最低敷地面積(敷地面積の最低限度の制限)とは何かわかりやすく解説|限度を下回る土地の取扱いも解説

投稿日 : 2020年02月14日/更新日 : 2023年04月10日

「最低敷地面積」とは、法令に定められた敷地面積の最低限度です。土地を売買したり建物を建築したり、またそれらの目的のために分筆を行う際には、最低敷地面積を確認しておく必要があります。

最低敷地面積は、不動産価値にも影響する重要な条件で、不動産取引においてお客様に必ずご説明し、意向を確認しなくてはいけません。

そこで今回は、最低敷地面積についての法律と、各地域の最低敷地面積の確認方法、注意点などを解説します。

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「最低敷地面積」とはわかりやすく解説

最低敷地面積とは、正式には「敷地面積の最低限度」といい、建物を建築するために最低限必要な敷地面積を定めたものです。各自治体が都市計画法建築基準法に基づく地域地区・建ぺい率などに応じて、必要であれば定められます。

最低敷地面積の定めがある場合、分筆により「最低敷地面積未満」となった土地には、建物を建築することはできません。

「最低敷地面積」の適用例

下の図をご覧ください。

例えば、敷地面積の最低限度が「100㎡」と定められた地域があるとします。200㎡の敷地を100㎡ずつに分筆した場合、どちらの敷地にも建物を建築することができます(ただし、130㎡と70㎡などに分筆した場合、100㎡を下回る敷地には建築することができません)。

画像出展:狛江市|敷地面積の最低限度について

しかし、200㎡未満の敷地を分筆する場合には、等分するとどちらも最低敷地面積を下回ってしまい、建築不可となります。一方を100㎡としてももう一方は最低敷地面積を下回るので、この土地には多くても1軒の建物しか建てられません。

画像出展:狛江市|敷地面積の最低限度について

 

最低敷地面積を定める目的

自治体の法令で敷地面積の最低限度を定める目的は、ミニ開発などによる過度な分筆を制限するためです。

「ミニ開発」とは、主に戸建て建売住宅地として造成・販売するために、1,000㎡以下の土地を100㎡以下に分割(分筆)することです。ミニ開発によって提供される住宅は、収入が多くない消費者層にも取得しやすいという利点があります。

しかし、無計画に過度な分筆を繰り返すと建物が密集し、日照・通風・防災などが確保できず、市街地としての良好な環境を維持できません。

そこで、快適で安全な環境を保つため、各自治体が地域の特性に合わせて「最低敷地面積」を定めています。

「最低敷地面積」の条件

最低敷地面積は、自治体が必要に応じて独自に設定しています。ただし建築基準法(第53条2の2)において、最低敷地面積は「200㎡以下」と定められています。

また、最低敷地面積の設定されている地域内であっても、次の条件に当てはまる敷地においては、最低敷地面積の制限を受けません。

◆最低敷地面積の制限が適用されない敷地

  1. 建ぺい率の限度が80%とされている防火地域内にある耐火建築物などの敷地
  2. 公衆便所、交番など公益上必要な建築物の敷地
  3. 周囲に広い公園・広場・道路などの空地があり、特定行政庁が市街地の環境を害するおそれがないと認めて許可した建築物の敷地
  4. 特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可した敷地

 

「最低敷地面積」は不動産価値に影響する

最低敷地面積の2倍の広さの土地には、分筆することで2軒の建物を建てられます。しかし、それより小さい土地であれば、分筆しても一方の土地は最低敷地面積未満となり、建物を建築することができません。

つまり、たとえわずか0.1㎡の差であっても、前者のケースでは2軒分の価値があり、2つの不動産として売り出す余地がありますが、後者のケースでは広くても1軒分の価値しかありません。

したがって、最低敷地面積の2倍の広さを確保できるかどうかによって不動産価値に大きな差が生まれます。

 

「最低敷地面積」は自治体によって異なる

最低敷地面積は、都市計画法・建築基準法に基づく区域や地域地区・用途地域に合わせて定められたり、建ぺい率などに合わせて定められます。各自治体によって必要に応じて定められ、地域によっては最低敷地面積が設定されていないところもあります。

そのため、担当物件を調査する際には、個別に確認する必要があります。

最低敷地面積を調べる方法

最低敷地面積は、担当不動産の所在する市区町村のホームページで調べることができます。「都市計画」や「まちづくり」のページから探してみましょう。

該当ページを見つけにくい場合には、GoogleやYahooなどの検索エンジンにて「○○市(自治体名) 最低敷地面積」または「○○市 敷地面積の最低限度」などのキーワードで検索すると見つけやすいでしょう。

 

法令前から「最低敷地面積未満」であった場合

自治体で最低敷地面積についての法令が定められる前から最低敷地面積未満であった土地については、やむを得ない事情があるものとして、敷地面積による建築制限を受けません。したがって、その敷地への新築・再建築は、特別に許可されます。

 

「最低敷地面積」に関する業務のポイント

 

最低敷地面積未満の土地について登記簿で調査する

担当する物件の敷地が最低敷地面積未満である場合、分筆した時期を調査する必要があります。最低敷地面積についての法令が施行(または改正)された時期と比較し、前か後かによって対応が異なります。

法令施行前に分筆し、法令の施行(または改正)により最低敷地面積未満となった敷地であれば、新築・再建築が許可されます。そのため、問題なく取引を進めることができます。

しかし、法令後に最低敷地面積を下回る分筆が行われている場合は、法令違反の可能性があります。すでに建築物が存在する場合は、さらに詳しく調査する必要があります。

関連する登記簿を参照したり、自治体の担当部課や所有者・関係者にヒアリングして、なぜ建築できたかなどを調査しましょう。

お客様が再建築を希望する場合には、再建築が可能かを自治体に問い合わせ、今後の対応を相談します。

 

売主様の希望する売却プランが可能か確認する

売主様が土地を複数に分割して売却することを希望している場合には、最低敷地面積を調査し、分割後の土地すべてに建築が可能かを確認します。建築不可の土地が生じる場合には、分割せず売り出すプランをご提案しましょう。

 

買主様に不動産価値について情報提供する

購入する不動産の選択に迷っている買主様には、選ぶポイントのひとつとして最低敷地面積について情報提供するといいでしょう。

最低敷地面積の2倍以上であるかどうかによって、不動産価値が大きく変わる旨をご案内すれば、買主様の資産計画に合わせて購入不動産を検討してもらえます。それぞれのお客様にとってより満足度の高い選択をサポートできるのです。

 

案件ごとに個別の確認が必要

最低敷地面積は、自治体ごと・地域ごとに定められるため、案件ごとに個別に調査する必要があります。また、最低敷地面積はわずかな差でも不動産価値に影響を与えるため、取引きに際しては事前に十分確認することが大切です。

今後の不動産の運用も考慮して、お客様に有益なアドバイスをできるようにしましょう。

まとめ

最低敷地面積の制限が適用されない敷地

  1. 建ぺい率の限度が80%とされている防火地域内にある耐火建築物などの敷地
  2. 公衆便所、交番など公益上必要な建築物の敷地
  3. 周囲に広い公園・広場・道路などの空地があり、特定行政庁が市街地の環境を害するおそれがないと認めて許可した建築物の敷地
  4. 特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可した敷地

最低敷地面積についての考え方や売却の際の条件、限度、調べ方、注意点について確認をしてきました。

売主様のご希望に可能な限り合わせながらわかりやすくご説明を提供できるように法令も併せて理解していきましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。