ホームインスペクション

投稿日 : 2020年01月07日/更新日 : 2023年06月06日

既存住宅状況調査技術者講習制度の概要

出典:国土交通省

建物の現況調査で安心な既存住宅の取引を

キーポイント

▶既存住宅売買時に第三者が建物の現況を調査

▶安心して既存住宅を取得できる環境を整備

▶宅建業法の改正で仲介時の情報提供などが必要に

既存住宅市場の拡大に向けた大きな課題のひとつが、より安心して既存住宅を取得できる環境の整備である。既存住宅は新築住宅よりも購入後の瑕疵があるのではないかと不安に思う人も多く、市場拡大を妨げているという指摘もある。

米国では、こうした不安を解消するために、既存住宅の売買時に専門知識や技能を身に付けたホームインスペクター(住宅診断士)が、住宅の現況(劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所など)を調査し、その結果を買主に報告することが一般的である。

既存住宅市場の拡大に向けて、わが国でもこうした米国のようなインスペクションの必要性が高まっている。そこで、国土交通省は、2013年6月に「既存住宅インスペクションガイドライン」を策定し、インスペクションの日本での本格的な普及へ向けた取り組みを開始した。

宅建業法の改正で市場拡大への期待高まる

さらに、消費者が安心して既存住宅を取引できる環境を整えようと、18年4月に宅建業法を改正。これの改正により、不動産仲介事業者は不動産仲介時に、売主に対しインスペクションを実施するか確認し、実施を希望する場合は斡旋することを義務付けた。また、買主に対してもインスペクション実施の有無を説明することも義務付けており、宅建業法の改正により、インスペクション市場の拡大に期待が高まっている。

宅建業法の改正を機に、17年2月、国はインスペクターの質を確保するため、「既存住宅状況調査技術者講習制度」を新たに創設している。これまでインスペクターには明確な規定がなかったが、先述の宅建業法の改正の中で、対象となるインスペクションは、既存住宅状況調査技術者講習を受講した建築士とされた。

同講習制度では国の登録を受けた講習機関が講義・修了考査を実施する。19年4月25日時点で、(一社)住宅瑕疵担保責任保険協会、(公社)日本建築士会連合会、(一社)全日本ハウスインスペクター協会、(一社)日本木造住宅産業協会、(一社)日本建築士事務所協会連合会の5つの講習機関が国により登録されている。

講義・修了考査の内容については、国の「インスペクション・ガイドライン」と既存住宅瑕疵保険の検査基準を参考として、既存住宅状況調査の方法・留意点等とする。また、講習機関は講習を受けたインスペクターの名簿のホームページでの公開や、消費者からのインスペクションについての相談を受け付ける。

これからどうなる?
普及には制度の周知不可欠

インスペクションのさらなる普及には制度の周知を図っていくことが重要だ。国土交通省がインスペクションの実施実績がある仲介事業者に行ったアンケートによると、実施上の課題として最も多かったのは「制度がまだ認知されていない」(76.7%)だった。インスペクションの実施によるメリットや成功事例などを1つでも多く仲介事業者や、売主・買主に分かりやすく伝えることが重要となる。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。