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2022年(令和4年)の税制改正で住宅ローン控除はどう変わる?注意点も徹底解説
住宅購入者にとって利息の負担を軽減できる住宅ローン控除。
住宅需要に大きく影響するため、お客様だけでなく住宅事業者にとっても大切な制度です。
そんな住宅ローン控除が2022年度税制改正で大きく見直されたことをご存知ですか。
住宅ローン控除の改正内容を確認し、お客様案内の際に最新情報を提供しましょう。
今回は、住宅ローン控除の基本的な内容から2022年度税制改正の最新情報、お客様案内時の注意点まで解説します。
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合、住宅ローン年末残高の1%を所得税額から控除できる制度です(原則の年間控除額最大40万円)。
原則での控除期間は10年間ですが、要件を満たした場合は最大13年間控除できる仕組みです。
住宅ローン控除は住宅ローンを利用して購入する方の利息負担を軽減させるために作られた制度で、所得税から控除しきれない分は翌年の住民税から控除できます。
住宅ローン控除の見直しはなぜ必要なのか?
住宅ローン控除は、消費税の増税や、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を考慮し、複数回にわたって控除期間延長の特例措置が講じられてきました。
そんな住宅ローン控除が2022年度の税制改正によって、大幅に見直される可能性が高くなっています。
住宅ローン控除が見直されることになった主な理由は、金利低下による逆ザヤを緩和するためです。
2016年以降、日本では日本銀行によるマイナス金利政策が導入され、各金融機関における住宅ローンの金利が低下しています。
特に金利水準が低い変動金利の場合、0.3%~0.4%台も珍しくありません。
そのため、現行の住宅ローン控除の控除率1%に対して、1%よりも低い金利の住宅ローンで融資を受ける場合、住宅購入者が金利を支払った利息よりも控除される金額が上回る現象が起こります。
つまり、住宅ローンの金利次第では、住宅ローン控除を利用することで住宅購入者が得をする仕組みです。
この仕組みによって、自己資金があるにもかかわらず住宅ローンを利用して住宅ローン控除を受ける、住宅ローンの控除期間が終了するまであえて住宅ローンの繰り上げ返済を行わない、といった動機付けにつながる可能性があります。
住宅ローン控除の財源は国費から賄われていることもあり、逆ザヤ問題については以前から見直しが検討されていました。このような背景があり、2022年度の税制改正によって、住宅ローン控除が大きく改正される可能性が高くなっています。
住宅ローン控除の変更点について2021年から段階的に見ていきましょう。
2021年度税制改正で住宅ローン控除はどう変更されたのか?
2021年度の税制改正による住宅ローン控除の主な変更点は、控除の適用期間が原則10年間から13年間に延長された点です。適用期間を延長するためには要件を満たす必要があります。
控除の適用期間が延長
2021年度税制改正によって、住宅ローン控除の適用期間は要件を満たした場合に最大13年間(原則10年間)に延長されました。
消費税率10%が適用される住宅のうち、以下の契約期限と入居期限の要件を満たした場合に適用期間が延長されます。
契約期間 | 入居期限 | |
注文住宅 | 2021年9月末 | 2022年12月末 |
分譲住宅・既存住宅 | 2021年11月末 |
尚、住宅ローン控除の適用期間延長は消費税率8%から10%への引き上げに伴う特例措置です。
個人間による既存住宅の売買は消費税非課税となるため、住宅ローン控除の適用期間延長の対象外です。その場合、控除期間は原則の10年間となります。
2022年度税制改正で住宅ローン控除はどう変更するのか?
住宅ローン控除制度は2021年末で終了の予定でしたが、2022年度税制改正によって2025年末まで延長されます。
2021年12月10日に自民党の公式サイトで公開された「2022年度税制改正大綱」によると、住宅ローン控除が大きく改正される見通しです。
この税制改正によって、住宅ローン控除の控除額にも大きく影響が出ます。
また、今後の税制改正次第では、相続税と贈与税が一体化する可能性もあるでしょう。
住宅ローン控除の控除額見直しの可能性
2022年度税制改正で見直される住宅ローン控除の要件は、以下の3つです。
- 控除率:1%→0.7%へ引き下げ
- 適用期間:原則10年間(特例適用時13年間)→原則13年間に延長
- 控除対象者の所得上限:3,000万円→2,000万円へ引き下げ
※既存住宅は原則10年間に据え置きです。
また、借入限度額・控除期間に関しては、入居する時期と購入する住宅によって適用される内容が異なります。
税制改正後の要件を以下の表にまとめたので、参考にしていただければと思います。
【2022年・2023年までに入居した場合】
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 |
認定住宅 | 5,000万円 | 0.7% | 13年 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | ||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | ||
上記に該当しない新築住宅 | 3,000万円 | ||
既存住宅(認定住宅) | 10年 | ||
既存住宅・増改築等 | 2,000万円 |
【2024年・2025年までに入居した場合】
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 |
認定住宅 | 4,500万円 | 0.7% | 13年 |
ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | ||
省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | ||
既存住宅(認定住宅) | 10年 | ||
上記に該当しない新築・既存住宅等 | 2,000万円 |
参考元:令和4年度税制改正大綱 | 政策 | ニュース | 自由民主党
今回の住宅ローン控除見直しのポイントは、全体的に控除額が縮小され、住宅の性能によって上乗せ措置が講じられる点です。
現行では、認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅)となっていた区分が、住宅の性能によってZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅など細分化されました。
税制改正後は、上質な住宅を購入した方ほど上乗せ措置が講じられる仕組みです。
一方、一般的な新築住宅に関しては、全体的に控除額が引き下げられています。
たとえば、2021年度に税制改正された内容が適用される場合、消費税10%で取得した一般的な新築住宅に関しては最大控除額480万円(認定住宅600万円)でした。
2022年度税制改正の内容が適用される場合、同条件の新築住宅における最大控除額は273万円(認定住宅455万円)となります。(2023年までに入居した場合)
上質な住宅に対する上乗せ措置を講じる背景には、上質な住宅取得の普及促進が「2050カーボンニュートラル」の実現に向けてのキーポイントとなる点が挙げられます。
相続税と贈与税が一体化する可能性も
2021年度の税制改正では、相続税と贈与税の一体化の可能性が示唆されていました。
しかし、2022年度の税制改正では先送りする方針となっています。
相続税・贈与税における税制改正で検討されている内容は、以下のいずれかです。
- 贈与税の暦年贈与制度を廃止し、相続時精算課税制度へ一本化する
- 贈与税の暦年課税制度を残し、生前贈与の期間を大きく拡張する(現行の3年以内から10年、15年など)
相続以外に高齢世帯から若い世帯へ財産を移転する方法として、現行制度では暦年課税制度または相続時精算課税制度のいずれかを選択する仕組みになっています。
海外では贈与や相続を一体化することで、どのタイミングで財産を移転しても税負担が一定となる措置が講じられている国があり、日本でも海外の例を参考に贈与税と相続税のあり方を改正する案が検討されています。
2022年度の税制改正では先送りとなっていますが、今後、贈与税・相続税のあり方が見直される可能性が高いでしょう。
今後の税制改正によって贈与税・相続税の一体化が進む場合、税制改正前の駆け込み需要が期待できる可能性があります。
2022年度税制改正はいつから?
2022年度税制改正は、新年度からの施行となるため2022年4月1日から適用されます。
この記事では2022年度税制改正大綱の内容をもとに解説していますが、同内容がそのまま法律となる訳ではなく、複数の手順を経て成立したものが正式な内容となる仕組みです。
毎年の流れですと、1月下旬頃に税制改正法案が国会に提出され、審議・採択等を経て4月頃に改正法案が施行されます。
新制度の施行は4月1日からとなりますが、住宅ローン控除は1月1日が基準となる制度のため2022年4月以前に入居した方に対しても新制度が適用されます。
注意したい点【床面積40m2の適用要件】
住宅事業者として住宅ローン控除について案内する際に注意したい点は、「床面積40m2の適用要件」です。
住宅ローン控除では、原則、床面積50m2以上であることが適用要件とされています。
しかし、2021年度の税制改正によって床面積40m2~50m2未満の場合でも一定の要件を満たせば住宅ローン控除が適用されるようになりました。
床面積40m2~50m2未満の住宅購入で住宅ローン控除を利用する際の要件は以下5つです。
- 契約期限:注文住宅は2021年9月末、分譲住宅は2021年11月末
- 入居期限:2022年12月31日
- 床面積:登記簿の面積で40m2以上であること
- 控除対象者の所得:1,000万円以下であること
- 売主が法人であること
※消費税率10%が適用される住宅が対象となるため、個人間の売買による既存住宅は対象外です。
尚、上記の要件は2021年度における税制改正のものです。2022年度税制改正大綱によると、2023年12月末までに建築確認を受けた新築等も適用される旨の記載があります。
ただし、税制改正によって今後要件が変更される場合があるため、国土交通省等、政府の公式サイトにて最新情報をご確認ください。
まとめ
住宅ローン控除における2022年度税制改正の内容は、専門知識がない住宅購入者にとってややわかりにくくなっています。
お客様に正しく理解していただくためにも、政府の公式サイト等を確認し、住宅事業者として理解を深めておくことをおすすめします。