ホームインスペクション
既存住宅状況調査技術者講習制度の概要 出典:国土交通省 建物の現況調査で安心な既存住宅の取引を
パナソニックホームズが提案を強化する「防災持続力を備える家」では、水道管の一部として貯水タンクを備える
キーポイント
▶巨大地震発生で避難所に収容しきれない懸念も
▶平常時と災害時という2つの垣根をなくす
▶フェーズフリーを意識した住まい提案も
内閣府の試算によると、首都圏直下型地震が起きた場合、避難者数(最大)は720万人、住宅被害(全壊被害および焼失)は最大約61万戸、南海トラフ巨大地震が起きた場合、避難者数(同)は約210万人~430万人、住宅被害(同)は最大約240万戸に上るとしている。これだけの規模の人や住宅が被害を受ければ、当然、被災者全員を避難所に収容できない懸念も出てくる。
こうした中で注目されているのが「フェーズフリー」という考え方だ。大きな災害が起こった直後は、生活者の間で防災への意識が高まるが、時間が経ち、災害の記憶が薄れるとともに防災意識も薄れていく。
近年、家を新築する際に、耐震性能や防火性能を求める人が増えているが、その一方で、常に防災を意識して日常を暮らす人は多くないだろう。そこで発想を変え、平常時と災害時という2つの時間(=フェーズ)について垣根をなくしてフリーにして、平常時・災害時という2つのフェーズに関わらず、常に適切な生活の質を確保しようとする新しい考え方がフェーズフリーだ。防災のための特別な対策ではなく、普段の暮らしが豊かで快適になり、さらに災害時にも役立つ。
ここにきて、フェーズフリーを意識した住宅新商品の提案も活発化してきている。パナソニック ホームズは、19年4月、「防災持続力を備える家」を打ち出した。今後、戸建て住宅だけでなく集合住宅にも展開していく。
ハード面では、超高層ビルの制震技術「座屈拘束技術」を住宅用にダウンサイズしたアタックダンパーを採用。阪神・淡路大震災の4.3倍の地震波でも倒壊せず、繰り返す大地震でも住み続けられる。また、太陽光発電と蓄電池の創築連携により停電時でも約3日分の電力を供給する。さらにエネファームを活用することで、計11日分の電力供給が可能だ。
約43ℓの「貯水タンク」は家族4人の3日分の飲料水(36ℓ)を確保する。水道管の一部として設置するため、断水時に新鮮な水を使うことができる。トイレなどの生活用水については、エコキュートの約360ℓ、エネファームの約130ℓを活用することもできる。
“防災持続力”には、パナソニックが18年に発売した「カサート アーバン」で導入した「HOME X」が大きな効果を発揮する。例えば、台風の場合など気象情報と連動して自動でシャッターを閉鎖し、自動で蓄電して停電に備える。また、専用サイトを通じて備蓄品の入替えや災害後の設備復旧手順などの情報も提供する。同社ではサードパーティとのサービス連携も含め、将来的にはサービス拡張も検討する。これらの“備え”は、居住者をさりげなくサポートし、災害後も暮らし続けることができる安心を提供する。
フェーズフリー住宅を実現する上で、ハード面だけなくソフト面の対策も重要になってくる。災害時に自宅が無事で避難所としての機能を維持できても、家族だけで家に閉じこもっていては、不安は募る一方だろう。災害時だからこそ、隣近所と協力し合い、助け合うことが結果として不安感の解消にもつながるはずだ。ただ、こうした地域のコミュニティづくりは平時からの意識づけや訓練などが重要だ。災害時に機能するソフト面の対策を促していくことは住宅事業者の重要な役割になっていきそうだ。
Housing Tribune編集部(創樹社)提供
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