土地の分筆とは|メリット・費用・注意点や測量から登記までの手順を徹底解説

投稿日 : 2020年01月31日/更新日 : 2023年06月03日

不動産登記のひとつに、土地の「分筆」があります。不動産業に携わっていれば、おおよその意味は知っている、という方も多いかもしれません。

ただ、厳密な意味や具体的な方法まではわからない、という方もいるのではないでしょうか。

分筆はスムーズな相続や節税にもなるため、お客様から相談されることも少なくないテーマです。そこで今回は、「土地の分筆」について詳しく解説します。

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土地の「分筆」とは

まずは「筆」の意味を確認

「筆(ひつ)」とは、登記簿上で1つの土地を表す単位です。面積に限らず1筆(いっぴつ)の土地ごとに、1つの登記簿が存在します。そして、登記された土地には、1筆ごとに地番が割り振られます。

「分筆」とは

「分筆」とは、1筆の土地を複数に分けて、それぞれを独立した単一の土地として新たに登記をしなおすことです。分筆のための登記手続きを「分筆登記」といいます。

逆に、複数の土地を統合し、1筆の土地として登記することを「合筆」といいます。

「分筆」と「分割」の違い

「分筆」と類似した不動産用語に「分割」があります。「分筆」と「分割」は、どちらも土地を分けることを意味します。では、この2つにはどのようなちがいがあるのでしょうか。

大きな違いは、登記簿において正式に分かれているかどうかです。分筆は、正式に分筆登記し、登記簿においても分けられることをいいます。

一方「分割」は、1筆の土地に複数の建物を建てられるように、建築基準法の条件を満たして土地を分けることをいいます。つまり、「分割」では登記簿上は1つの土地であり、正式には分けずに使用することになります。

分筆した後の土地の表示

土地の所在地を表す表示には、登記簿上の「地番」と、市区町村が定める「住居表示」の2種類があります。土地を分筆したら、これらの表示はどのように変更されるのでしょうか。

分筆した土地の「地番」

分筆後の地番の付け方は、分筆前の地番に支号があるかどうかで異なります。支号とは、別名「枝番」と呼ばれ、地番の後に続く数字のことです。

【分筆前の地番に支号がない場合】

分筆前の地番の後に、それぞれの土地の支号を割り振ります。

例)地番「一丁目2番」の土地を3つに分筆した場合、新しくできたそれぞれの土地の地番は「一丁目2番1」「一丁目2番2」「一丁目2番3」となります。

【分筆前の地番にすでに支号がある場合】

まず、分筆して新しくできた土地のうち、1つがそれまでの地番を引き継ぎます。残りの2つの土地は、支号のみ変更します。その際、同じ地番の中でまだ使用されていない支号をつけます。

例)地番「一丁目2番3」の土地を3つに分筆します。

すでに「一丁目2番1」~「一丁目2番5」が使用されている場合、新しくできたそれぞれの土地は「一丁目2番3」「一丁目2番6」「一丁目2番7」となります。

分筆した土地の住居表示

住居表示の制度は、各市区町村がそれぞれ管理運営しています。ただ、地域によっては住居表示制度を実施せず、登記簿の地番をそのまま使用しているところもあります。

そのため、分筆後の住居表示や住所については、各自治体の担当課へ問い合わせることが必要です。

住所は将来的に長く使用していくものですので、早めに決定する方がいいでしょう。また、新しく住所が決定する際に使用したくない数字があるときにも、早めに問い合わせることで対応してもらえる場合があります。

土地を分筆する目的・メリット

「分割」でも、1筆の土地に複数の建物を建て、複数人で使用することは可能です。しかし、「分筆」にしかできないことが、いくつかあります。ここでは、土地を分筆する目的=メリットをご紹介します。

異なる地目で使用する

「地目」とは、登記上の用語で、土地の使用目的のことです。土地を使用する場合、登記簿に記載された使用目的の通りに使用しなければいけません。そのため、1筆の土地を複数の用途で使用したい場合には、分筆をすることでそれが可能になります。

共有名義を解消する

1筆の土地を複数人で相続した場合、土地の相続人全員の共有名義となります。それでは、個人が自由に使用することが難しい状態です。

そこで土地の相続割合に合わせて分筆をすれば、それぞれの単独名義にすることができます。住宅ローンを組んだり売却したりといったことが、各人で自由に行えるようになるのです。

土地の評価額を下げて節税する

土地を所有していると「固定資産税」、土地を相続すると「相続税」、もらい受けると「贈与税」が課税されます。

それぞれの税額は、土地の評価額をもとに計算されます。そして土地の評価額は、面している道路や間口、形状などを考慮して決定されます。

そのため、分筆することで道路への接し方などの条件が変わり、評価額を下げられる可能性があるのです。

土地を分筆する方法

分筆の手順

土地を分筆するには、まずは土地家屋調査士に依頼し、土地の境界を厳密に定める必要があります。境界が決まり、関係者の合意が取れたら、登記のための書類を作成し、登記申請をします。

  1. 土地家屋調査士に相談・依頼する。
  2. 法務局や役所で土地の資料を調査する(登記事項証明書・公図・地積測量図・確定測量図など)。
  3. 現地で予備調査をする。
  4. 現地で役所や隣接する土地の所有者の立会いのもと境界を確認、合意する。
  5. 境界標を設置する。
  6. 確定した境界を測量する。
  7. 図面や登記申請用の情報書類などを作成する。
  8. 分筆登記の申請をする。

分筆登記の必要書類

分筆登記は、その土地を管轄する法務局にて申請を行います。申請に必要な書類は以下の通りです。

  • 申請書
  • 筆界確認書(境界確認書・境界の同意書・境界の協定書)
  • 地積測量図
  • 現地案内図
  • 委任状(代理申請の場合)

分筆に必要な費用と時間

分筆をするには、主に境界を決める費用と、分筆登記をする費用がかかります。すでに境界確定測量が終わっている場合や、登記手続きを自分で行う場合には、それだけ費用を抑えることができます。

所要時間についても、境界確定測量の必要があるかどうかで異なります。

◆分筆に必要な費用一覧

  1. 測量費…35万円から※土地面積によって変わります。
  2. 「筆界確認書」作成費…10万円から
  3. 「官民境界確定図」作成費…10万円から
  4. 「境界標(杭・鋲・刻みなど)」設置費…10万円から
  5. 登記申請費用…5万円から
  6. 登録免許税…分筆後の土地1筆ごとに1000円

※2~4は境界確定測量が終わっていれば不要です。

◆分筆にかかる「費用」の目安

  • 境界確定測量が済んでいる場合…25から~50万円程度
  • 境界確定測量をする場合…50~150万円程度

◆分筆にかかる「時間」の目安

  • 境界確定測量が済んでいる場合…半月~1ヵ月程度
  • 境界確定測量をする場合…1~4ヵ月程度

分筆の注意点

土地を分筆したら建物の登記も行う

建物が存在する土地を分筆し、地番が変更になった場合には、必ず建物の「所在(地番)」の変更登記をしておく必要があります。

これを怠ると、将来的に不動産取引や住宅ローンの抵当権設定などの場面で、建物の所在を特定できなくなってしまいます。改めて建物の所在を特定するには、分筆前のすべての土地や建物を調査する必要が発生し、大変な手間となるのです。

また、担当物件を調査し、土地と建物の所在が一致しない場合には、分筆を疑い調査してみるといいでしょう。

「不合理分割」にならないようにする

「不合理分割」とは、節税目的の実態に則さない分筆であるなど適切な分筆ではないとして、登記申請を受理してもらえない分割のことを言います。

◆不合理分割の例

  • 建築基準法の「接道義務(2m以上道路に面している必要がある)」を満たさない土地がある。
  • 分筆した土地が道路に面しているかように見せかける。
  • 不整形な土地がある。

相続目的なら先に分筆を済ませる

1筆の土地を複数人で相続し、相続割合に合わせて分筆する場合には、相続手続きをする前に分筆を済ませた方がいいでしょう。

先に相続手続きをする場合、1筆の土地を複数の相続人で共有することになります。その状態から改めて分筆をし、それぞれの単独名義に変更すると、二度手間になって時間と費用が多くかかってしまうのです。また、相続税の更正(計算しなおし過払い分の還付を受ける)もしなくてはいけません。

相続税の申告・納付は相続開始より10ヵ月以内です。それまでに分筆を済ませるとなると、速やかに対処する必要があります。余裕を持って相続手続きを行うには、所有者の生前に分筆を済ませておくのもひとつです。

まとめ:個別のケースに柔軟に対応する

分筆は、節税対策となりえますし、スムーズな相続にも有効な手段です。しかし、手間や費用もかかりますし、どんな場合でも分筆すれば得をするというわけではありません。分筆にはメリット・デメリットの両面があるのです。

そのため、お客様が土地の運用・処分などで分筆を検討する際には、正しい知識によって個別のケースに適切に対応することが大切です。

分筆について理解を深めておけば、幅広い相談に応じることができるでしょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。