CLT

投稿日 : 2019年12月29日/更新日 : 2023年06月06日


福山弘構造デザインが設計を手掛けた安永寺本堂。リング状のCLTが、構造、意匠の重要な役割を果たす

「木の塊」が木造建築の可能性を拡大

キーポイント

▶ヨーロッパでCLT高層建築が増加

▶日本では2016年にCLT関連告示が施行

▶CLTを使いやすくする環境整備が進む

CLT(直交集成板)とは、人工乾燥した挽き板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着した大型面材。層を厚くすることで、用途や要求強度に応じた材料を製造できる。「木の塊」ともいえる建築材料だ。木材の特異な性質である伸び、縮みが極めて少なく、伸縮が少ないコンクリートや鉄などとの調和も図りやすいため、異なる材料や工法との融合にも適している。

1990年代から、ヨーロッパにおいて、CLTなどの製材品をベースにした新商品が出始め、00年以降、CLTを用いた高層木造建築などの建設事例が増えている。CLT研究の第一人者である、オーストリアのグラーツ工科大学のシックホーファー教授らがまとめた調査によると13年に55万㎥だった世界のCLT製造量は、16年に77㎥、18年は100万㎥を突破した。

18年CLT製造量は16年比3倍

日本においては、国土交通省が、16年3、4月に、CLTの強度基準や一般的な設計基準基準に基づく告示を施行し、建築基準法上でCLTを用いた建築物の一般設計法を定めた。

CLT関連の告示制定から約3年が経ち、住宅分野、非住宅分野でCLTを採用する動きも広がっている。18年6月までに約180件のCLT建築(バス停やトイレなども含む)が建てられた。また、CLT製造量も着実に増えてきている。

(一社)日本CLT協会によると、CLT製造量は、16年の5000㎥から18年には約3倍の1万8000㎥まで拡大した。全国でCLT工場が増え、19年2月時点でCLTのJAS認定工場は、全国に9工場あり、各工場がより大きな幅や寸法のパネルを製造できるように、設備投資を進めている。

さらにCLTをより使いやすくするためのCLT関連告示の改正も進む。

19年3月にも、改正告示が施行され、構造計算に必要な基準強度が明確化されているスギに加えて、新たにヒノキ、カラマツの基準強度が明確化された。スギ以外の生産地でも地元の木材でCLTが製造できるようになるほか、より強度の強いヒノキ、カラマツのCLTが使えるようになることで、中高層建築でCLTの活用が進み、設計の自由度が高まることが期待される。

同協会では、国土交通省などに対して継続して告示改正を要望している。将来的には建築基準法で定められたルート1にあたる比較的容易な許容応力度計算で構造計算が行えるようになり、設計の自由度、建築できる範囲が広がっていくことが期待されている。

これからどうなる?
建築を面白くするCLTの使い方の蓄積、共有が重要に

新しい発想でCLTを活用して「建築を合理化する」、「独自の建築デザインを追求する」といった動きも出てきている。CLTを活用した事業者などからは、「コストが高く、補助金がなければ使うことは難しい」、「他の構造材でも代替できるため、現時点で、高いコストをかけてまでCLTを使う必要はなかった」といった厳しい声もある。CLTだからできることのノウハウや建築を面白くするCLTの使い方などを業界全体で蓄積し共有していくことも、普及に向け重要になっていきそうだ。

Housing Tribune編集部(創樹社)提供

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。