冬場の住まいに潜む見えないリスク|ヒートショックを防止する住宅をどう作る?

投稿日 : 2019年10月25日

気温の低下ともに、住宅内でヒートショックによって死亡するリスクが高まる季節になってきました。

ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が上下に大きく変動することで起こる健康被害。心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす要因にもなり、冬場の住まいに潜む重大な健康リスクなのです。

暖かいリビングから暖房されていない脱衣室に移動すると、温度変化によって血管が収縮し血圧が上昇します。その後、入浴してしばらくお湯につかっていると、収縮した血管がもとに戻りはじめます。こうした急激な変化によって、健康被害が発生することがあるのです。浴室内で心筋梗塞を発症し、浴槽内で溺死してしまうケースも少なくありません。

交通事故による死亡者数の4倍以上がヒートショックで死亡

ヒートショックの被害の実態については、把握することが難しいと言われています。ヒートショックが原因で入浴中に死亡しても、「溺死」や「病死」と判断されてしまうからです。

東京都健康長寿医療センター研究所では、2011年の1年間にヒートショックが原因で1万7000人が死亡しているという推計を発表しています。厚生労働省のデータから年間3000~4000人が入浴中に溺死しているということは分かっていました。この厚生労働省の調査結果と、東日本にある消防本部の協力により実施した調査結果から1万7000人という数字を推計したのです。

ちなみに、2011年の交通事故による死亡者数は4611人。交通事故の死亡者数の実に4倍以上の方々がヒートショックで亡くなっている計算になります。

今後、高齢化が進むなかで、こうした状況はさらに深刻化していくでしょう。住宅を供給する事業者にとっては、居住者の生命に係ることだけに、しっかりとした対策を提案することが不可欠になってきているのです。

まずは断熱性能などを高め、温度差を解消する

ヒートショックのリスクを軽減する住宅を検討する場合、まずは断熱性能などを向上させることで、家全体の温度差をできるだけ少なくすることが大事になります。

日本の住宅の多くは、欧米のような全館空調とは異なり、部屋ごとに暖房を行うことが一般的です。そのため、暖房をしている居室と暖房をしていない脱衣室や廊下などの非居室間の温度差が発生していまうのです。

戸建住宅であっても全館空調を採用する住宅もありますが、まずは住宅そのものの断熱性能を高めることで、過度にエネルギーを使うことなく温度差を解消していくことが求められるでしょう。

住宅内の断熱性能については、ヒートショックという観点からだけでなく、断熱性能が高い住宅ほど、アレルギー症状などが改善されるという調査結果も明らかになってきています。

住宅の断熱性能を向上し、住宅の温熱環境を整えることは、省エネに貢献するだけでなく、ヒートショックの予防や居住者の健康状態を良好に保つことにもつながる可能性があるというわけです。

「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」(HEAT20)という組織では、「HEAT20 G1」、「HEAT20 G2」といった、国が定めた省エネ基準よりも高いレベルの断熱性能の基準を設定しています。

この基準は、住宅の省エネ性能だけでなく、無暖房状態で体感温度が一定以下にならないようにすることを目指して設定されています。例えば、「HEAT20 G2」の場合、4~7地域であれば、冬期間の最低の体感温度が概ね13℃を下回らないような断熱性能を目指しているのです。

このように、居住後の室温や体感温度を考慮して、目指すべき断熱性能を検討していくことも、ヒートショック対策を施すうえでは重要になるのです。

IoTを活用して危険を感知


(参考:パーパスと東京ガスでは、入浴者の異常な状況の早期発見を促す、「安心入浴サポート機能」を搭載した給湯器リモコンを共同開発)

IoTを活用して、入浴時の危険をいち早く感知し、ヒートショックによる健康被害を未然に防ごうという商品も発売されています。

例えば、パーパスと東京ガスは、各種センサーの検知によって入浴中の居眠り等、入浴者の異常な状況の早期発見を促す、「安心入浴サポート機能」を搭載した給湯器リモコンを共同で開発し、2019年8月から販売しています。

このリモコンは、東京ガスと九州工業大学が行った共同研究をもとに開発した人感センサーと、ドアセンサー・水位センサーを組み合わせて、浴室への入退室や入浴者の状況を検知するものです。

各種センサーが入浴者の動きを一定時間検知できない場合、入浴者の安全を確認するために浴室リモコンからチャイムと音声による声掛けを行います。声掛けに入浴者が応じない場合、台所リモコンから同居のご家族に異常をお知らせする安心入浴サポート機能を搭載しているのです。

ノーリツでも、IoT技術を導入した無線LAN対応の給湯器リモコンを販売しています。

同居家族の浴室への入室・退室、および浴槽に入浴している時間をスマートフォンの画面で確認できる機能を備えているほか、設定した入浴時間を経過すると、スマートフォンでアラームを鳴らしてお知らせすることも可能です。

こうした先進機器を浴室に設置し、ヒートショックのリスクを低減することで、浴室内で死亡する危険性を低減することができるでしょう。

世界で一番、安心できる場所であるはずの住宅。しかし、先述したようにヒートショックによって年間1万7000人もの方が亡くなっているのが実情です。住宅での“死亡者数・ゼロ”の実現に向けて、住宅事業者がやるべきことが数多くの残されているのではないでしょうか。