ウサギの「全日」、ハトの「全宅」とは| 不動産業者団体を紹介
不動産業の開業にあたっては、不動産団体に所属するのが一般的です。
不動産の売却や賃貸の際に、必須となるのが「減価償却」です。正しく税務を処理するうえで、「減価償却」は避けては通れないものです。計算方法も複雑なため、買主様に分かりやすくお伝えすることが重要です。
今回は「減価償却」の目的と意味、計算方法の基本を紹介していきます。
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この記事の監修者: 小林 紀雄 住宅業界のプロフェッショナル某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。 |
事業をする上で購入した物品は、購入した年の経費として計上します。
しかし、長期間にわたって利用する自動車や建物は別の考え方をします。非常に高額なものが多いため、1回だけでは、その年の経費が膨らみすぎてしまうからです。
長期で使っていく固定資産については、耐用年数に応じて減価償却という方法を用いて計上していくことになります。
自動車や機械製品などの形あるものは、いつまでも新品ではありません。年が経つごとに少しずつ価値が減っていきます。購入時から価値が下がっていくのを、会計上で行うのが減価償却です。
減価償却を行うものを購入した場合、経費ではなく「資産」として貸借対照表に載ります。そこから、価値が下がった分だけ金額を減らしていくのです。
つまり、減価償却は「資産価値(金額)の下方修正」という意味でもあります。
減価償却の目的は、適切に費用計上をするためです。
例えば、大型機材などの形状を1回で行うと、2年後、3年後も使うにも関わらず、税金だけが、その年の経費が大きく膨らみます。
そこで、減価償却が用いられ費用配分がされます。固定資産の価値を年々減らすことによって、減る金額を経費にします。これによって、毎年安定して経費を計上でき、節税に繋げることが可能です。
減価償却の方法には、「定額法」と「定率法」があります。それぞれの違いと、不動産の計算にはどちらを使うのか、ここで紹介します。
定額法とは読んで字のごとく、毎年一定額の減価償却費を計上する方法です。
基本となる「減価償却費の計算方法」は以下のようになります。
・平成19年3月31日以前に取得した分
建物の購入代金×0.9×耐用年数に応じた償却率
・平成19年4月1日以降に取得した分 建物の購入代金×耐用年数に応じた償却率 |
なお、不動産の減価償却にあたっては、この定額法を使います。平成28年度の税制改正によって、「平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物については、定率法を廃止し、定額法のみの方法による」と規定されたためです。
定率法とは、毎年一定の率で減価償却費を計上する方法です。
前述の通り、建物の減価償却には定額法しか使うことはできません。一方、「建物付属設備」「構築物」に該当しないものは、定率法での計上が可能です。具体的には車両や運搬具、工具などです。
定率法の計算式は、以下の通りです。
前期末の帳簿価額(取得した年は取得価額)×耐用年数に応じた定率法の償却率 |
不動産において減価償却を行うのは2つのパターンが発生した時です。具体的には「不動産収入が発生した時」と「不動産を売却した時」です。
賃貸マンションなどを経営することによって、家賃等の不動産収入が計上されます。不動産収入によって所得税が発生するため、減価償却をする必要が出てきます。
不動産を売却すると、「譲渡所得」が発生します。もし譲渡所得を計算した時に損失が発生した場合(譲渡損失)は、源泉徴収された金額が還付されます。
なお、譲渡所得の計算式は以下の通りです。
売却価格-(取得費+経費)-特別控除 |
この際、減価償却が費用として計上されます。このため、不動産を売却した時も、減価償却が必要なのです。
ここからは、不動産における減価償却の方法を解説していきます。
不動産の売買は土地と建物がセットになることが多いですが、減価償却はその2つを分けて考える必要があります。
なぜなら、土地は減価償却できないからです。
これは、減価償却の目的が「固定資産の価値を経年で減らしていく」ことにあるからです。土地はどれだけ時間が経っても価値が減ることはありません。よって減価償却の対象から外れてしまいます。
上述の通り、不動産を売却する際は取得費を計上します。それによって譲渡所得を減らすことができるからです。
ただし、土地は減価償却の対象外のため建物の取得費だけが必要になります。
取得費として計上できるものは、以下の通りです。
【取得費になるもの】
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なお、売却した建物の購入金額が不明の場合は「概算取得費」を計上します。
金額は、収入金額の5%です。取得費が分かっていても概算取得費の方が有利な場合は、そちらを使うこともできます。
耐用年数とは、固定資産が利用に耐えられる年数のことです。その年数を超えた場合、法的には価値がゼロということになります。
建物の場合、構造によって大きく耐用年数が分かれます。新築物件の場合の一例を紹介します。
詳しくは、下記のサイトを参照してください。
なお、中古物件の場合は、以下の計算式で残った耐用年数を計算します。
新築時の耐用年数-(経過年数(端数切り上げ)×0.8)=残存耐用年数
例えば、鉄筋コンクリート・事務所用建物が10年1ヶ月経過していた時、以下のように計算します。
50年-(11年×0.8)=41.2→残存耐用年数は41年
経過年数は端数を切り上げて11年、計算結果は端数を切り捨てて41年になります。
また、耐用年数がすでに経過してしまった建物は、以下の式を使います。
新築時の耐用年数-(経過年数(端数切り上げ)×0.2)=残存耐用年数
次に、建物の耐用年数から「償却率」を計算します。
国税庁の「減価償却資産の償却率表」を使い、耐用年数によって判断します。
例えば、耐用年数41年の建物における償却率は「0.025」です。
なお、この償却率の場合も、平成19年の3月31日を基準に違いがあります。それ以前に取得した建物と、4月1日以降に取得した建物で償却率が変わる点に注が必要です。
最後に、簡単な例を用いて減価償却費を計算してみましょう。
中古の木造一戸建て(住宅用)を平成19年4月1日以降に購入した場合 | |
築年数 | 10年1ヶ月 |
建物価格 | 2,000万円 |
耐用年数 | 13年(※1) |
償却率 | 0.077(「減価償却資産の償却率表」) |
(※1)22年-(11年×0.8)=13.2→13年
2,000万円×0.077=154万円が減価償却費になります。
今回は、減価償却の基本的な考え方と計算方法の基本を紹介しました。
減価償却の金額によって、税務の結果が大きく変わることもあります。正しく理解して、買主様に情報提供ができるようにしていきましょう。
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