地盤対策

投稿日 : 2019年12月23日/更新日 : 2023年06月06日


テノックスとJBサポートが共同開発したピュアパイル工法。従来の柱状改良工法の長所を残しつつ、強度のバラつきや、残土処分にかかる費用といった同工法の課題を克服した

安全・安心な住まいづくりは地盤対策から

キーポイント

▶トラブル増加で業者任せでは済まされない状況に

▶より精度を高めた地盤調査・解析法が登場

▶柱状改良に代わる新たな地盤補強工法も脚光

2016年4月には熊本地震の発生により地盤に起因するトラブルや液状化被害などが拡大した。地震が起こるたびに地盤トラブルが表面化する中で、専門家だけでなく住宅事業者や一般消費者の間でも地盤への関心が高まってきており、住宅事業者にとっては「地盤のことは知らない」では済まされないという状況が生まれつつある。

地盤調査・解析方法、地盤補強工法などが進化

地盤事業者からは、より信頼性を高めた地盤の調査・解析、補強工法などの提案が相次いでいる。ここにきて目覚しい進化を遂げているのが地盤の調査・解析技術だ。

ジャパンホームシールドは、10年に独自に開発した「スクリュードライバーサウンディング(SDS)試験法」の提案を開始した。

戸建て住宅の地盤調査試験として現在主流を占めているスウェーデン式サウンディング(SWS)試験では、地盤がどんな土で構成されているのか、調査員が感覚を頼りに感触や音から推定してきたが、SDS試験では、SWS試験のデータ結果にロッドを回す力や1回転あたりの沈下量、周辺の地形などを加味して地盤の状況を分析することで、より精度を高めた土質判定ができるようになった。

年間約40万棟の戸建住宅が建つなかで、地盤の強度不足から、約10万棟で地盤補強が行われている。地盤補強として主流を占めるのは、セメント系固化材と水を混ぜたセメントミルクを軟弱地盤に注入し、土と撹拌混合しながら柱体を形成する柱状改良工法だが、比較的安価で適応範囲が広いというメリットがある一方で、「強度にばらつきが出る」「残土処理の手間、コストがかかる」といった課題が指摘されている。

こうしたなかで、柱状改良工法に代わる補強工法として頭角を現し始めているのが「ピュアパイル工法」だ。基礎工事専門のテノックスとJBサポートが共同開発し、ピュアパイル工法普及振興会を設立し、指定施工会社を技術・営業面でサポートしながら同工法の普及を目指す。同工法では、比較的安価で対応範囲が広いという従来の柱状改良工法の長所を残しつつ、強度のバラつきや、残土処分にかかる費用といった同工法の課題を克服。専用の掘削ロッドを回転させながら支持基盤まで掘削後、セメントミルクを排出しながら掘削ロッドを引き上げて柱体をつくるため、従来の柱状改良工法のように現地の土とセメントを撹拌して固める必要がなく、柱体の強度性能が安定する。柱状改良工法に比べて柱体の強度性能は10倍以上にもなる。

こうした強みが支持され、ピュアパイル工法の施工実績は急増している。18年度の施工実績は1万2000棟、累計施工実績は5万3350棟となった。

これからどうなる?
消費者の判断材料として求められる液状化リスクの情報提供

住宅地盤に対する社会的な関心の高まりを受けて、消費者が安心して家を建てるための様々な提案がさらに活発化してきていきそうだ。国土交通省では東日本大震災での液状化被害を受け、2015年4月、住宅性能表示制度を見直し、液状化に関する参考情報を提供する仕組みを導入。これに伴い、液状化対策に関する調査や対策工法の提案、保証などをワンストップで提供するサービスなども出てきている。住宅事業者や消費者も、地盤土壌対策に関して確かな目を持つことが求められている。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。