国交省、まちづくりにSIBを活用|公共事業の民間委託でサービスを可視化

投稿日 : 2019年12月06日

国土交通省は「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」のまちづくり分野への活用を本格的に促していきます。12月に全国で研修会を開催するなどし、日本版SIBの構築を目指します。

SIBは社会課題解決を図るための新たな官民連携手法の一つです。行政は地域が抱える社会課題の解決を目指して実施する公共事業を民間事業者に委託、あらかじめ設定した成果目標の達成度合いに応じて行政から報酬が支払われる仕組みです。

行政は財政的なリスクを抑えながら、民間の新しい取組みを活用でき、新しいサービスの試行を行えます。また、成果が可視化されることで、サービスの向上などが期待できます。SIBの発祥はイギリスで、世界では2019年1月末時点で24か国130プロジェクト、466億円のSIBの活用実績があります。主に、就労支援や生活困窮者支援、ヘルスケア、子ども家庭支援、再犯防止、教育、貧困と環境といった分野で活用が進められています。

日本でも、「日本再興戦略」や「まち・ひと・しごと創世基本方針」でSIBの活用促進を掲げ、各省庁がSIBの導入に向けた検討を開始。厚生労働省や経済産業省が健康などの分野での活用に向けた検討を進め、“日本版SIB”の構築に向け取り組んでおり、2019年1月末時点ではヘルスケアや教育支援、コミュニティビジネス起業支援といった分野で10件超のプロジェクトにSIBが活用されています。

こうしたなか、国土交通省はまちづくり分野での活用に向け、今回、取り組みを本格化させます。自治体に向け12月に東京と大阪で研修会を開催。まちづくり分野でのSIB活用の可能性や国内外の先行事例、まちづくり分野での活用にあたっての基本的考え方や具体的な事業化の手順などを説明し理解を促しました。来年3月には東京でシンポジウムを開催、まちづくり分野でのSIB活用の機運を高めていきたい考えです。

SIBは従来の公共事業よりも民間への委託度合いが高く、民間事業者はSIBの公共事業を受注することで、より自由度の高い取り組みが可能になります。従来、民間事業者は行政の案に基づき公共サービスを提供することが一般的でしたが、SIBでは民間の案に基づき提供できるようになります。

例えば、まちづくり分野では、行政が地域活性化を図ることを目的にコミュニティ施設の設計・建築を民間に委託することが多くありますが、SIBでは「そもそも地域活性化を図るためにはどのような方策があるのか」というアイデア考案の段階から広く募集します。住宅・不動産事業者の中には地域活性化に取り組んでいる事業者も多いため、その知見を活かせる可能性がありそうです。

一方で、SIBは、日本ではまだ始まったばかりの仕組みであり課題も多くあります。例えば、成果指標の設定です。まちづくり分野では、実績がヘルスケア分野のようには明確に表せない部分も多く、この点をどのように評価指標に落とし込むかが課題になります。こうしたことから、海外も含め、まちづくり分野へのSIB導入の実績はまだ多くないというのが実情です。そのような中で、まちづくり分野での日本版SIBをどのように構築していくのか、今後に注目が集まりそうです。