倍率地域とは何なのか?倍率方式の計算方法や路線価との違いを解説

投稿日 : 2020年03月13日/更新日 : 2023年04月10日

主に土地の価格は路線価で評価されます。しかし、すべての土地に路線価が付けられているわけではなく、地方の土地は路線価が定められていない倍率地域がほとんどです。

倍率地域の計算方法は、路線価地域の計算といくつか異なる点があります。そこで今回は倍率地域を評価するための倍率方式の計算方法や注意点について説明します。

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倍率地域とは「路線価のない地域」を意味している

倍率地域は、路線価のない土地のことを言います。

路線価で評価する土地は路線価図をみれば評価できます。

倍率地域は路線価がついておらず倍率方式で評価していきます。

路線価は市街地に定められるため、地方の田んぼや畑をお持ちの方は、この倍率方式を用いて評価することが多くなります。

路線価地域とは

路線価地域とは、路線価の定められた土地のことを言います。

路線価についてはこちらも参照ください。

【リンク】路線価を用いて不動産を評価する|調べ方・計算方法・利用方法など

倍率地域と路線価地域の違い

倍率地域は田舎に多く、路線価地域は市街地といった違いがあります。

倍率地域は「路線価のない地域」で道路(路線)に面していないような土地(田んぼや畑)で、路線価地域は道路(路線)に面する標準的な土地を指します。

倍率方式の計算方法

倍率方式は、固定資産税評価額に国税庁が定めた倍率をかけて計算していきます。この倍率が記載されたものを評価倍率表といいます。以下の計算式で倍率地域の土地の評価額を出すことができます。

 

倍率地域の土地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

 

例えば、固定新税評価額が3,000万、倍率が1.1の土地の場合、3,000万×1.1倍で土地の相続税評価額は3,300万となります。

倍率評価に必要なもの

倍率方式で用いるものは、次の3つです。この3つを計算式にあてはめれば倍率地域の評価額を出すことができます。

1) 固定資産税の明細書

倍率方式で土地を評価するには固定資産税の課税明細書が必要です。課税明細書は固定資産税の納税通知書に同封されており、土地の評価額が記載されています。課税資産税は1年に1度しか送られてこないため、なくしてしまう方も多いですが、市町村役場(東京23区は都税事務所)に行けば固定資産税評価証明書をもらうことができます。

2)国税庁のHP

自分の土地が倍率地域かについては、国税庁のホームページを確認します。自分の土地の場所が載っている路線価図を探します。

地域 内容
路線価地域 土地が接している道路に矢印と数字がある
倍率地域 道路に矢印と数字がなく、倍率地域と書かれている

路線価図は見づらいこともあるため、自分の土地が見つけることができない場合は税務署に聞きましょう。


出典:国税庁ホームページ

3)国税庁の評価倍率表

国税庁ホームページに評価倍率表があるので、そこで自分の土地に乗じる倍率を確認します。土地のある町名(丁目、大字)と地目(宅地、田、畑)から倍率を参照します。

評価倍率表の見方

評価倍率は路線価が定められていない土地を評価する際に用いられますが、様々な情報が記載されています。大きく4つの項目に分かれていますが、それぞれの項目の見方について左の列から順に説明していきます。


引用:国税庁ホームページ

1)「町(丁目)または大字名」欄

市町村ごとに、五十音順に町(丁目)または大字が記載されています。

評価したい場所を選びましょう。

2)「適用地域名」欄

「適用地域欄」には、「全域」、「一部」または「路線価地域」と記載されている場合があります。

適用地域欄 内容
全域 町(丁目)又は大字の全域が路線価地域又は倍率地域
一部又は路線価地域 町(丁目)の大字の地域に路線価地域と倍率地域がどちらも存在

路線価地域か倍率地域かを知りたい場合には、路線価図からその評価しようとする地域がどちらにあたるのかを確認します。路線価地域の借地権割合は、路線価図から確認できます。

3)「借地権割合」欄

借地権とは、物件を建てる土地の確保するために、所有者に対してお金を払って土地を借りる権利です。「借地権割合」とは、土地に占める借地権価値の割合です。倍率地域における町(丁目)又は大字の地域につき、「借地権」の価格を評価する場合の借地権割合が記載されています。

4)「固定資産評価額に乗ずつ倍率」欄

地目ごとに倍率が記載されています。倍率はこの欄を確認します。

地目 内容
宅地 町(丁目)又は大字の地域の「宅地」の価額を評価する場合に使用する倍率が記載されている。「路線」と記載がある場合は、その地域が路線価地域であることを示している
田、畑 「田」「畑」の価額を評価する場合における農地の分類と倍率が記載されている。農地の分類は以下の略称を使用

純農地→純

中間農地→中

市街地周辺農地→周比準

市街地農地→比準又は市比準

山林 「山林」の価額を評価する場合における山林の分類と評価方式及び倍率が記載されている。山林の分類は以下の略称を使用

純山林→純

中間山林→中

市街地山林→比準又は市比準

原野 「原野」の価額を評価する場合における原野の分類、評価方式及び倍率が記載されている。原野の分類は以下の略称を使用

純原野→純

中間原野→中

市街地原野→比準又は市比準

牧場及び沼地 「牧場」及び「沼池」の価額を評価する場合における倍率が記載されている

倍率方式で計算する際の注意点

倍率方式は簡単に計算できますが、注意しなければならない点があります。実際に計算するとき間違いやすい部分なので、下記注意点を確認してください。

固定資産税評価証明書は基準年度のものが必要

計算の基礎となる固定資産税評価証明書は、基準年度のものを用います。また、相続開始(死亡日)の属する年度を使用するということが大切です。古い課税明細書だと正しく計算できない場合があるので注意が必要です。

1つの土地で利用区分が異なる場合は区分ごとに評価

1つの土地であっても、その中で利用区分が細かく分かれている場合があります。例えば、固定資産税は「山林」となっていても、その中で「宅地」「雑種地」「山林」など細かく分かれていることがあります。その際は、その区分ごとに現状の地目に基づいて相続評価額を計算していきます。

課税地目と現況が異なる場合には現況の地目で計算

固定資産評価証明書には、土地の所有者の名前、住所、評価額や土地の所在や課税地目など様々な情報が記載されています。地目とは土地用途のことで、田んぼや畑、宅地などのことを言います。

地目を確認すると、評価証明書に記載されている課税地目と現状の地目が異なっている場合があります。課税地目が「山林」となっているのに対し、現状は「畑」となっている場合です。この場合評価倍率表では現状の「畑」の倍率を用いて計算していきます。

まとめ

■倍率方式の計算方法

倍率地域の土地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

倍率方式はシンプルな計算式で路線価方式よりも計算しやすいように思えます。

しかし、1つの土地でも利用区分が違う場合など、実際に計算するときには注意しなければならない点があります。

ポイントを押さえてればすぐに計算できますが、倍率地域の評価額の算出は判断が難しいケースも多く、そういった場合は専門家への相談をおすすめします。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。