日本版CCRCが目指す基本方針(基本コンセプト)
ヒートショック
高齢者の「不慮の溺死及び溺死」による死亡者数の年次推移
出典:消費者省
冬季に多発する入浴中の事故に注意
キーポイント
▶高齢者の入浴中の事故は増加傾向
▶居室間の急激な温度変化が引き金に
▶室温のバリアフリー化対策が基本
家庭内での入浴事故が増加傾向にある。消費者庁が、厚生労働省の「人口動態調査」をもとにまとめた高齢者の「不慮の溺死および溺死」による死亡者数の推移を見ると、2011年以降、死亡者数は4000人台を突破し、増加傾向にある。特にその約7割を占める「家」、「居住施設」の「浴槽」におけるものだけでも、「交通事故」による死亡者数より多くなっている。これほどまでに浴室での事故死が多い理由の一つとして、ヒートショックが挙げられる。ヒートショックとは、居室間の急激な温度変化により血圧が激しく変化する現象のこと。場合によっては、心筋梗塞や脳血管障害を引き起こし、死に至るケースもある。とくに冬の寒い時期に温度が低下した脱衣室から温まった浴室に移動し、入浴するとヒートショックが起こりやすくなる。実際に、消費者庁が東京消防庁の「救急搬送データ」をもとにまとめた、高齢者の「おぼれる」事故の発生月別データをみると、冬季に多く発生している傾向がみられ、11月から3月にかけて年間の事故数全体の約7割が発生している。
設備メーカーはヒートショック対策を強化
住宅内であまりにも大きな温度差があると、ヒートショックを引き起こすリスクが高まる。それだけに、断熱・気密性能を高めるといった対策を施し、温度ムラのない住環境を創造する必要がある。しかし、ヒートショックで主に亡くなる高齢者が暮らす築数十年を越える既存住宅では、十分な断熱性能が望めないことも多い。このため、給湯・空調を中心とする住宅設備機器メーカーなどはヒートショック対策として、浴室暖房などの提案に力を入れている。ノーリツはヒートショックに配慮した高効率ガス温水暖房付ふろ給湯器「GTH‐C2450‐1/C2451‐1」シリーズの提案を強化。浴室が低温の時には、台所リモコンの液晶画面上に警告表示を出し、ワンタッチで浴室暖房の運転を開始できるようにすることで、ヒートショックを予防する。ダイキン工業も脱衣所などの非居室用エアコン「ココタス」の販売強化で、ヒートショック対策や快適性の向上に取り組む。小型で特にスペースの狭い廊下でも、照明などに干渉することなく設置することができる。
これからどうなる?
適切な温熱環境がヒートショックを抑制
エビデンスの蓄積、発信が重要に
ヒートショックのリスク低減に向け、科学的なエビデンスの積み重ね、情報発信していくことが重要になっていきそうだ。ガス供給事業者や住宅関連団体などにより2014年に設立された暮らし創造研究会は、断熱・気密性能が異なる3つの住戸を用いて60~79歳の高齢者57人に一泊してもらい、温熱指標や健康指標の違いなどに関する調査を行った調査を行った。その結果、断熱・気密改修により室温が高まり、それらの住戸での被験者の最高血圧は断熱・気密性能の悪い住戸と比べて最も低い結果となった。暮らし創造研究会では、「健康」と「省エネ」をテーマに研究を継続し、その成果をもとに、適切な設備と暮らし方の普及を目指す考えだ。
Housing Tribune編集部(創樹社)提供
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