空き家問題

投稿日 : 2020年01月08日/更新日 : 2023年06月06日

総住宅数・空き家数・空き家率の実績と予測結果

※予測値は野村総合研究所によるもの

2033年、3軒に1軒の可能性も

キーポイント

▶賃貸・売却予定のない「その他空き家」が問題

▶対策に向け、2015年に空き家特措法が施行

▶戸建空き家の活用で様々な提案

総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家戸数は846万戸、総戸数に占める割合は13.6%で、5年前より26万戸(3.2%)増加している。さらに、野村総合研究所は既存住宅の除却や、住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2033年には空き家数は1955万戸、空き家率は27.3%になると予測している(2018年6月発表資料)。これは日本の住宅の約3件に1件が空き家になるということだ。

空き家の中でも、特に問題となっているのが、賃貸用でも売却用でなく、放置されている「その他の空き家」と呼ばれるもの。長期間放置されていると、建物の状態が悪くなっていき、治安の悪化などを引き起こす。「平成30年住宅・土地統計調査」によると、「その他の住宅」は41.1%となっている。

こうした状況に対し、国は空き家の適切な管理や利活用の促進策などを盛り込んだ「空家等対策の推進に関する特別措置法」を15年に施行。空き家の中でも特に周辺環境に悪影響を与えるものを「特定空家」として指定し、市町村が修繕、立木竹の伐採等の措置・指導、助言、勧告、命令をできるようにした。

命令に従わない者には50万円以下の罰金か、行政代執行での除去の権限も与えた。

また、税制も見直した。これまで200㎡以内の土地については、住宅が建っていると固定資産税が6分の1に軽減されるという特例があった。

だが、15年度の税制改正で固定資産税の優遇を見直し、「特定空家」のオーナーに対し、市町村が必要な措置を講じることを勧告した場合、固定資産税の優遇を無効とした。

コスト抑えた他拠点居住など活用メニュー広がる

民間では、空き家活用の様々な提案が活発化している。例えば、他拠点居住の拠点として空き家を活用する動きがある。新築するよりコストを抑えられ、地方の空き家問題の解消にもつながる。

都市部でも、職住近接などの観点から、空き家をシェアハウスやシェアオフィス等に活用する取り組みが広がっている。自治体による補助制度の創設も活発化しており、官民一体となった取り組みが進められている。

一方で、現状は空き家個別に対応しているというのが実情で、今後は地域レベルでの対策も求められている。地域の価値を向上させることで、空き家を生み出さないまちづくりが必要になる。

これからどうなる?
マンションの空き家問題が顕在化

戸建空き家の対策が進む一方で、分譲マンションの空き家問題が顕在化してきている。

国土交通省の調査によると、築40年越えの高経年マンションは2017年末で72.9万戸だが、20年後には351.9万戸に急増する見込みだ。マンションが高経年化すると、建物の老朽化や管理組合の担い手不足により「スラム化」する懸念もある。このため、今後は官民を挙げた取り組みの推進が喫緊の課題と言えそうだ。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。