物)には、「テラスハウス」と「タウンハウス」という2つのタイプがあります。

両者は見た目に大きな違いがありませんが、土地や建物の権利関係が異なります。

【テラスハウスとタウンハウスの違い】

テラスハウス タウンハウス
建物 単独所有 区分所有
土地 単独所有 共有または分筆

テラスハウスの場合、建物の権利は1人の所有者のものとなり、その下の土地も建物の所有者と同じ方が所有する形になります。つまり、土地・建物はそれぞれ単独で所有する形態です。

テラスハウスの場合、所有者はリフォームや建て替えを単独で行えます。ただし、壁や屋根など建物の一部が隣の住宅とつながっているため、建て替え時には他の所有者からの同意が必要です。

一方、タウンハウスの場合、建物は区分所有として扱われるケースが一般的です。

建物には共用部分が存在するため、区分所有者が単独で大規模なリフォームや建て替えを行うことはできません。

タウンハウスにおける土地の権利形態には、主に以下2つのタイプがあります。

【タウンハウスにおける土地の権利形態】

  • 共有持分(または敷地権)として共有されている
  • 分筆されている

前者は分譲マンションと同じ権利形態で、他の所有者と土地を共有している状態です。

敷地が建物の面積に応じた持分で登記されるケースや、土地と建物を一体で登記する「敷地権」という形態を取るケースもあります。

後者は、テラスハウスのように土地が分筆されているタイプです。ただし、土地が分筆されていても建物が区分所有の場合、単独での建て替えが難しくなります。

なお、ここでご紹介した両者の違いは一般的な定義となりますので、物件によっては違った権利形態となっている場合があります。

物件種別のみで判断せずに、登記事項証明書等で実態を確認しましょう。

普通の一戸建てより安く買える理由

連棟式住宅は、一般的な一戸建てよりも価格帯が安くなっています。

ここでは、連棟式住宅を安く購入できる理由について解説しましょう。

建築費用が安くつく

連棟式住宅は、1つの敷地に複数の住宅を建てるため、建築費用を抑えられます。

たとえば、一戸建てを建築する際、水道・ガス・電気などの整備を行う必要がありますが、連棟式住宅はそれらの作業をまとめて行えます。

建築費用を抑えられるため、売り出し価格も安くなる仕組みです。

土地を効率よく使える

連棟式住宅は隣同士の間隔をあけずに住宅を建てるため、土地を効率よく利用できます。このように土地を利用することで、狭い土地にも複数の住宅を建てることが可能です。

住宅ローンにも影響する違反建築物と既存不適格建築物の違いについて詳しくは以下の記事もご参照ください。

あわせて読みたい:住宅ローンにも影響する既存不適格建築物・違反建築物とは何なのか|違いも含めて解説

あわせて読みたい:最低敷地面積(敷地面積の最低限度の制限)とは何かわかりやすく解説|限度を下回る土地の取扱いも解説

連棟式住宅の売却が難しい理由

連棟式住宅は価格帯が安いものの、売却が難しいケースが珍しくありません。

営業担当者としてお客様へ事前にお伝えできるように、連棟式住宅の売却や建て替えについても確認しておきましょう。

住宅ローンの審査に通りにくい

連棟式住宅の売却が難しい理由の1つに、住宅ローンの審査に通りにくいことが挙げられます。

不動産は高価な買い物ですから、住宅ローンを組んで購入する方がほとんどです。

しかし、連棟式住宅は住宅ローンの審査に通りにくく、買い手が見つかりにくいケースがあります。

融資をする金融機関からすると、住宅ローンの担保となる不動産の価値は重要な審査基準の1つです。

買い手が見つかりにくい不動産は評価が低くなるため、購入検討者が融資を申し込んでも、審査に通らない場合があります。

住宅ローンの借り入れができなければ決済手段が現金に限られますが、マイホームを現金のみで購入する方は少ないでしょう。

つまり、住宅ローンの審査が通りにくい→決済手段が現金に限られる→買い手が限定される→売却が難しいという悪循環が生じるという訳です。

一部屋単独での再建築が難しい

連棟式住宅は、隣の住宅と壁や屋根などがつながっているため、1部屋のみの再建築が難しいケースが多いです。

建物が老朽化していれば、再建築できないことを理由に売却が難しくなるでしょう。

たとえば、テラスハウスやタウンハウスを一般的な一戸建てに建て替えて売却する場合、隣の住宅と切り離すための「切り離し同意書」を得る必要があります。

売主様が隣人と良好な関係を築いていらっしゃれば、話し合いによって再建築できるでしょう。

しかし、ご近所づきあいが希薄な現代社会では、隣人同士のコミュニケーションが不足していることも珍しくありません。

相続した所有者が遠方に住んでいて、連絡を取ることすらできない場合もあります。

そのようなケースでは再建築が難しいでしょう。

また、隣人からの同意だけでなく、建築基準法上の問題から建て替えができないケースもあります。

たとえば、下図のように土地の一辺のみが道路に接しているとしましょう。

道路の図

建築基準法・第43条では、「建築物の敷地は、道路に2m以上接していなければならない」と定められています。(引用元:e-Gov法令検索_建築基準法

上記A~Cを一戸建てに建て替えるのであれば、それぞれの敷地が建築基準法上の道路に2m以上接していなければなりません。

BやCを再建築したことでAが建築基準法による接道義務を満たせなければ、再建築不可の物件となってしまいます。

連棟式住宅は狭い土地に建てられることが多いため、先述の接道義務によってそもそも切り離すことができないケースがあります。

連棟式住宅の売却方法

連棟式住宅を売却するには、どうすれば良いのでしょうか。

ここでは、連棟式住宅の売却方法を3つご紹介します。

1.他の所有者と話し合う・相談する

先述の通り、連棟式住宅を再建築して売却するには「切り離し同意書」によって許可を得る必要があります。

建築基準法など法律上の問題がなく、話し合いで解決できる場合は他の所有者から許可を得た上で再建築し、売却しましょう。

また、他の所有者が買い取ってくれる場合もあるため、購入意思の有無を確認することも手段の1つです。

2.買取業者に売却する

連棟式住宅は住宅ローンの審査が通りにくいため、個人への売却が難しいケースがあります。

買取専門の不動産会社への売却であれば資金面での不安が少なく、早期に売却できる可能性が高いでしょう。

3.他の所有者の持分を買い取り、1つの土地・建物として売却する

土地や建物が共有状態となっている連棟式住宅の場合、他の所有者の持分を全て買い取り、1つの大きな土地・建物として売却する方法も選択肢の1つです。

所有者が1人のみであれば再建築時の許可が不要になるだけでなく、大型物件として売却できるというメリットがあります。

まとめ

連棟式住宅は一般的な一戸建てとは権利関係が異なり、売却や再建築でのトラブルが生じやすい物件です。

お客様へ連棟式住宅の案内をする際、建物の1部や土地が共有状態であること、再建築が難しい可能性があることなど、リスクやデメリットをお伝えすることが大切です。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。