建築時には容積率の計算が必須|建築基準法の制限と緩和の特例を学ぶ

投稿日 : 2020年02月29日/更新日 : 2023年02月03日

建物を建てるときには、法律で定められている容積率(ようせきりつ)の範囲内で建築する必要があります。
マンション・一戸建・商業施設・公共施設などの種類を問わず、すべての建築物は容積率の規定を守らなければいけません。

今回は容積率とは何か、容積率の計算方法、容積率が緩和される特例などについて学びましょう。

kobayashi この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

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容積率とは


最初に容積率の意味を説明します。容積率とは土地の面積に対する建物の延床面積の割合をパーセンテージで表したものです。
容積率を計算することにより、敷地内にどれだけ大きな建物が建築できるかがわかります。

なお、容積率と一緒に守らなければいけない指標として建ぺい率という規定もあります。
容積率と建ぺい率はセットとして考えておきましょう。

▶建ぺい率と容積率を確認する|建設面積・延床面積の制限

 

容積率の計算方法

容積率は以下の計算式で求めます。

容積率(%)=延床面積÷敷地面積×100

 

延床面積は建築物の各階の床面積を合計した数値です。一般的には1階よりも2階、2階よりも3階の方が床面積は小さくなるので、単純に2倍・3倍とは計算しません。

敷地面積が100㎡の土地に2階建ての建物を建て、1階部分の床面積は100㎡・2階部分の面積は70㎡としたときの計算式は以下のとおりです。

延床面積170㎡÷敷地面積100㎡×100=容積率170%

 

用途地域や道路幅により基準容積率の制限がある

どうして建築時には容積率を考えなければならないのでしょうか。それは、建物が建てられる地域や土地の道路づけ状況により、容積率が制限されているからです。

容積率の制限には指定容積率前面道路の幅員による容積率の2種類があり、2つの容積率のうち小さい数値の方が基準容積率となります。
2種類の制限を詳しく見ていきましょう。

 

指定容積率

指定容積率とは、都市計画で定められた用途地域ごとに決められている割合です。

用途地域は住居系7種類・商業系2種類・工業系3種類で、全12種類あります。それぞれの用途地域での指定容積率は以下のとおりです。

 

画像引用:東建コーポレーション|建築基礎講座「容積率」

 

前面道路の幅員による容積率

前面道路の幅員による容積率は、敷地に接する道路の幅員が12m未満の場合に適用されます。こちらも用途地域により制限の違いがあります。

 

商業系用途地域、工業系用途地域、用途地域の指定のない区域 前面道路幅員(m)×10分の6
住居系用途地域、特定行政庁が都市計画地方審議会の議を経て指定する区域 前面道路幅員(m)×10分の4

 

2項道路のセットバックに関する注意点

容積率を計算するときには、セットバックが要るかどうか必ず確認してください。

前面道路の幅員が4m未満の土地には本来建物が建てられませんが、2項道路(みなし道路)については建替えが免除されています。しかし新たな建物の建築時には前面道路を4mにするためにセットバックしなければならないため、敷地面積がその分狭くなります。
土地の面積を計測しただけでは、適切な容積率が算出できないので注意しましょう。

 

容積率に関する法律(建築基準法)

 

容積率を定めている法律は建築基準法第52条(容積率)です。

建築基準法を守らない建築物は違法建築や既存不適格物件として見なされ、建築中の建物であれば工事停止が命じられます。
停止命令に従わずに工事を進めると、建築基準法第98により3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。

また、建物が完成した後で建築基準法違反が判明した際には、建築基準法9に基づき取り壊しを命じられる可能性があります。

さらに違法建築物に関係した業者には、業務停止や営業許可・免許はく奪などの処分が行われます。違法建築物を設計した建築士や建設業者だけでなく、その建築物を媒介した不動産業者に対しても処分が行われる可能性がありますので、不動産業者としても違法建築物には目を光らせておく責務があります。

 

容積率が緩和されるケース

 

上記のように厳しく制限される容積率ですが、土地面積が小さくなりがちな都市部の住宅建築などの際には、できるだけ延床面積を大きくしてゆったりとした家を建てたいものです。

容積率には建築のしかたによって緩和される特例がいくつか設けられていますので、適用できる条件を駆使して延床面積の増大を図りましょう。

 

車庫(ビルトインガレージ・駐車場)がある建物

建物の1階部分に車庫を設けた、いわゆるビルトインガレージのある家は、延床面積の5分の1まで容積率の計算から差し引けます。

土地面積が100㎡で容積率が80%の場合には延床面積80㎡までしか建築できませんが、1階に車庫を設ければ最大100㎡の家が建築できます。

計算式:80㎡×5÷(5-1)=100㎡

 

地下室がある建物

地下室を設けた建物は、延床面積の3分の1まで容積率の計算から差し引けます。

土地面積が100㎡で容積率が80%の場合でも、地下階を作れば延床面積の最大値が120㎡になります。

計算式:80㎡×3÷(3-1)=120㎡

 

小屋裏収納(ロフト)がある建物

建物に小屋裏収納を設けた際は、延床面積ではなく小屋裏収納の直下床面積の2分の1まで容積率の計算から差し引けます。2階建ての建物に小屋裏収納を設けた際には2階床面積の2分の1、3階建てであれば3階床面積の2分の1が対象になります。

階段部分に収納部屋を設置した際には、1階と2階の間であれば1階床面積の2分の1、2階と3階の間であれば2階床面積の2分の1です。

なお、容積率緩和の特例を適用できる小屋裏収納の高さは1,400mm以下までと制限されています。

 

特定道路から分岐する道路に接する土地

幅員15m以上の特定道路から分岐した道路に接する土地は容積率が緩和できます。

この特例の目的は、幅員が広い道路に接している土地と、そこから分岐する道路に接する土地で容積率が急激に減少することにより、近接する土地の価格差が広がるのを防ぐためです。

前面道路の幅員が6m以上12m未満で特定道路までの距離が70m以内の土地が特例の対象となり、特定道路からの距離に応じて容積率が加算されます。

 

マンションの共有部分

マンションやアパート等の共同住宅のエントランス・ホール・階段・廊下などの共有部分は建築基準法第52条の6(容積率の不算入措置)が適用され、容積率の計算より除外されます。

専有部分とはマンションのどこを指すのか|意味と共用部分との違いも解説

 

マンションの建替え

これは2014年施行の改正マンション建替え法(マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律:平成26年法律第80号)により新たに設けられた特例です。

改正マンション建替え法では、近年問題となっている高経年化マンションの建て替えを促進するために容積率の緩和措置がされるようになりました。

同法第102条第1項で認定を受けたマンションは、特定行政庁の許可を受けることで容積率が緩和できます。
許可基準は特別行政庁ごとに異なります。東京都の場合は以下のとおりです。

 

画像引用:東京都マンションポータルサイト|東京都マンションまちづくり制度について

 

建築時には容積率以外に建ぺい率・高さも確認が必要

最初にも申し上げましたが、建物を建築する際には容積率だけでなく建ぺい率もセットとして考える必要があります。

また、建築時にはそれ以外にも斜線制限・日影規制・絶対高さ制限・高度地区・高度利用地区など建物の高さに関する制限もありますから、容積率を考慮するだけでは不十分であることは覚えておきましょう。

 

まとめ

今回は、容積率の計算方法やさまざまな規制・特例について解説しました。

その土地にどのくらいの家を建てることができるかは、容積率をはじめとする国や行政の規定により変わってきます。マイホームを建てたいと希望されるお客様へは、必ずしもご希望どおりの家が建つとは限らない旨をご説明しつつ、できるだけお客様がご満足されるような建築計画を検討しましょう。

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