長期優良住宅化リフォーム

投稿日 : 2020年01月01日/更新日 : 2023年06月05日

既存住宅でも長期優良認定が可能に

キーポイント

▶既存住宅が長期優良認定の対象に

▶耐震や省エネなど9項目が要件

▶減税や補助事業で利用を後押し

2016年4月、長期優良住宅認定制度に増改築が加わり、対象となる既存住宅のリフォームの要件を定めた。要件は、①構造躯体の劣化対策②耐震性③維持管理・更新の容易性④可変性(共同住宅及び長屋のみ)⑤バリアフリー性(共同住宅等のみ)⑥省エネルギー対策⑦居住環境⑧住戸面積⑨維持保全計画――の9項目。

既存住宅の特性や現実的なリフォーム可否を踏まえ、認定水準を設定しているのが特徴だ。例えば②の耐震性については新築住宅では等級2の基準であるのに対し、既存住宅は等級1に。④の可変性では、新築が躯体天井高さ2650mm以上であるのに対して、増改築は「躯体天井高さ2650mm以上または居室天井高さ2400mm以上」と要件を緩和している。

認定を受けると、税制での優遇措置が用意されている。従来のリフォーム減税は耐震やバリアフリーにかかる費用の10%が所得税額から控除されていた。長期優良住宅化リフォームの場合、耐久性向上の工事も対象とすることができる。「省エネ+耐久性」で、21年12月31日までに入居した場合の控除対象限度額は250万円(控除率1%)。その他工事(控除率1.0%)と合わせ1000万円に。住宅ローン減税での最大控除額(5年間)は62.5万円となる。投資型減税では、標準的な工事費用相当額の10%を、その年の所得税額から控除。例えば「耐震+省エネ+耐久」では限度額500万円。最大控除額は50万円となる。他にも固定資産税の減額も用意されている。

増改築による長期優良住宅の普及を支える事業として、国土交通省は「長期優良住宅化リフォーム推進事業」を整備する。対象工事費用の3分の1、戸当たり200万円(さらに省エネ性能を向上させる場合戸当たり250万円)などを限度額に補助が受けられる。

補助要件にインスペクションの実施も

補助を受ける要件として、①リフォーム工事前にインスペクションを行うとともに、維持保全計画及びリフォーム履歴の作成が求められる。さらに②リフォーム工事後に、a劣化対策及び耐震性(新耐震基準適合等)の基準を満たすとともに、b省エネルギー性、維持管理・更新の容易性、高齢者等対策(共同住宅)、可変性(共同住宅)のいずれかの基準を満たす必要がある。そして③は、②a、bの性能項目のいずれかの性能向上に資するリフォーム工事か三世代同居対応改修工事の他に、新たに良好なマンション管理に対応する性能向上工事も加わり、いずれかの工事を行うことが必要だ。

長期優良住宅認定制度(増改築)、認定基準の概要


出典:国土交通省

これからどうなる?
マンション管理対応工事も対象に 管理会社の手腕に注目

2019年度の補助事業で良好なマンション管理対応工事に要する費用も対象に。マンションの高経年化問題も表面化しており注目される。この制度を使うためには、リフォーム工事がマンションを長期的に維持するための良好な管理に寄与することが要件。先導性や汎用性、独自性など高度な提案が必要で、管理会社や設計事務所の手腕が問われそうだ。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。