既存住宅売買瑕疵保険

投稿日 : 2020年01月08日/更新日 : 2023年06月06日

既存住宅売買瑕疵保険の制度の概要

既存住宅売買時の安全・安心を提供

キーポイント

▶既存住宅売買に伴う不安感を解消するための瑕疵保険

▶売買後の瑕疵に最大1000万円を保証

▶普及に遅れ、対策求められる

住宅瑕疵保険法人5社では、既存住宅の売買にまつわる消費者の不安感を解消するために既存住宅売買瑕疵保険を販売している。「宅建業者販売タイプ」と「個人間売買タイプ」の2商品がある。

既存住宅売買瑕疵保険(個人間売買)とは、既存住宅の売買後、瑕疵が見つかった場合、その補修費用を5年間、最大1000万円、もしくは1年間、最大500万円まで買い主に保証するもの。現在、既存住宅流通の約7割から8割が個人間売買と言われており、既存住宅流通市場の拡大に向けて、既存住宅売買瑕疵保険(個人間売買)の重要性が高まっている。

従来、既存住宅売買瑕疵保険を利用する際に、被保険者となる建築事務所などの検査機関が現場検査(インスペクション)を実施し、さらに保険法人がもう一度現場検査する必要があったが、(一社)住宅瑕疵担保責任保険協会は2013年に手続きの一部を省略できる仕組みを導入した。

既存住宅の現場検査については、国土交通省が2017年2月、「既存住宅状況調査技術者講習制度」を創設。一定の要件を満たす講習を国土交通大臣が登録し、講習実施機関が「既存住宅状況調査技術者講習登録規程」に従って講習を実施する。

既存住宅状況調査の結果、必要な部位が調査され、劣化事象等がないなど一定の条件を満たす場合には、既存住宅売買瑕疵保険(個人間売買タイプ 検査事業者コース)における住宅瑕疵担保責任保険法人の現場検査を省略できる。これにより、国は既存住宅状況調査を活用した既存住宅売買瑕疵保険への加入を促進していきたい考えだ。

手続きの煩雑さなどで普及が遅れる

一方で、既存住宅売買瑕疵保険は、手続きが煩雑といった理由でなかなか普及していないのが実情だ。

個人間の既存住宅売買では、売主、買主、仲介事業者の3者で取引が行われるケースが多く、検査機関は既存住宅売買の現場にいないことが一般的だ。その検査機関が被保険者となり、万が一、検査した案件で瑕疵が発生した場合、自己負担も求められるため、積極的に事業化を図ろうとする検査事業者は少ない。

また、既存住宅売買ではスピードも求められる。一般的に売主は「早く売りたい」という意向が強く、仲介事業者も積極的に既存住宅売買瑕疵保険を勧めるインセンティブが働きにくい面があることも指摘されている。

これからどうなる?
国の制度見直しで普及進むか

2019年10月に住宅瑕疵担保履行法の完全施行から10年が経過することを受け、国は既存住宅売買瑕疵保険の制度見直しを進めている。保険法人、瑕疵保険協会と連携し、既存住宅売買の流れを阻害しない付保手続きのあり方を検討している。こうした制度の見直しや宅建業者・売主への啓発活動の動きが進めば、これまで普及が遅れていた既存住宅売買瑕疵保険の普及が進む可能性がある。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。