固都税の精算とは|日割り計算の方法と実務上の注意点を解説します

投稿日 : 2020年05月25日/更新日 : 2023年06月03日

固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日の所有者が支払うことが原則になっています。しかし、契約者間の不公平感をなくす目的から、実務では原則とは違った処理をするのが通例です。

スムーズに取引を進めるためにも、売主様・買主様が納得する説明を心がけていきましょう。

今回は、固都税の支払いにおける原則と実務上の処理の違いを解説します。さらに、地域によっても変わる精算方法の違いも併せて解説します。

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固都税とは


画像引用:福岡市|よくある質問Q&A

固都税とは、「固定資産税」「都市計画税」の2つの税を合わせて呼ぶ際の略称です。

いずれも、不動産を所有していると納税の義務があります。不動産を持つ全員に納税義務がある固定資産税に対し、都市計画税は『市街化区域』の中に建築された建物の所有者に納税の義務が発生します。

不動産売買契約書にある「公租公課等の分担」とは

本来の意味の公租公課とは、国や自治体に納めるべき税金全般のことです。「公租」が税金を指し、「公課」が税金に限らない負担金を指しています。

一方で、不動産を売買する時に作成する不動産売買契約書には、「公租公課等の分担」という項目があります。

この場合の公租公課とは、いわゆる固都税(固定資産税・都市計画税)を指した内容です。

原則として売主様側が納める固定資産税・都市計画税ですが、公平を期すために負担を分担することが可能です。

この取り決めを不動産売買契約書に落とし込んだものが、「公租公課等の分担」になります。

原則:「1月1日時点での所有者」が支払う

固都税を納税するのは、原則として「その年の1月1日時点の所有者」です。つまり多くの場合は、売主様の側に納税の義務が発生します。

すでに自分の所有ではない不動産であっても納税しなくてはならないことから、不公平感を感じてしまう売主様もいます。

そのため、実務上では、「公租公課等の分担」を不動産売買契約書に定め、原則とは違う取り決めを行うことが一般的です。

実務:引き渡し日を基準に契約者間で折半する

固定資産税や都市計画税においては、使用している人(所有権を持っている人)が納税する方が公平です。

そのため、「引き渡し完了日」までの税金を売主様側、その日以降の税金を買主様側が折半して支払うように取り決めを行うことがあります。

これを「固都税の精算」といいます。

なお、折半した金額をそれぞれが自治体へ納税するわけではありません。自治体からすれば、納税義務者はあくまで原則通り売主様です。

買主様は固定資産税を支払う名目のもとで、売買金額を上乗せして支払います。こうすることによって実質的に固定資産税を折半しているのです。

固都税の精算方法

【令和2年5月1日に不動産を引き渡す】このような内容で売買契約を結んだとします。

売主様の側からみると、4月30日までしか建物に住むことができません。しかし、それでも固定資産税の納税通知書は売主に届きます。原則として1月1日時点の所有者に納税の義務があるからです。

ちなみに、売買契約を令和元年の12月に結んでいたとしても、令和2年の納税通知書は売主様の元に届きます。

所有権の移転は、実際の引き渡しがあって初めて買主様に移るからです。

実務では、精算の起算日を1月1日または4月1日に設定して、精算の計算を行います。

関東と関西で精算日が変わる

起算日が1月1日と4月1日に分かれているのは、日本の中でも地区によって起算日の慣行が違うことによります。

関東の慣行では、1月1日から12月31日の期間で精算を行います。

逆に関西地方においては、4月1日から3月31日の間で精算を行うのです。

精算額は365日の日割り計算

地域の慣行による起算日を調べたら、実態にどのように精算するか精算をすることができます。

精算は1年を365日として、引き渡し日を基準に日割りで計算します。

先ほどの【5月1日に引き渡し】を例にして計算してみましょう。固定資産税・都市計画税の前年の金額が20万円だったと仮定します。

【1月1日を起算日とした場合(関東の慣行)】

売主様の負担:1月1日~4月30日=120日:20万円×120日/365日=65,753円

買主様の負担:5月1日~12月31日=245日:20万円×245日/365日=134,247円

【4月1日を起算日とした場合(関西の慣行)】

売主様の負担:4月1日~4月30日=30日:20万円×30日/365日=16,438円

買主様の負担:5月1日~3月31日=335日:20万円×335日/365日=183,562円

精算方法は3種類

金額が判明したら、実際の精算方法の選択に移ります。

通常、固都税の納税通知書は5月あたりに送られてくるのが通例です。そのため、【1月~5月】と【6月~12月】のどちらの時期に引き渡しをしたのかによって、精算の方法が変わってきます。

1月~5月までの精算方法

1月~5月に引き渡し日を設定した場合は、以下の3つの精算方法があります。

  • 納税通知書が届いてから精算
  • 前年の固都税額を基に精算し、実際に届いた納税通知書で金額が違ったら再精算
  • 前年の固都税額を基に清算し、再精算はしない

どのやり方で精算を行うかは、売主様と買主様の間で自由に取り決め可能です。

ただ一般的には買主様も売主様も不動産手続きに詳しくないため、専門家が間に入って最適なやり方を提案します。

6月~12月までの精算方法

この場合は、すでに売主様の手元に固都税の納税通知書が届いています。

すでに支払金額が決まっているため、前年の固都税額を基にして精算をする必要がありません。

納税通知書に記載された金額から、単純に計算をすればOKです。

固都税の精算における消費税の扱い方

固都税の精算に関しては、個人間の売買であれば消費税は非課税です。

ただし、売主様側が消費税が課税される法人である場合は話が変わります。建物部分については消費税の課税対象になります。

これは、「固都税の精算で発生するお金は税金ではなく、売買代金の一部である」ということが根拠になっています。

不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭)として課税の対象となります(基通10-1-6)。

引用:国税庁|未経過固定資産税等の取扱い

ただし、消費税がかかるのは建物部分の固定資産税、しかも日割り計算した部分のみのため、実務上で大きな影響はありません。

なお、土地部分に関しては売主様が課税法人であっても非課税です。

まとめ

今回は、固都税の支払方法を「原則」と「実務」に分けて解説しました。原則の納税方法をご存知の買主様から質問が来ることが予想されるため、双方が納得するような対応が求められます。

消費税の取り扱いも含め、精算方法について丁寧に解説していきましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。