都市計画法の駐車場整備地区を知る|附置義務駐車場の現状と今後の課題とは

投稿日 : 2020年03月25日

街で車が安全に走行し、人も安心して暮らすためには、道路だけでなく駐車場も適切に配置されているかどうかが重要なカギになります。

自治体では自動車の往来が多い地域での駐車場確保のために駐車場整備地区を設けて、地域ごとの適切な駐車場設置を義務づけています。しかし昨今のカーライフ事情の変化に伴い、駐車場整備地区の基準にも見直しが求められています。

今回はお客様の快適な住環境を左右する、駐車場整備地区について解説します。

kobayashi この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

駐車場整備地区とは

 

駐車場整備地区とは、都市計画法で定められている地域地区のひとつです。商業地域や準商業地域などのうち、自動車交通が混雑する地域を対象に指定されています。

この駐車場とは、乗用車等の一般車両が駐車できるスペースとともに、施設等の搬入搬出のために使用される荷さばき用駐車スペースも含みます。

また、自動二輪車(オートバイ)や自転車の駐輪スペースも含む場合があります。

 

駐車場整備地区を定める駐車場法

駐車場整備地区を定める法律は、建築基準関係規定である駐車場法(昭和32年法律第106号)です。なお、同法律が最も新しく改正されたのは2017年度です。

そもそも駐車場法が最初に制定された昭和32年(1957年)当時は、戦後の急速な経済発展によりモータリゼーションが進展し、個人の自動車保有台数が急激に増加していました。

特に都市部では自動車の集中による路上駐車や道路の混雑、それに伴う交通事故が増加し、いわゆる交通戦争と呼ばれて大きな社会問題となっていました。

車のドライバーや同乗者、そして歩行者の安全を守るためには路上駐車を減らす必要があるとして、駐車場の数を増やすために駐車場法は作られました。

 

駐車場整備地区に課せられる義務

 

現在の駐車場法では、駐車場整備地区に指定された区域内では各自治体が駐車場整備計画を策定し、それに従い一定面積以上の建築物は駐車施設を設置しなければいけなくなっています。

自治体によっては駐車場整備地区以外の地域でも、条例により駐車施設の設置義務を定めている場合があります。東京都駐車場条例および東京都集合住宅駐車施設附置要綱により定められている基準は以下のとおりです。

 

画像引用:東京都都市整備局|駐車施設の附置義務

 

附置義務駐車場

上記の条例に従って設置された駐車場のことを附置義務駐車場と言います。読み方は「ふちぎむちゅうしゃじょう」です。

なお、都市計画法で定められている駐車場施設には、一般公共用に供されている路外の都市計画駐車場もあります。こちらは駐車場整備地区内に限らず、自治体が都市計画上で必要だと判断された場所に設置されています。

都市計画駐車場の運営は自治体もしくは委託事業者が行います。

 

画像引用:首都高速道路株式会社|関連基盤事業の充実

 

駐車場整備地区の制限は自治体の条例を確認

駐車場整備地区は、都市部以外でも自動車交通が集中する駅周辺など各地域に設けられています。

それぞれの駐車場整備地区ごとに義務や制限が異なりますので、商業地域等の物件を取り扱う際には必ず各自治体の条例を確認しましょう。

 

各自治体の駐車場整備地区を調べる方法

対象地域の駐車場整備地区を調べたい場合は、各市区町村役場の「都市計画課」「地域整備課」あるいは「まちづくり課」などの窓口で都市計画マップや地域一覧を閲覧します。

また自治体ホームページの都市計画に関連するコンテンツとして、駐車場整備地区マップ等を公開しているところもあります。

 

画像引用:堺市ホームページ|堺市e-地図帳

 

東京都の地域ルールを確認

東京都の場合、多くの区では東京都駐車場条例に基づく内容で附置義務駐車場の台数等を決定していますが、一部の区では独自の規定を設けています。

 

◎区独自の地域ルールの例◎

港区ホームページ|港区駐車場地域ルールについて

中央区ホームページ|都市計画・まちづくりルール

 

駐車場の供給過剰により法改正の可能性も

駐車場法が最初に制定された1957年から60年以上もの歳月が経ち、現在では現行の法律が実情にそぐわない面も出てくるようになりました。

日本の人口減少や都市部のドーナツ化現象、かつカーシェアリングの普及で自家用車のニーズが薄れているなどの理由により、近年の自動車保有台数は減少しています。

反面、日本各地で大規模なビル開発が進むにつれて法律で義務化された附置義務駐車場の数も増えますので、ますます駐車場が供給過剰になっていきます。この傾向は特に東京23区内で顕著に見受けられます。

 

画像引用:国土交通省|駐車場の附置義務制度

 

国や都道府県および各自治体ではこの対策のため、余剰駐車場を倉庫など他の用途に転用したり、既に需要が満たされている区域において附置義務駐車場を減免する特例を設けるなどをして駐車場の供給過剰を解消しようとしています。

 

画像引用:国土交通省|駐車場の附置義務制度

 

自治体が附置義務駐車場の見直しをしている地域は、上の東京23区以外にも横浜市の「横浜駅周辺ルール」や大阪市・金沢市の例など多く見受けられます。

しかしこの先に日本各地で駐車場の供給過剰がますます増えるようであれば、駐車場法自体を全面的に改正する必要が出てくるかもしれません。

今後の都市計画法の見直しについては、十分に注意を払っていく必要があります。

 

安心して暮らせるまちづくりのために

都心や観光地など人が暮らしているイメージがないような地域であっても、そこを生活拠点として暮らしている住民は必ず存在しています。

地域住民が駐車場施設に圧迫されることなく安心して快適に暮らせるように、官民が手を取り合って公共空間を適切に管理し、利活用することが求められています。

 

画像引用:国土交通省|まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン(基本編)

 

わたしたち宅建業者としても、不動産を購入されるお客様に対して最適な住環境を提供できるように、国や自治体と協力しながら「お客様のためのまちづくり」を目指していかなければいけません。

 

まとめ

今回は都市計画に関連する駐車場整備地区について解説しました。

駐車場整備地区の制度は人の居住が比較的少ない区域を対象としていますが、最寄り駅としてそこを利用する地域住民や、これから駐車場整備地区の区域内や近隣で不動産を購入しようという買主様にとっては、購入後の住環境を左右する重要な問題になります。

現在の都市計画条例や見直しの予定などを適切にお客様にご案内できるよう、日々情報収集のアンテナを張っておきましょう。