制度のスキーム
地震・火災保険の家財補償は必要?検討時のポイント・保険金額の目安
火災保険や地震保険に加入する際、「家財」を補償の対象にするべきかどうか悩む方は少なくありません。
「高価な家財を持っていないから」とご自身に関係ないと判断される方もいらっしゃるでしょう。
しかし、家財保険は高級家具や骨董品など、高価な家財を持っていない方にも検討していただきたい保険です。
不動産会社の営業担当として、お客様へ正しく案内できるように、家財保険の基本的な知識を身につけておきましょう。
火災保険・地震保険で補償対象となる家財とは?
一般的に火災保険や地震保険で補償対象となる「家財」とは、以下2つの条件を満たすものです。
- 建物の中にあるもの
- 被保険者※と生計を共にする親族が所有するもの
※被保険者:損害が発生した時に補償を受けられる人
火災保険や地震保険において、家財とは「建物の中に収用されているもの一式」を指します。
家財についてご理解いただくには、火災保険や地震保険の仕組みに対する理解が必要です。
まずは火災保険・地震保険の基本を大まかにおさらいしましょう。
火災保険に加入する際、最初に検討することは「保険の対象をどうするか」ということです。
火災保険には大きく分けて「建物を補償する保険」と「家財を補償する保険」があり、下図のように両方に加入するケース(1)もあれば、どちらか一方のみに加入するケース(2・3)もあります。
地震保険は、火災保険でカバーできない損害に備えて、火災保険とセットで加入する保険です。
お客様へ案内する際の注意点は、地震による損害の補償範囲に「家財」を含めたい場合、火災保険の補償範囲にも「家財」を含める必要がある点です。
たとえば、火災保険の補償範囲が建物のみで家財が対象外の場合、地震保険においても家財は補償されません。
お客様が地震による家財の損害に対する補償を検討されている場合、補償範囲を慎重に確認しましょう。
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家財に含まれるもの
以下は、火災保険や地震保険の「家財」に含まれるものの具体例です。
- 家具
例:ソファ、テーブル、証明、タンス - 家電
例:テレビ、掃除機、洗濯機 - 食器類、調理器具
- 衣類
- 貴金属、宝石、絵画、骨董品
家財の保険では、日常生活で使用するものから絵画や骨董品など趣味・娯楽として所有するものまで幅広く補償されます。
ただし、貴金属や骨董品など高価なものは「明記物件」として別途申請しなければなりません。
申請しておかないと、十分な補償を受けられない場合や、補償の対象外になってしまう場合があるため注意が必要です。
申請の基準は家財1つあたり30万円となっていることが多いですが、念のため保険会社のパンフレットを確認しておきましょう。
家財に含まれないもの
以下は、火災保険や地震保険の「家財」に含まれないものの具体例です。
- 商品、業務用の備品
- 自動車
- 船舶(ヨット、モーターボート、水上バイク)
- コンピューターやディスク等の媒体に記録されるプログラムやデータ
家財とは、マイホームや併用住宅(住宅と店舗等)に収用されているものを指します。居住用ではない、専用店舗に収用される備品等は対象外です。
その他、自動車、船舶、プログラムなども家財に含まれません。
また、家財ではなく「建物」に該当するものの具体例は、以下のとおりです。
- 冷暖房設備、調理台、ガス代(建物に備え付けられているもの)
- 門、塀、車庫
火災保険・地震保険の家財はどんな時に補償される?
火災保険や地震保険における家財は、建物と同じように火災や自然災害などを原因とする損害に対して幅広く補償されます。
【火災保険・地震保険の補償内容】
- 火災保険:火災、落雷、爆発、風災、雪災、水災、盗難、不測かつ突発的な事故
- 地震保険:地震、噴火、地震による火災・津波
【具体例】
- 火災によって家具が焼失してしまった
- 台風で窓ガラスが割れ、家電が壊れてしまった
- 台風による洪水で床上が浸水し、家具・家電が損害を受けた
- 子どもが不注意でテレビにぶつかり、テレビが壊れてしまった
ただし、補償範囲は加入するプランや保険会社によって異なります。
お客様へご案内する際は、お客様が希望する補償範囲とプランの内容が一致しているか確認しましょう。
火災保険・地震保険の家財補償は必要?検討時のポイント
火災保険・地震保険における家財補償は必須ではありません。
お客様が家財補償を不要と判断すれば、加入しないという選択肢もあります。
そうは言っても、地震大国で自然災害が多い日本では、いつ・どのような損害を受けるかわかりません。
1つの家財が数万円でも、一式を買い替えると家計に大きなダメージを与えます。
「高価な家財は持っていないから」とおっしゃる方にも、本当に必要ないかどうかを検討していただくことが大切です。
ここでは、家財保険を検討する際に知っておくべきポイントを解説します。
持ち家は建物・家財それぞれの加入が安心
持ち家の場合、建物・家財それぞれがお客様の財産です。
万が一に備えて双方を補償対象にしておくと安心でしょう。
ただし、持ち家といっても一戸建てとマンションでは考え方が異なります。
一戸建ては建物全体が所有者のものとなっているため、建物全体が補償の対象です。
一方、マンションでは専有部と共用部に分かれており、共用部に関しては管理組合がマンション全体に保険をかけています。
そのため、個人が加入する家財保険は専有部のみが補償の対象です。
マンションが保険の対象になる場合、共用部の補償内容や範囲についても事前に確認しておくと良いでしょう。
賃貸物件の借主も家財補償が必要
賃貸物件の場合、お客様が借主か貸主かで家財補償を検討する際のポイントが異なります。
お客様がオーナー様(貸主)であれば、家財補償は不要なケースが多いでしょう。
一方、お客様が借主の場合、家財のみを対象として保険に加入するケースが一般的です。
賃貸物件の借主が備える家財補償には、家財に対する補償だけでなく「借家人賠償責任補償」が付帯しています。
借家人賠償とは、事故で賃貸物件に損害を与えてしまった場合、貸主に対して損害賠償することです。
借主には、賃貸物件を退去する際、原状回復して引き渡す義務があります。
損害の程度にもよりますが、火災で建物の一部が焼失してしまった場合、修繕費用が高額になる可能性があります。
そのようなリスクに備えて、家財を対象とした保険への加入が必要です。
【火災保険・地震保険の家財補償】保険金額の目安・限度額は?
火災保険や地震保険の家財補償を検討する際、保険金額をいくらにするべきか悩む方は多いでしょう。
損害保険会社のパンフレットには、家族構成や世帯主の年齢別に家財補償に対する保険金額の目安が記載されています。そのような情報を参考にすることも選択肢の1つです。
【家財補償における保険金額の目安(例)】
独身 | 300万円 |
30歳前後(大人2人、子ども2人) | 880万円 |
35歳前後(大人2人、子ども1人) | 非公開1,000万円 |
ただし、上記の保険金額はあくまでも目安となり、必要な家財の補償額は人によって異なります。
ご自身で決めかねている方には保険会社の基準を参考としてお伝えし、その他の方には家中の家財を買い替えるとした場合の総額を検討していただく方法が無難です。
また、火災保険・地震保険における家財補償には以下の通り限度額が定められています。
【家財補償の限度額】
- 火災保険:損害保険会社が規定する評価額の範囲内
- 地震保険:火災保険の保険金額×30%~50%(最高1,000万円)
例:火災保険の保険金額が1,500万円の場合、地震保険の保険金額は450万円~750万円
ただし、上記はあくまでも保険金額の「限度額」です。
損害保険は、保険金額を上限に実際の損害額に対して保険金が支払われる仕組み。
本来の価値を超えた保険金額を設定しても意味がない点に注意が必要です。
「再調達価額」と「時価額」とは?
家財補償の保険金額は、再調達価額または時価額を基準に設定します。
【再調達価額・時価額の違い】
- 再調達価額:損害が生じた時、保険の対象と同じものを再取得するために必要な額。
- 時価額:再調達価額から経年劣化による価値の低下分を控除した額。貴金属や宝石、骨董品等は険対象と同等のものの市場流通価額。
どちらを基準にするかは損害保険会社によって異なるため、契約前に確認しておきましょう。
家財補償の保険金額は「再調達価額」による設定がベター
先述の通り、家財補償の保険金額を設定する際、再調達価額と時価額という2つの算出方法があります。
時価額は「再調達価額ー経年劣化による価値の低下分」であるため、再調達価額よりも保険金額が少なくなります。
十分な補償を受けるために、保険金額の設定基準は時価額ではなく再調達価額がベターです。
まとめ
家財補償は必須ではありません。
しかし、お客様によっては補償を持っておいた方が良いケースがあるため、本当に不要かどうかを検討していただくことは大切です。
たとえば、地震による損害は、建物よりも家財の方が補償されやすい傾向があります。
建物と同様に、家財も「全損」「大半損」「小半損」「一部損」といった損害の程度に応じて補償される仕組みです。
建物は、耐震基準が定められていることもあり、小規模な地震では損害の程度が小さく、補償を受けられないケースが多々あります。
一方、家財は家中の家具・家電、日用品等さまざまなものが対象となり、家財全体でどれくらい損害を受けたかを査定する仕組みです。
それぞれが安価なものでも、全体の損害を考慮すると大半損に該当するなど、想定以上に補償を受けられる場合があります。
このように、家財は建物よりも補償を受けやすく、建物部分の補填として検討するという考え方もできます。
「高価な家財を持っていないから」とおっしゃる方に対しても、そのような視点から家財補償をおすすめしてみてはいかがでしょうか。
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