定期借地・定期借家制度

投稿日 : 2019年12月14日/更新日 : 2023年06月06日


パナソニックホームズは2018年7月、さいたま市桜区で全6戸の木造住宅による定期借地権付分譲住宅「パークナードテラス 桜区大久保」を分譲

契約期間満了時に確定的に賃貸借が終了

キーポイント

▶一定期間を区切り借地・借家契約を結ぶ制度

▶「貸したら返ってこない」というオーナーの不安を払拭

▶土地利用の形として再び注目

定期借地権制度は、1992年の借地借家法改正により創設された。

借地人は土地オーナーから土地を50年や70年といった長期にわたって借り、そこに建物を建て、契約期間終了後に更地にしてオーナーに返還する。この制度の登場によって、地主・住宅事業者にとって新たな事業展開が、住宅需要者にとっては新たな居住方法が生まれることになった。土地オーナーは土地を手放すことなく土地活用を行うことが可能になる。一方、居住者にとっては月々の地代は必要なものの、所有に比べて割安となる。所有権ではなく利用権を持ちながら暮らす住宅といえる。

また、05年1月から「前払賃料方式」が可能になり、賃料の前払いとして一時金を授受できるようになった。定期借地物件では、居住者は土地オーナーに対して毎月の地代に加え、入居時に保証金(期間満了時に返還)や権利金を支払う必要がある。権利金は土地オーナーに課税される。ただ、前払賃料方式での一時金は、保証金と違い期間満了時に返還する必要がないほか、権利金のように課税もされない。

国土交通省の「公的主体における定期借地権の活用実態調査(平成29年度)」によると、17年に供給された定期借地権付住宅は126戸で、そのうち一戸建(持家)が34戸、賃貸マンション・アパートが92戸で、分譲マンションの供給はなかった。93年からの累計は2万3766戸であるが、定期借地権を活用した持家(戸建)の供給量は00年をピークに減少。賃貸については08年以降、大きく減少している。

定期借家の利用は4%台と普及は足踏み

一方、定期借家制度は、「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」により、00年3月に施行された。一定の契約期間を設定して賃貸建物のオーナーとテナントが賃貸契約を結び、その期限がきたら原則テナントは撤退する。

従来の借地借家法ではテナントの権利に重きが置かれ、契約期間内でもテナントが撤去でき、逆に居座り続けることもできた。定期借家制度より、契約期間満了時にオーナーが明け渡しを求めることができるようになった。国土交通省の「平成29年度・住宅市場動向調査」によると、定期借家制度を利用した民間借家の割合(三大都市圏対象)は2.3%。平成25年度の調査では、4.1%あったが、半分程度に減っている。

これからどうなる?
所有から利用へ意識変わり、再び注目集まる

若年層を中心にモノに対する価値観が「所有から利用」へと変わりつつあり、住宅でも定期借地への注目が高まっている。こうした状況を受け、パナソニック ホームズは2018年7月、さいたま市桜区で全6戸の木造住宅による定期借地権付分譲住宅を行った。所有から利用へ意識変わってきているだけに、今後、分譲住宅の開発で、ハウスメーカーやデベロッパーで定期借地権付分譲住宅の提案が活発化する可能性がある。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。