既存住宅流通市場

投稿日 : 2019年12月25日/更新日 : 2023年06月05日

出典:東日本レインズ

市場倍増に向け、市場整備が急ピッチ

キーポイント

▶日本の既存住宅の流通シェアは欧米の約6分の1

▶首都圏を中心に市場拡大の兆し

▶既存住宅の不安を取り除く取り組みも

日本の全住宅流通量(既存流通+新築着工)に占める既存住宅の流通シェアは約14.7%(2013年時点)であり、欧米諸国と比べると6分の1から5分の1という低い水準にある。

言い換えると、日本の住宅市場は新築マーケットに極度に依存している。

今後、人口や世帯数が減少するなかで、新築市場が縮小していくと予想されている。それだけに、既存住宅市場を活性化させ、一度持家を取得したら「終わり」ではなく、ライフスタイルの変化に応じて自由に住替えることができる環境を整備する必要がある。

国が策定した住生活基本計画では、既存住宅流通市場を13年の4兆円から25年までに8兆円に倍増させるという計画を打ち出している。

この目標をクリアするために、日本でも既存住宅流通市場を活性化するための市場環境の整備を急ピッチで進めている。

例えば、既存住宅流通市場の活性化を阻む大きな要因である建物評価の見直しを行っており、土地の価格だけでなく、建物価値も適切に評価される環境を創出しようとしている。

現状では建物価値は20年、30年でゼロとなってしまう。そのため、購入した時よりも安い値段で売却され、結果として既存住宅の売買を阻害しており、建物評価を見直すことで、こうした状況にメスを入れようとしている。

また、既存住宅の不安を解消するために、既存住宅に関する情報提供の仕組みも再構築しようとしている。既存住宅流通市場の先進国である米国並みの既存住宅に関する情報を提供するシステムの構築に向けた取り組みを進めている。

首都圏などでは既存住宅の取引量が増加傾向に

こうした国の取り組みもあり、徐々に既存住宅流通市場が活性化しつつある。(公財)東日本不動産流通機構が発表した「首都圏不動産流通市場の動向(18年)」によると、18年の首都圏における既存住宅の成約件数は、マンション、戸建てともに好調な状況にある。

特にマンションの成約件数は3万7217件で、3年連続で3万7千件台前半の高水準を維持している。戸建て住宅については、同0.2%減の1万2718件であるが、高水準といえる。

また、既存住宅の価格が上昇している。マンションでは成約物件の1㎡当たり単価は6年連続上昇、6年で35.1%上昇した。戸建についても4年連続で上昇している。

これからどうなる?
既存住宅の不安取り除き市場拡大へ

一定の性能を満たした既存住宅を業界団体などが主体となり認定する制度「安心R住宅」や、既存住宅仲介時のインスペクション説明義務化がスタートした。これにより、既存住宅流通を妨げる大きな要因とされていた既存住宅に対する“不安”が取り除かれることで、今後、既存住宅は確実に新築とならぶ住まいの選択肢のひとつになり、市場がさらに拡大していく可能性がある。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。