多層階住宅

投稿日 : 2019年12月15日/更新日 : 2023年06月05日


旭化成ホームズの「へーベルビルシステム」は、新躯体を開発し8階建までの建設を可能にした

工業化住宅の強みを発揮し新たな提案

キーポイント

▶2010年代から活発化した市場

▶ハウスメーカーが相次ぎ商品開発

▶都市部の土地活用ニーズに合致

都市部における高度な土地利用のニーズの高まりを受け、2010年以降に活発になっているのが多層階住宅の提案である。

相続税法の改正も追い風となった。2015年から基礎控除が引き下げられ、都市部の土地オーナーのなかにはこれまで対象にならなかった層でも相続税が発生するケースが増えた。課税対象額の減額を見込み、二世帯住宅や賃貸住宅、店舗・事務所併用住宅に対するニーズが高まったのである。

こうしたなかで都市部において収益性の高い建築が可能な中高層建築の市場が拡大、各社の提案が相次いだ。

パナソニック ホームズは11年に重量鉄骨ラーメン構造の「ビューノ」を発売、17年には工業化住宅で最高となる9階建ての「ビューノ9」を発売するなど多層階住宅の提案に力をいれる。柱間隔を最大10.8mまで拡大できるなど大空間を可能とし、店舗や事務所を想定して空間対応力を高めている。

旭化成ホームズは16年に店舗や事務所などの商業用途に対応し、8階建てまでを可能とした「ヘーベルビルシステム」を開発した。重量鉄骨によるシステムラーメン構造を中高層用に発展させた新躯体を採用している。

ミサワホームも16年に5階建てまでに対応する重量鉄骨造商品「アーバンセンチュリー」を発売。基本モジュールである910㎜の4分の1ピッチでの間取り設計で、都市部における厳しい敷地条件にも対応する。

大都市集中がすすむなか、土地の高度利用ニーズに応える

中高層の住宅はゼネコンにとっては規模が小さく、工法店などによる在来工法のRC造やS造が大半を占めている。

しかし、東京五輪に向けた工事の増加などを背景に材料費の高騰、工事費の高止まり、職人不足などが表面化している。

こうしたなかで、低価格化や短工期、安定品質を実現するハウスメーカーの工業化住宅の競争力が高まっている。さらに空間提案力、土地活用提案なども強みだ。

都市部への人口集中が加速する中、土地の高度利用に対するニーズはさらに高まりそうで、多層階住宅の市場はさらに広がっていきそうだ。

これからどうなる?
技術力、ノウハウを活かせる成長市場

都市部における住宅には、高度な敷地対応力や空間対応力、プラン対応力などが求められる。二世帯・三世代同居にとどまらず店舗併用や事務所併用などの提案力も不可欠だ。こうした点からハウスメーカーが培ってきた技術力やノウハウが生かせる。中高層市場には在来工法で強力なライバルが存在しないこともあり、事業拡大の余地は大きい。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。