住生活基本計画

投稿日 : 2020年01月01日/更新日 : 2023年06月05日

住生活基本法の理念を具体化

キーポイント

▶策定から3年経過、次の計画議論へ

▶新たな住宅循環システムを構築

▶人口減少でストック重視が増す

住生活基本法の理念を具体化するため策定される中長期計画。同法では国と都道府県に計画策定を義務付けており、国の策定を「全国計画」と呼ぶ。国の計画を踏まえ、都道府県は地域の実情も加味し、策定する。期間は10年で、おおむね5年毎に見直しをする。

最初の全国計画は2006年9月に閣議決定された。これまでに3回見直されており、直近は16年3月に行われた。それから3年が経過し、次の計画策定に向けた議論が行われる見通しだ。

8項目の目標を示し、中でも住宅ストックの視点から「住宅すごろくを超える住宅環境システムの構築」が注目されている。この目標を達成するため、成果指標が置かれており、既存住宅流通量に占める既存住宅売買瑕疵保険に加入した住宅の割合を14年の5%から25年に20%とすることを追加した。

かつて日本では、賃貸を「振り出し」に、集合住宅の持ち家を通過し、郊外の庭付き一戸建てを取得し「あがり」という住宅すごろくで、住まいの変遷を表していた。しかし、消費者ニーズやライフスタイル、家族構成の変化により典型的な住宅すごろくだけで住まいを表せなくなった。ゴールを戸建て所有に置くのではなく、生活者の状況に応じて、自由に住替えができる環境を整備する方向に国は舵を切り始めた。

その際の課題は資金だ。所有する住宅を売却し、次の住宅取得資金に充てるような場合、「30年もすると建物価値はゼロ」という現状の住宅資産価値評価のありようを根本的に見直す必要がある。

新たな住生活基本計画の成果指標一覧


出典:国土交通省

既存住宅市場の活性化は我が国経済でも重点テーマ

また、18年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」でも、力強い経済成長の実現に向けた重点的な取り組みの1つとして、既存住宅市場の活性化をあげるなどストックへの注目度は増している。

これからどうなる?
少子化さらに加速か、多様な住宅需要を考慮

住生活基本計画の目標1に「希望出生率1.8の実現につなげる」とある。策定された16年の合計特殊出生率は1.44。17年はさらに低下している。少子化に歯止めが掛からない中で、予想を上回る住宅需要の減少も覚悟する必要があろう。2000年代に成人あるいは社会人になった世代(ミレニアル世代)が住宅購入の中心層になり、価値観の多様化がさらに進む。新築だけにこだわらず、既存住宅、賃貸住宅など間口を広く構え、対応に当たることが住宅業界にとって必要となる。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。