親からの住宅資金贈与の非課税特例について|条件ごとの限度額と適用要件

投稿日 : 2019年11月28日/更新日 : 2023年02月03日


親から住宅資金を援助してもらう場合には、受け取った額に応じて贈与税がかかります。
しかし、「住宅取得資金贈与の非課税特例」を適用すれば、一定の条件のもと、減税措置を受けられます。

今回は、この制度の概要と適用条件、利用する際のポイントをご説明します。

 

「住宅取得資金贈与」の非課税特例とは

「住宅取得資金贈与」の非課税特例とは、親や祖父母など直系尊属から住宅資金を贈与してもらった場合に、一定の条件を満たせば、贈与税の非課税枠が適用される制度です。

この制度は、平成27年1月1日から令和3年12月31日までの特例となります。

 

「住宅取得資金贈与」非課税特例の適用要件

受贈者(住宅資金を受け取る人)の要件

  1. 贈与を受けた年の1月1日に、20歳以上である。
  2. 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下である。
  3. 平成21年分から平成26年分までに「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがない(一定の場合を除く)。
  4. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅資金の全額を使って住宅を取得している。
  5. 配偶者や親族など一定の特別な関係がある人から住宅を取得をしていない。またはこれらの方との請負契約で新築・増改築などをしていない。
  6. その住宅資金で取得した住宅の所有者である(共有持分は不可)。
  7. 贈与を受けた時に日本国内に住所がある。
  8. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに取得した住宅に居住する。またはその後すぐに居住することが確実である(ただし、贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住していない場合は不可)。

 

建物の要件

◆新築または取得の場合

  1. 住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下で、床面積の2分の1以上が受贈者の居住用である。
  2. 取得する住宅が次のいずれかに該当すること。
    1. 新築
    2. 築20年以内の中古住宅(耐火建築物の場合は25年以内)
    3. 一定の耐震基準を満たすことが証明されている住宅

 

◆増改築の場合

  1. 住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下で、床面積の2分の1以上が受贈者の居住用である。
  2. 増改築工事が受贈者本人の所有する居住用住宅について行われている。
  3. 一定の工事に該当することについて、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」又は「増改築等工事証明書」などの書類により証明されている。
  4. 増改築工事の費用が100万円以上である。
  5. 増改築工事の費用の2分の1以上が、受贈者本人の居住用住宅における工事に使用される。

 

親(直系尊属)からの住宅資金の非課税限度額

親などから受け取った住宅資金における贈与税の非課税枠は、契約締結日や購入時に適用される消費税率、住宅の種類により異なります。

 

◆消費税8%で取得した場合

 

契約締結日 一般住宅 省エネ等住宅
~平成27年12月31日 1,000万円 1,500万円
平成28年1月1日~令和2年3月31日 700万円 1,200万円
令和2年4月1日~令和3年3月31日 500万円 1,000万円
令和3年4月1日~令和3年12月31日 300万円 800万円

 

◆消費税10%で取得した場合

 

契約締結日 一般住宅 省エネ等住宅
平成31年4月1日~令和2年3月31日 2,500万円 3,000万円
令和2年4月1日~令和3年3月31日 1,000万円 1,500万円
令和3年4月1日~令和3年12月31日 700万円 1,200万円

 

「相続時精算課税制度」による節税

住宅資金の贈与における節税を検討する場合、知っておきたいのが「相続時精算課税制度」です。これは、親など直系尊属からの贈与について2,500万円までを贈与税非課税にし、その分は贈与者の死後に相続財産に合算され、相続税を精算する制度です(一定の要件あり)。

相続税の基礎控除額(相続財産の総額における)は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」ですので、住宅資金を含め親の相続財産がその範囲に収まる場合は、利用を検討するといいでしょう。

また、「相続時精算課税制度」を利用した場合、財産評価額は贈与時の価額が適用されます。そのため、評価額が上昇する時期なら、節税として有効な可能性があります。

ただし「小規模宅地等の特例」と併用できないなどデメリットもあります。そのため、実際に課税される税額がどの程度になるか事前に試算し、贈与や相続のプランを立てることが大切です。

 

親からの住宅資金贈与に関する注意点

「小規模宅地等の特例」は適用できなくなる

「小規模宅地等の特例」は、相続税の対象となる土地の評価額を大幅に減額できる制度です。しかし、相続人が持ち家を所有していると適用されません。

親から住宅資金を贈与する場合には、「住宅取得資金贈与の非課税特例」だけでなく、将来の相続税も考慮する必要があるのです。

 

「住宅ローン控除」と併用したい場合は試算が必要

「住宅ローン控除」は、年末のローン残高の1%が10年間、所得税から控除される制度で、「住宅取得資金贈与の非課税特例」との併用が可能です。

しかし、親などから住宅資金の贈与を受けた結果、毎年のローン残高が減ると、その分所得税の控除額が少なくなります。減税制度の併用で総合的な節税を考えるなら、長期的な課税額を試算し検討することが大切です。

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