専有部分とはマンションのどこを指すのか|意味と共用部分との違いも解説
マンションには専有部分と共用部分がありますが、その定義は意外とわかりにくく、マンションによる違いもあります。
マンションに入居する際は、各マンションが定める「管理規約」のルールに従った生活を送る必要があります。
買主様が管理規約の内容をよく理解しないまま入居しないよう、しっかりとした説明が必要です。
マンション管理規約では住民の行動を規制する内容が決められることがあり、違反すると罰則を受けます。また、管理規約は、マンションの形態や管理方法によって様々な種類に分かれます。担当するマンションの管理規約を正確に理解することが重要です。
今回は、マンション管理規約の形態と規制の内容に焦点を絞って紹介していきます。
マンションでは、さまざまな考え方の人が共同生活を送っており、円滑な運営を行うために定められているのが「区分所有法」です。
全てのマンションで一律に同じ決めごとにはできないため、原則とは異なる内容を規約で定めることが認められています。それを「マンション管理規約」と言います。そして、管理規約を定める組織が「管理組合」です。
管理組合とは、マンションを管理・運営をするための機関です。マンションの区分所有者は、自動的に管理組合に所属することになります。
管理組合は、マンションの管理方法を定めた「管理規約」を作成します。また、日常生活上の細かいルールについては、別途「使用細則」を定めることも可能です。
管理規約は区分所有者で決めることができますが、自力で定めるのは困難です。何を決めていいのかも分かりませんし、作ったとしても法律的に不適切な場合もあります。
そのため、規約を作る際のモデルとして国土交通省が定めたものが「マンション標準管理規約」です。
マンション管理組合の調査ポイント|住みやすさを決定付ける組合運営の質
マンション標準管理規約は、マンションの形態によって3つに分かれるのが特徴です。「単棟型」「団地型」「複合用途型」と呼ばれ、それぞれ規約の内容に違いがあります。ここでは、3つの大まかな違いを確認していきましょう。
単棟型とは、1つの土地に1棟の住居専用マンションが建てられたタイプを指します。
マンションには住人が所有する「専有部分」と、マンションが管理する「共用部分」があり、これらを修繕・管理するためのルールが定められた規約です。
団地型とは、1つの土地に複数のマンションが建てられたタイプを指します。
単棟型との違いは、「各棟の管理を団地全体で一元的に行う」ことです。そのため、団地内の区分所有者が全体で1つの管理組合を構成します。
ただし、各棟で老朽化の進行が違ってくることから、修繕積立金を各棟と団地全体で分けるように規定が設けられています。
複合用途型とは、1階が店舗で2階以上が住宅となっているタイプを指します。
管理組合が、住居部分の区分所有者による「住宅部会」と、店舗部分の区分所有者による「店舗部会」に分かれるのが特徴です。
ただし、これらの管理組合は意思決定の権限を持っていません。最終的な意思決定は、全体を統括する管理組合が行います。
管理組合によるマンション管理の方法には、「自主管理」「一部委託管理」「全部委託管理」の3つがあります。
マンション管理会社を使わずに、業者に直接依頼する形式です。自分達だけで管理する場合もあります。管理する項目が比較的少ない、小さなマンションで採用されることがあります。
管理費が少なく済む反面、管理に関するお金を特定の人間に委託することが問題点です。
管理業務の一部だけを、マンション管理会社に委託する方式です。自主管理より管理費は増えますが、外部に委託した分だけ手間を省くことができます。
管理の全てをマンション管理会社に委託する方式です。管理費が高くなる心配はあるものの、区分所有者が面倒な管理事務から解放されます。
管理規約では、大元である区分所有法で規定できないマンションごとの細かな規約を定めることができます。
一方で、管理規約と言えども規定できない事項もあります。ここでは、管理規約で決められること、決められないことを紹介します。
例え自分が区分所有する専有部分だとしても、勝手に修繕を進めることはできません。もし専有部分の修繕を進めたい場合は、以下のような段階を踏む必要があります。
|
自分の専有部分を第三者に貸す場合も、勝手に行うことはできません。貸与契約にマンション標準管理規約の事項を守る旨を記載し、貸与の相手方から管理組合に誓約書の提出をさせる必要があります。
この他、共有部分の管理者と例外、管理費等の経理関係、管理組合の総会の実施など記載される内容は多岐に渡ります。以下に、管理規約で決められることを一覧で紹介します。
また、役員の数や任期、駐車場の使用方法についても管理組合の任意で定めることができます。
大枠のルールを管理規約で定めた後、生活する上で更に細かい規定を設けることができます。それが「使用細則」です。
例えば「駐車場を来客のために使用して良いか悪いか」を管理規約で定め、細かな規定については使用細則に記載するといった具合になります。
使用細則で決められる事項は、主に以下の通りです。
なお、管理規約と使用細則では制定や廃止についての規定が違います。規約の場合は議決権者総数の4分の3以上の多数決が必要ですが、使用細則は過半数でOKです。
最後に、管理組合で保管するべき図面・書類について紹介します。
平成13年のマンション管理適正化法の施行により、マンション分譲業者が図面を管理組合に渡すことが義務付けられました。
対象の図面・書類の例を以下に紹介します。買主様から図面の要望があった際は、管理組合に問い合わせて下さい。
管理組合が保管する図面・書類の例 | |
付近見取り図 | 配置図 |
各階平面図 | 二面以上の立面図 |
断面図又は矩計図(かなばかりず) | 基礎伏図 |
各階床伏図 | 小屋伏図 |
構造詳細図 | 設備図 |
構造計算書 | 仕様書 |
建築基準法第2条第12号に規定する設計図書の一部として作成する仕様書 |
今回は、マンション標準管理規約の形態と内容に焦点を当てて解説しました。
区分所有法を含め、マンション管理に関わる規定は非常に複雑です。買主様が正確に理解できるように、規約の内容をしっかりと理解して業務にあたってください。
不動産営業実務マニュアルに興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本に興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本関連記事