マンション建て替えに関する法律|区分所有権のあり方と円滑化法による事業

投稿日 : 2019年11月29日/更新日 : 2023年02月02日

マンションの建て替えを行うのは、大変な作業です。

1つの建物の所有権を複数人の所有者で分け合っている状態なので、合意をまとめるだけでも非常に手間がかかります。

しかし、建物の老朽化など、建て替えが求められるケースはたくさんあります。

今回は、マンションの建て替えに関する法律と、建て替えの流れをご紹介します。

 

マンションの所有権を定めた「区分所有法」

マンションのように1つの建物を複数の部分に分けて、それぞれに個別の所有権を認める法律が「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」です。

この法律には、建て替えの際の対応についても規定されています。

 

◆区分所有建物の建て替えを決定する条件

  • 区分所有者の4/5以上の賛成。
  • 団地など複数棟を全棟建て替える場合は、団地全体で4/5以上、各棟で2/3以上の賛成。
  • 団地など複数棟の一部を建て替える場合は、建て替える棟で4/5以上、団地全体で3/4以上の賛成。

 

「マンションを建て替える方法」2パターン

①等価交換方式による建て替え方法

等価交換方式による建て替えは、区分所有法などに則り、以下のような手順で行います。

  1. 「建て替え決議」にて可決に必要な割合の賛成を得て、必要事項の決定を行う。
  2. 既存マンションの土地と建物を、一度すべて開発事業者に売却する。
  3. 開発事業者は建設費を負担し、マンションの建て替え工事を行う。このとき、元のマンションより住戸数が多くなるように建て替える(保留床)。
  4. 元の区分所有者が出資比率に応じて新しいマンションを買い戻す。
  5. 開発事業者は、保留床を売却することで、建設費を回収する。

 

しかし、等価交換方式にはいくつかの注意点があります。

◆等価交換方式の注意点

  • 建て替える不動産に、保留床を作る容積率などの余裕があるかどうか。
  • 保留床を完売し、建設費を回収できるか。
  • 一度開発事業者に渡った所有権を、元の区分所有者が確実に取り戻せるか。
  • ローンが残っていた場合、金融機関の同意を得られるか。

 

②「マンションの建て替え法」による方法

①の方法では、マンションの建て替えがなかなか進まない現状があり、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律(マンション建て替え法)」が制定されました。

この法律に則り建て替えを進める場合は、以下のような流れで行います。

  1. 「建て替え決議」にて可決に必要な割合の賛成を得る。
  2. 都道府県知事の認可を得て、法人格を持つ「マンション建て替え組合」を設立する。
  3. 建て替え反対者の区分所有権を「マンション建て替え組合」が買い取る。反対者から買い取り請求することも可能。
  4. 建て替えに必要な登記を「マンション建て替え組合」が一括で行う。
  5. マンションの建て替え工事を行う。
  6. 元の区分所有者が新しいマンションへ入居する。

 

この法律により、区分所有者間の合意形成が得やすくなりました。

また、区分所有者は一時的に所有権を失うことなく建て替え・再入居を行うことができるようになりました。

 

賃貸物件として第三者に貸している場合

マンションの建て替えに伴い、賃借人に立ち退きを求める場合は、契約に定める半年~1年前の解約通知が必要です。

ただし、解約通知をしても賃借人が契約更新を望めば、正当な理由がない限りはすぐに解約は成立しません。

賃借人と交渉し、立ち退き料の支払いにより解約・退去に同意してもらう必要があります(借地借家法)。

 

市場が求める知識を習得する

「マンション建て替え円滑化法」の創設により、それまで困難だった関係者の合意形成や権利調整がスムーズに行えるようになりました。

また、人口減少に反してマンション戸数が増加している中、既存のマンションを建て替え新たな価値を与えることは、不動産市場の活性化にもつながります。

建て替えに関する法律をしっかり理解して適切に対応できるようにしましょう。

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