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実家を相続した場合、相続税はいくら?税金がかからない条件・特例を解説
不動産業を営んでいると、不動産を相続した際にどうすればいいのかという相談を受けることがあります。
両親が暮らしていた実家を相続した場合、課税総額が大きいと相続税がかかることがあります。ただ、実際は各種特例を利用することで「相続税がかからないケース」も少なくありません。
今回は相続税がかからないケースを紹介しながら、実家や店舗などを相続した場合に相続税が控除される特例と実際の計算の流れを紹介します。
相続税がかからないケース
相続税は遺産総額が一定額を超えない場合には課税されません。相続人が配偶者であったり一定の条件を満たした宅地を相続したりした場合は特例が適用され、結果として相続税がかからないことも多いです。
ここでは相続税がかからないケースとして3つのパターンを解説します。
1.遺産総額が基礎控除以下の場合
相続した財産から非課税財産や葬式費用、借金などを差し引き、基礎控除額を引いた金額をもとに相続税が計算されます。
相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
夫が亡くなったケースで法定相続人が妻と子ども2人の場合、3,000万円+(600万円×3)=4,800万円が基礎控除額です。
このケースでは、相続財産の課税価格が4,800万円以下の場合には相続税はかかりません。
2.配偶者の税額軽減が適用される場合
相続人が配偶者の場合、配偶者の税額軽減という制度で相続税が減額されるケースがあります。
配偶者の婚姻期間に制限がなく、婚姻期間が1日でも適用されます。ただし、婚姻届けを出していないパートナーの場合には適用されません。
控除される金額は「課税価格の合計額×配偶者の法定相続分」または「1億6,000万円」のうち、いずれか多い方の金額です。
3.小規模宅地等の特例が適用される場合
被相続人が居住用または事業用に使用していた宅地を相続した場合、一定の条件をクリアすれば評価額が最大80%減額される制度です。
小規模宅地等の特例は適用できる敷地の面積に上限があり、それ以上の敷地部分について、減額措置はありません。ただ、適用範囲内であれば土地の評価額を大きく抑えることができます。
相続税が大きく減額になる「小規模宅地の特例」とは
小規模宅地の特例では相続した実家の土地の評価額が5,000万円なら、4,000万円が減額されます。ただし、適用される土地の区分ごとに減額率や条件が異なる点には注意が必要です。
対象となる宅地の減額率
小規模宅地の特例は、相続した土地の全てが対象になるとは限りません。区分ごとに限度面積と減額率が定められています。
区分 | 限度面積 | 減額率 |
自宅 | 330㎡ | 80% |
店舗 | 400㎡ | 80% |
故人・親族が大株主の会社 | 400㎡ | 80% |
駐車場 | 200㎡ | 50% |
対象になる宅地の種類と条件
対象になる宅地は大きく分けて「特定居住用宅地」「特定事業用宅地」「特定同族事業用宅地」の3つです。
それぞれの土地で小規模宅地の特例が適用される条件を紹介します。
特定居住用宅地
配偶者が取得する場合、条件なしで適用できます。
同居していない親族が取得する場合、いわゆる「家なき子特例」が適用されます。小規模宅地の特例条件を満たしており、相続開始以降も継続して居住し、相続税の申告期限まで対象の宅地を保持していると適用対象です。
被相続人に配偶者や同居の相続人がいない場合、相続開始前3年以内に日本国内にマイホームがない方が相続税の申告期限までその宅地を持ち続けていれば適用されます。
詳しくは以下のページを参照してください。
参考:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
特定事業用宅地
被相続人が店舗など事業を営んでいた宅地を、事業継承者である親族が取得し、相続税の申告期限まで宅地を持って同じ事業を継続している場合に適用されます。
被相続人と生計を一つにしていた親族が事業として利用していた宅地については、事業に利用していた宅地を親族が取得し、相続税の申告期限まで宅地を保持、事業を継承していれば適用の対象です。
特定同族事業用宅地
相続した親族が、相続税の申告期限まで所有して事業を続けた場合に適用されます。
相続税がかからないかを調べる方法
実際に「相続税がかかるのか、かからないのか」は家庭ごとに状況が異なります。ここでは相続税がかからないか調べる方法を解説します。
1.相続人を確認する
相続税の計算には、財産を相続する方が誰なのかを確定させる必要があります。
そのために確かめるのは以下の2点です。
- 法定相続人を確定する
- 遺言がないか確かめる
法定相続人を確定させる
法定相続人とは、民法によって規定された一定の順序に従って相続人となる方です。配偶者は必ず相続人で、配偶者と血族相続人が共同で相続します。
養子を含む子供・孫(直系卑属)は第1順位です。子どもがいれば通常は「配偶者+子ども」が法定相続人になります。
子どもがいない家庭は両親(直系尊属)が、両親がいない場合は祖父母が第2順位として相続人になります。
直系卑属・尊属共にいない場合、被相続人(亡くなった人)の兄弟姉妹が第3順位として法定相続人になります。
どの順位の人が法定相続人になるかによって、法定相続の割合が異なる点に注意が必要です。
- 配偶者と直系卑属:配偶者と直系卑属で1/2ずつ
- 配偶者と直系尊属:配偶者が2/3、直系尊属が1/3
- 配偶者と兄弟姉妹;配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4
ちなみに子である相続人が相続の前に亡くなっている場合、相続人の子(被相続人から見て孫)が相続人になります(代襲相続といいます)。
遺言がないか確かめる
遺言が残っている場合、法定相続より遺言が優先されます。
法定相続分に従った遺産分割協議等の方法によらずに遺産分割の方法を定めることもできるため、最低限の取り分(遺留分)を除き、遺言の配分に従った資産が承継されます。
ただし、遺言書の内容を勝手に確認することはできません。遺言書は被相続人が自分で作成した自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で「検認の申し立て」が必要です。勝手に遺言書を開封した場合、5万円以下の過料が科されます。
2.相続財産を確定させる
相続財産を確定させるためには相続財産と債務をリストアップしなければいけません。
資産、負債となる主な対象は以下のとおりです。
資産になるもの | 負債になるもの |
・不動産(宅地や農地などの土地、家などの建物)
・動産(自動車、美術品、貴金属など) ・現金、預貯金 ・有価証券(株式や債券など) |
・借入金、未払金(住宅ローン、未払家賃など)
・買掛金 ・連帯債務、保証債務 ・損害賠償の債務 ・未払いになった税金(所得税、住民税など) |
3.相続税を計算する
ここでは相続税を計算する流れを紹介します。
実際の遺産額を求める
相続税を算出するためには、相続人ごとに課税価格を算出します。相続により取得した土地や建物から非課税財産、現預金などから者借金や未払いの債務、葬儀にかかる費用などを引いたものが相続税の対象となる実際の遺産額です。
相続財産 - 非課税財産 - 債務 = 各相続人の課税価格 |
課税対象遺産額を決める
各相続人の実際の遺産額が算出されたらそれを合計し、そこから基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を引いた額が、課税遺産総額です。
各相続人の課税価格を合計した金額 - 基礎控除 = 課税遺産総額 |
相続税の総額を求める
次にそれを法定相続人が法定相続分どおりに相続したと想定して、各相続人の取得金額を算出します。
課税遺産総額 × 各相続人の法定相続分 = 各相続人の取得金額 |
実際の相続税額を求める
取得金額ごとに決まっている税率や控除額をもとに、各相続人の相続税額を計算します。
各相続人の取得金額 × 税率 - 控除額 = 相続人ごとの相続税額 |
相続税の総額を求めたら、実際の相続の割合で各相続人の相続額を確定させます。実際の相続割合が妻50%、長男25%、次男25%で相続税額が1,000万円の場合、妻500万円、長男と次男で各250万円がそれぞれに課税される相続税額ということです。
以下の記事では、相続性の計算の基本についてさらに詳細に解説しています。相続税の計算方法について知りたい方は、こちらも参考にしてください。
あわせて読みたい:相続税の計算方法の基本|複雑な税制・宅建の必須知識をわかりやすく整理
まとめ
今回は相続税がかからないケースや特例の内容、実際の相続税計算の流れを紹介しました。
実家を相続したとしても「小規模宅地の特例」などを利用することで相続税がかからないこともあります。ご相談を受けた場合は、小規模宅地の特例が受けられるかどうかを確認してみてください。
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