住宅性能表示制度

投稿日 : 2020年01月02日/更新日 : 2023年06月05日

設計評価書の交付件数の推移

出典:国土交通省

住宅性能のモノサシとして活用が広がる

キーポイント

▶耐震性、省エネ性など10分野で分かりやすく

▶住宅購入者の目線に合わせて必須項目絞り込む

▶地震保険料の割引やローン金利優遇のメリット

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の柱の1つ。

構造の安定や火災時の安全など10分野33項目で住宅の性能を示す。同じモノサシで住宅性能が客観的に比較できるという利点から、ストック市場での活用も期待されている。

もともと新築住宅のみだったが、後に既存住宅も加わった。

表示する性能は、新築住宅では①構造の安定(耐震性)②火災時の安全③劣化の軽減(耐久性)④維持管理・更新への配慮⑤温熱環境・エネルギー消費量(省エネ性)⑥空気環境⑦光・視環境⑧音環境⑨高齢者等への配慮(バリアフリー性)⑩防犯――の10分野となる。

例えば、「構造の安定」の耐震等級では「等級3」が「極めて稀に(数百年に1回)発生する地震による力の1.5倍の力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度」など3つの等級に分けられている。

また、省エネ性の項目では、住宅の外皮(外壁、窓など)の断熱性能を等級1~4で、エネルギー消費量性能(外皮の断熱性能、暖冷房、給湯などの設備の省エネ性能や太陽光発電などの創エネを総合的に評価)を等級1~5でそれぞれ表示する。

消費者目線に合わせ必須項目を減らす

当初は9分野・27項目が必須とされていたが、住宅購入者の関心が高い項目に絞ろうと、2015年4月から4分野9項目に減らした。

必須分野は「構造の安定」と「劣化の軽減」「維持管理・更新への配慮」「温熱環境・エネルギー消費量」だけとなった。一方、「地盤の液状化に関する情報」を評価書に特記事項として記載することになった。

既存住宅は、音環境を除く9分野28項目と既存住宅だけを対象とした2項目が設定されている。

性能の評価については「評価方法基準」を国が定めており、第三者機関が実際の評価を行う。新築住宅は「設計住宅性能評価」と「建設住宅性能評価」の2段階でチェックし、結果を評価書としてそれぞれ交付する。

既存住宅は「建設住宅性能評価」だけだ。

住宅性能評価を受けた住宅は地震保険料の割引が設けられている。省エネ性、耐震性などに優れている住宅では、住宅ローン金利の引き下げ制度であるフラット35Sの利用が可能になるなどのメリットが用意されている。

新築住宅の評価書の交付は制度開始から累計で設計が337万戸(19年1月末まで)、建設は257万戸(同)とそれぞれ順調に伸びている。

これからどうなる?
既存住宅で伸び悩み、買主メリットを強調

新築住宅では順調に件数を伸ばしている住宅性能表示制度だが、既存住宅では思うように伸びていないのが現状だ。建設住宅性能評価書の交付は制度開始から累計で約5500戸にとどまる。基本性能や安全性が担保され、資産価値も適正に評価されやすいが、買主からの反応は鈍い。買主にメリットを分かりやすく説明し、関心を持ってもらうことが必要となりそうだ。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。