水害に強いマンションとは?|水害に強いマンションの見分け方と水害対策

投稿日 : 2020年06月11日/更新日 : 2023年06月03日

2019年の台風による大雨で、マンション選びの際に水害への対策を確認することが意識されるようになってきました。マンションが水害に強いかどうかは売る側、買う側双方にとって大切です。

今回は、水害に強いマンションの見分け方や対策について解説します。

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マンション水害による被害

水害といっても、マンションにどんな被害があるか想像しづらいかもしれません。まずは、マンションが水害に遭った場合に起こる被害の例を、いくつかご紹介します。

  • 地下駐車場、地下電気室が水没し、エレベーターが使えなくなる
  • 外部からの浸水と、マンション内部の排水があふれ住居内が浸水する
  • 電源やボイラーが使用できなくなる
  • インターネット設備が被害に遭い、通信に影響がでる
  • 1階が浸水し、外に出ることができなくなる
  • 浸水後の修理・清掃の負担が発生する

このようにマンションは様々な場所から水が入ってくるため、被害が大きくなりがちです。

 

マンションで浸水が起きる場所

前項で紹介したとおり、マンションは様々な箇所から浸水します。そのなかでも特に注意が必要な箇所を紹介します。

 

地下駐車場・ピット式機械式駐車場

地下駐車場は、一度に大量の雨が降り、駐車場内やピット内に雨水が大量に流れ込んでしまうと、排水が追い付かず駐車している車が水没してしまいます。マンション共用部の浸水被害でも、個人の損害が特に大きい場所と言えます。

地下駐車場における浸水対策として、日頃から排水ポンプにゴミが詰まらないように、周囲の掃除やポンプの点検をすることが重要です。管理会社による清掃・点検が行われているか確認すると良いでしょう。

また、ピット式機械式駐車場は大量の雨で浸水が予想される場合、パレットごと地上まで上げることができるように準備しておきましょう。

こうすることで地下の車の浸水を防ぐことができます。万が一に備え、マスターキーの保管場所や保管方法、操作方法もマンション管理組合で共有しておくと良いでしょう。

 

1階住戸・半地下住戸

1階住戸や半地下住戸も浸水の可能性の高い場所です。

半地下住戸では増水や雨水の流入による浸水の他に、下水の逆流による浸水も考えられます。
住戸の水周りと下水管の高低差が小さい場所ほど下水から水が逆流してくる可能性が高くなります。
一度逆流を起こすと、部屋の中が水浸しになり、水回りは使えなくなってしまいます。

また、1階住戸や半地下住戸は災害時の避難通路の確保も考えておく必要があります。大きな家具が浸水で浮いて通路を防いでしまう可能性もあるため、大きな家具は固定しておくか、配置を通路側にしないなど工夫すると良いでしょう。

 

前面道路から下がったエントランス

前面道路から下がっているエントランスは、浸水の注意が必要な場所です。
水は高いところから低いところに流れるため、大量の雨がエントランスに流れ込んでくることが考えられます。浸水を防ぐために、土のうや止水板などを防災備品として用意しておくことが大切です。

被害例(エレベーターの運転停止)

2019年の台風19号の上陸による被害は、深刻なものでした。

武蔵小杉駅付近のタワーマンションでは、配電盤のある地下が浸水したことにより、住戸や共用施設で停電が発生しました。これにより、エレベーターが利用できなくなった住民はタワーマンションを階段で上り下りすることを余儀なくされました。

タワーマンションではエレベーターは非常に大切な導線ですが、エレベーターシャフトに雨水が流れ込むと、センサーが働き運転が停止してしまいます。このような例もあったことを覚えておきましょう。

 

マンション確認のチェックポイント

水害に強いマンションの確認すべき点は以下のとおりです。

① 立地

ハザードマップの活用

各自治体が出しているハザードマップでは、地図で水害をはじめとする自然災害のリスクを確認することができます。

また、ハザードマップで、物件のある場所が海抜の低い場所になっていないか確認しましょう。海抜の低い場所は洪水や浸水の被害のリスクが高いため、水害対策の観点では海抜が高い場所の物件がおすすめです。

水害がおきやすい地域の傾向

立地面で注意しなければいけないのは、田んぼを埋め立てた土地です。

田んぼは水を入れやすくするために、海抜が低い場所や周囲より低い場所に作られていることが多いです。そのため、洪水が起きたときに水が流れ込んできてしまいます。

また、田んぼを埋め立てている場合は盛り土を行っているため、水害などの自然災害に弱くなっています。盛り土とは、低い地盤や斜面に土砂を盛り、地盤の嵩上げをしたり平坦にすることです。

造成地について確認

水害に弱い土地は、埋め立て地にある物件や切り崩して作った造成地です。中でも、盛り土された土地に建てられた物件は、地盤が弱いため災害のリスクが高いです。

あわせて読みたい:切土は安全?切土と盛土の違い・注意点についてわかりやすく説明

②マンションの構造

勾配がついている

マンションへの水の侵入を防ぐ方法として、勾配をつけるというものがあります。

水は高いところから低いところへ流れるため、マンションの建物部分を敷地で最も高く設計し、そこから道路側に向かって下り勾配をつけることで、水がマンションの中へ侵入するリスクを減らすことができます。
建物側と道路側の高低差が1mほどつくように設計することが望ましいとされています。

1階が駐車場になっている

1階が駐車場になっているマンションも物件の構造上、水害に強いといえるでしょう。1階が駐車場になることで柱の間を水が流れていくようになり、建物の中に水が溜まりにくくなります。1階部分が浸水しても、2階まで浸水することを防ぐこともできます。

倉庫がある

災害時に備え、日頃からの備蓄準備も重要となります。設計の段階で倉庫を作ると、カラーコーン、ブルーシート、ガス型発電機、簡易トイレなどの防災用具を備蓄することができます。

注意が必要なのは、地下で防災備品を管理している場合です。地下は浸水しやすく備品をとりにいけなくなる可能性があるため、地上もしくは2階以上に倉庫があるマンションだと安心です。

災害への取り組みに協力的である

水害にあった際、ディベロッパーの社員やその協力会社がマンションにかけつけ救護活動を行うという会社もあります。2019年の台風によるタワーマンションの被害を受け、「水害に強いマンション」をコンセプトに設計を進めている会社も多く、災害時に対応できる取り組みを強化しています。

マンションの管理組合でできる水害対策

マンションの所有者による管理組合でもできる対策は以下のとおりです。

土のう

万が一に備え、土のうを常備しておくことが大切です。地方都市だと自治体が土のうを運んでくれることもありますが、都会ではなかなか土のうを入手することができません。そこで役に立つのが、水に浸すだけで膨らむタイプの土のうです。水を含まない状態だと紙のように薄い袋なので、保管にも場所をとらず、女性でも簡単に設置できます。防災用品の取り扱いは、男性のみならず日中マンションにいることが多い女性でも取り扱えるものを考え、用意しておくと良いでしょう。

止水板

止水板は、水を止めるための板で土嚢よりも軽く女性でも設置しやすいというメリットがあります。駐車場のスペースやマンションのエントランスなどに止水板を設置しておけば、マンションの中に水は入ってきません。

普段からの声がけ

マンションの管理組合が日ごろから声を掛け合い、水害の備えをしているかどうかも大切です。

管理組合の役員で事前に「住人の避難誘導係」、「備品の移動係」「土壌の積み上げ係」と役割分担をしておくと、災害時にスムーズに対応することができます。水害時になすべき行動をリスト化しておくことも良いでしょう。また、マンション周辺の側溝を定期的に掃除しておくと排水能力が格段に違います。

予め「災害時マニュアル」を作成し定期的に訓練しておけば、いざというとき迅速に対応できるため、そのような取り組みをしているマンションがおすすめです。

まとめ

水害の被害を最小限にするためにも、マンションを選ぶ際、水害対策がされているか、水害に強い地域かを確認することが大切です。また、日頃から水害を意識し訓練や備品を揃えておくことも必要です。一定の対策をしておくことで、水害の被害を抑えることができます。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。