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生産緑地の2022年問題
生産緑地の2022年問題への対応が求められる。写真は都内の生産緑地
生産緑地の指定解除に懸念の声
キーポイント
▶2022年、大量の生産緑地が指定解除
▶宅地化で不動産価格の暴落の懸念
▶アンケートでは、8割が生産緑地指定を継続
1992年に導入された生産緑地制度が大きな岐路を迎えている。22年には多くの生産緑地が指定期間30年の満期を迎え、農地並みの税制優遇措置が受けられなくなる。これにより所有する都市農家が一斉に地元自治体に買取りの申請を行い、やがて宅地として不動産市場に売り出され、不動産価格が暴落するのではないかという、いわゆる「生産緑地の2022年問題」への注目度が増してきている。
自治体は農家からの生産緑地の買取りの申出があると、時価で買い取らなければならないことになっているが、実際には財政難を理由に買い取られることはほとんどなく、その多くは生産緑地としての制限が解除され、宅地転用されるとみられている。
国は制度改正で生産緑地の保全・活用促す
一方、国は都市政策上、都市農業を再評価し、16年5月に閣議決定した都市農業振興基本計画において「農地が民有の緑地として適切に管理されることが持続可能な都市経営のために重要」と明記するなど、都市の貴重な資源として都市農地を保全・利活用する方向へ舵を切り制度改正を進めている。
17年には、生産緑地法を改正し、都市内の農地を保全・活用しやすくするとともに、用途地域として新たに「田園住居地域」の創設も盛り込んだ。農地と低層住宅が調和する計画的な都市開発を促進していく。
生産緑地の面積要件の引き下げも行った。従来の制度では、生産緑地の規模要件が一団で500㎡以上とされていたため、要件を満たさない小規模な農地は、農家に営農の意思があっても保全対象とならなかった。そこで今回の制度改正では、自治体が条例を定めれば、生産緑地指定の規模要件を「300㎡以上」への引き下げも可能になった。併せて同一、または隣接する街区内に複数の農地がある場合、一団の農地とみなして指定するが可能になった。小さな都市農地も保全していくための措置だ。
さらに、17年の生産緑地制度の法改正では、「特定生産緑地制度」が新たに創設。生産緑地指定から30年が経過する前に、所有者の意向により市町村から特定生産緑地の指定を受けることで、指定の期限が10年間延期され、固定資産税の優遇措置や相続税の納税猶予措置などを継続して受けることが可能になった。
これからどうなる?
先行きは不透明 新制度の周知が鍵
国土交通省は、2018年1月、東京23区で特に生産緑地が多い練馬区、世田谷区の農家を対象に、生産緑地の指定意向を把握する目的でアンケート調査を実施している。所有する生産緑地について、30年の指定期限が過ぎた場合、10年間の営農継続を条件に新制度の「特定生産緑地」として新たに指定延長するかを尋ねたところ、約8割の農家が特定生産緑地の指定を受け、農業を続けていく意向を示した。国の施策が効いているとも言えるだけに、いかに制度の周知を図っていけるかが、2022年問題への対策の鍵を握りそうだ。
Housing Tribune編集部(創樹社)提供
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