国産材活用

投稿日 : 2020年01月06日/更新日 : 2023年06月05日

木材供給量及び木材自給率の推移

出典:林野庁

日本に唯一豊富にある森林資源の循環利用へ

キーポイント

▶2025年に木材自給率50%達成へ

▶国産材での木造化・木質化が進む

▶EPA発効でビハインドの風も

国は、森林・林業基本計画で木材自給率を2025年までに50%までに引き上げる目標を打ち出す。

林野庁が発表した17年の木材需給表によると木材の総需要量は8172万2000㎥。前年に比べて4.7%増加し、10年ぶりに8000万㎥台に達した。このうち国内生産量は2952万8000㎥で、前年から4.7%増加し、木材自給率も前年比1.3ポイント上昇し36.1%となった。

住宅・建築分野においても国産材の利用量は着実に伸びている。(一社)日本木造住宅産業協会が、05年度から3年ごとに会員企業の木造軸組住宅の国産材使用割合などをまとめた「木造軸組工法住宅における国産材利用実態調査報告書」によると、17年度の国産材の利用割合は材積換算で前回の32.3%から45.5%へ増加し過去最高となった。

なかでも国産材活用拡大をけん引するのが合板業界だ。

合板は、構造用合板のほか、型枠用、フローリングの基材などに用いられているが、用途の約9割は構造用合板が占めている。輸入丸太の供給不安を背景に、日本合板工業組合連合会などが中心となり、国産材に対応した厚ものの構造用合板の製品化を進め、高耐力の壁倍率の大臣認定の取得を進めた結果、採用実績を伸ばし、国内生産合板における国産材割合は、00年の3%から17年の82%まで急増。さらに日合連では、17年時点で400万㎥の合板用の国産原木使用量を25年までに600万㎥へと引き上げる目標を掲げる。

輸入木材製品の関税が8年後撤廃、国際競争力強化が喫緊の課題

一方で、国産材利用拡大に向けビハインドの風も吹く。貿易とサービスの自由化を目指し、日本とEU間で進められてきた「日EU経済連携協定(EPA)」の効力発生に関する国内手続きが完了し、19年2月1日、発効された。構造用合板などの関税がEPA発効後8年目で完全撤廃される。関税撤廃の対象となった林産物10品目には、構造用集成材や、集成材の原材料(ラミナ)として多用されているSPF材2×4住宅の縦枠材なども含まれている。猶予期間が与えられたものの、関税が撤廃されれば、住宅業界にも大きな影響が出てくることは必至だ。猶予期間にいかに国際競争力を高められるかが問われている。

これからどうなる?
森林環境税がスタート、求められる川上と川下が連携した出口戦略

2019年度の税制改正で「森林環境税」と「森林環境譲与税」という新制度が決定した。森林環境税は国税として個人住民税に年額1000円が加算され、市町村から徴収される。また、森林環境税は、全額がいったん国の譲与税配布金特別会計に預け入れられたうえで、市町村、都道府県に森林環境譲与税として配分され、間伐などの森林整備の費用に充てられる。注目は森林のない都市部にも贈与税が配分されることだ。都市部を含めて、木材活用の多様な出口戦略を立てられるかが問われている。国産材活用は漸増しつつも、川上に利益が還元されず、事業継続が難しいといった声も聞かれる。木材の生産、流通、消費を一体的に考え利益率の高い木材利用の仕組みづくりが求められている。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。