電気・ガスの小売り自由化

投稿日 : 2019年12月17日/更新日 : 2023年06月05日

エネルギーの小売りが全面的に自由化

キーポイント

▶電気・ガスの小売りが全面自由化

▶電気は新規参入者のシェアが14.1%に

▶多様な事業者が強みを活かしたサービスを展開

国のエネルギーシステム改革の一環として、2016年に電気の小売り全面自由化が、翌17年から都市ガスの小売り自由化がスタートした。

電力については、これまでも「特定規模電気事業者」、いわゆる新電力として電力を小売りすることが可能であったが、契約電力が50kW以上の場合に限られ、50kW未満の戸建や小規模建築については自由化されていなかった。全面自由化により従来の大手電力会社・新電力という枠組みが撤廃され、小売り電力事業者は登録制となった。

小売り全面自由化により、さまざまな業界から多くの事業者が市場に参入した。通信事業者、住宅関連事業者、大手の電力・ガス事業者などが登録を行い、事業を開始している。小売電気事業者の登録数は18年12月時点で543者、18年9月現在の新規参入者のシェアは約14.1%(販売電力量ベース)となっている。

一方、ガスについては、導管を通じて都市ガスを供給する事業者「一般ガス事業者」が「ガス小売り事業者」、「一般ガス導管事業者」、「ガス製造事業者」の類型に分けられ、それぞれの事業について届出や許可が必要となった。

従来、一般ガス事業者がガス供給を地域で独占していたが登録を受けることで誰でも参入できる。

新たに自由化された部門の主な需要である家庭用における新規参入者のシェアは18年8月現在で3.9%(ガス販売量ベース)であり、電気事業者に比べるとやや低調といえる。主な新規参入者はLNG及びその輸入設備を持つ旧一般電気事業者が中心であり、非エネルギー系の事業者の参入は限定的となっている。

さまざまな業種の事業者が強みを活かしたサービス

住宅業界では、ミサワホームが小売電気事業者として登録、同社オーナーを対象に「ミサワでんき」を提供、大和ハウス工業は子会社のダイワライフネクストが大和ライフエナジアを設立し同事業者登録を行い、同社が管理するマンション管理組合に対して共用部向け「エナジアでんき」の販売を行っている。

電気・ガスの小売り自由化によりさまざまな業種の事業者が参入したことで、各事業者の強みを活かしたサービスが提供されている。

ガスとのセットだけでなく、通信とのセット、クーポンやポイントの付与などである。

今後、こうした生活インフラを核とした総合的なサービス提供はさらに進むと考えられる。

競争政策上の個別課題


出典:電力・ガス取引監視等委員会「競争的な電力・ガス市場研究会 中間論点整理」

これからどうなる?
自由化市場にセット割引など3点の課題

2018年8月、電力・ガス取引監視等委員会が「競争的な電力・ガス市場研究会」の報告書(中間論点整理)をまとめた。自由化のメリットを最大化するための規制運用上の課題などについての議論をまとめたものである。

小売市場の政策上の課題としては、長期契約、差別対価、セット割引の3点をあげ、適切な規制が必要であるとした。今後、具体の政策措置が実行されることで、さらなる自由競争が進みそうだ。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。