既存住宅の建物評価の見直し

投稿日 : 2020年01月07日/更新日 : 2023年06月06日

既存住宅の新たな建物評価のイメージ

出典:国土交通省

リフォームの効果を建物評価に反映

キーポイント

▶既存住宅の建物価値は20年程度で一律ゼロ

▶リフォームによる価値向上の建物評価への反映が必要

▶新たな建物価値の評価手法を取り入れる動きも

日本の中古住宅市場では、木造住宅の場合、建物価値は20年程度で一律ゼロになってしまう。メンテナンスやリフォームを実施しても、その効果が建物価値に反映されず、既存住宅の流通を妨げる大きな要因として指摘されている。そこで、国が設置した「中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会」は「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定。「適切なリフォームを行えば住宅の使用価値は何度でも回復・向上するという原則が置かれるべき」とし、これまで価値が置かれてこなかったリフォームによる影響を、住宅の価値評価の仕組みに取り入れていく手法を示した。

指針により、中古戸建住宅の建物評価に新たな目安ができたわけだが、重要なのはそれを業界に普及させていくことだ。このため、2015年7月、(公財)不動産流通推進センターは指針の考え方を反映し、同センターが提供している「既存住宅価格査定マニュアル」を改定した。同マニュアルは、宅建業者が既存戸建住宅の媒介価格を示す際に、参考としているツール。宅建業者は、このマニュアルのシステム上に築年数、各部位のグレード、維持管理状態等を入力することで査定額を算出することができる。

また、不動産鑑定士による査定についても、建物の性能やリフォームの実施を、既存戸建住宅の建物価値に反映させようとする動きが活発化してきている。15年7月、国土交通省は「既存戸建住宅の評価に関する留意点」を策定。不動産鑑定士が既存戸建住宅の鑑定評価を行うにあたり、建物の性能やリフォームの状況等を評価に適切に反映させるための留置点を不動産鑑定業者に通知した。これを受け、(公社)日本不動産鑑定士協会連合会も留意点を反映し、不動産鑑定士が既存戸建住宅の査定を行う際に参考としているツールである「JAREA―HAS(既存戸建住宅建物積算価格査定システム)」を改訂した。

新たな建物評価手法の採用が広がる

既存住宅流通の取り組みに、新たな建物評価手法を取り入れる動きが広がってきている。例えば、(一社)長寿命住宅普及協会は、質の高い新築戸建住宅を認定し、将来にわたり売却価格を保証する制度「Best Value Home(ベストバリューホーム)」の運用を行っているが、売却査定価格の算出にリフォームやメンテナンスの影響も反映させた独自の「住宅価値算定プログラム」を採用している。そうすることで、従来は築20年程度で価値がゼロとされてきた木造戸建て住宅でも、適切に価値を評価する仕組みを構築しようとしている。

これからどうなる?
リフォーム・メンテ以外の評価軸も

(一社)長寿命住宅普及協会は「Best Value Home」の売却査定価格の算出に、リフォームやメンテナンスによる影響だけでなく、ZEHや無垢材の使用、パッシブ工法を採用していることなどによる住み心地なども評価軸に入れている。

築年数で一律に判断せず、様々な要素から既存住宅の価値を評価する事業者が増えてくれば、より適切な価値評価の市場が形成されるだろう。そして、それは新築時から性能と品質に優れる住宅の普及にもつながるはずだ。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。